Stevie Wonder – Songs in the Key of Life(1976)

本作のリリース当時、 何とロック雑誌(Rockin’Fだったと思う)に全曲分析が載ったので、それを何度も読みながら聴いたアルバムだ。多くの傑作をモノしている Stevie だが、僕は本作が彼の最高傑作だと思っているし、もっと言うと20世紀に制作された全てのLPの中でも上位に位置する世紀の傑作だと思っている。
参加メンバーはとても大人数なので有名どころだけ挙げると、g の Michael Sembello は後にヒット曲 Maniac を出した人、Jazz 界からは kbd の Herbie Hancock や g の George Benson 等のビッグネームが参加、Soul 界からは Minnie Riperton 等が参加。
使用楽器の中で特筆すべきなのが、Yamaha の超高級ポリフォニックシンセサイザーである GX-1 であろう。確か当時、700万円くらいしたと思う。後の Fairlight CMI とか Synclavir とかのプロ御用達高級シンセの走りだ。Rock/Jazz界でも、ちょっとお金を持っているミュージシャンが次々と導入したものの、宣伝文句とはうらはらにプアな音しか出せなくて、ちょっと使っただけで終わった人が多い。これは、決して楽器の能力不足ではなく、演奏者の使いこなし力不足だったのだと思う。その証拠に本アルバムを、例えば Tr.3 だけでも聴いてみて欲しい。例えば、和声の選択と指のタッチ。達人の手にかかると、魔法のような音が生まれるのだ。

Tr.2 Have a Talk with God
クレジットを見る限り、全ての楽器を Stevie が演奏している。真っ黒で粘っこい b のシンセがかっこいい。ぶっといアナログの音だ。

Tr.3 Village Ghetto Land
GX-1 のために作ったのだろう。新しいすごい玩具を手に入れて嬉々としている Stevie が目に浮かぶ。今ではサンプリングでストリングスもフルオケも簡単に鳴らせるが、当時ここまでストリングスをリアルに鳴らせる楽器は他に無かった。GX-1 は YAMAHA のFM音源シンセなのだが、音を長く伸ばすほどストリングスっぽくない電子音になってしまう。なので Stevie は短い音使いと絶妙のタッチで、ストリングスらしさを出している。
歌われる歌詞は、悲しみ、怒り、絶望に満ちており、優雅な曲に乗せてドスを効かせて歌うことで、ドラマチックな効果を出している。

Tr.4 Contusion
当時この曲には驚いた。唐突にハイテクフュージョンなんだもの。Michael Sembello の g が、Gary Boyle みたいで超かっこいい。2:15から、テクニカルなキメフレーズを繰り返す g の後ろで、女性voがスキャット、いやあまったく都会的、未来的、洗練されたフュージョンサウンドだ。

Tr.8 Pastime Paradise
これも GX-1 を全面に出したアレンジ。音を伸ばさない限り、とてもストリングスらしく聴こえる。途中から入ってくる Hare Krishna の皆さんのクワイアがとても素晴らしい。法悦ってやつだ。

Tr.13 Isn’t She Lovely
この曲を知らない人っているんだろうかと思うくらい有名な曲だ。歌われている Aisha は彼の愛娘。後半でバブバブ言う本人の声が入っている。後にライブで父と成長した娘が共演するのだが、もう感動ものだった。
楽器的には Fender Rhodes がメイン。Rhodes の効果的な使い方の最高の教科書だ。

Tr.15 Black Man
ドドドドッとリズムを刻むぶっとい b シンセと、2拍目でハイハットを鳴らすルーズなビートの ds が素晴らしい。
後半、先生と子供たちがコールアンドレスポンスを繰り返す背後で、ボコーダーみたいな機械的人声が聞こえるが、これは talking box と言う一種のエフェクターだ。こいつは、トランペットスピーカー(小学校のグランドとかに設置されている大きな音が出るラッパ型のスピーカー)のラッパを取り去ったドライバー部分にゴムホースを繋げて、その先端を口に咥え、口腔内で再生音を共鳴させてそれをマイクロホンで拾うという凄いシロモノ。口の形を変えると、まるで言葉でしゃべっているように楽器音が変化する。Jeff Beck や Peter Frampton なんかも使って一時期有名になったが、使いすぎると音で脳がやられて馬鹿になるとか言われていて、みんな怖がって使わなくなった。

Tr.16 Ngiculela
クレジットで Koto Synthesizer となっているキラキラしたシンセがファンキーだ。ここでいうファンキーは、黒っぽい粘っこい音という意味では無くて、黒人特有の生命感や美意識のことだが。
LP版では本作は2枚+EPという変則的な作りで、この美しい曲からD面が始まる。そしてこのD面が凄いのだ。次の If It’s Magic で宇宙を感じてほっこりし、そして怒涛の As と Another Star と続く。

Tr.18 As
Herbie Hancock が Rhodes を弾いている。彼のフレージングはとても特徴的なのですぐにわかる。曲調は次第にアフリカ回帰的なものに変化していき、次の曲に受け継がれる。

Tr.19 Another Star
この曲の後に、おまけEPに収録された2曲があるのだが、まあこの曲が世紀の超大作の終幕を飾る最後の曲と考えて良いのではないか。
あのブリージンの George Benson が g で参加しているのだが、正直言ってあんまりぱっとしない。彼の g は端正かつ線が細すぎて、このアフリカン+ラテンのアクの強い音の中では埋没してしまう。
一方で flute で参加している Bobbi Humphrey という人、なかなかの活躍をしている。flute って結構土俗的な音だからね。
曲はどんどん盛り上がり、簡単にオチをつけづらいと見たのか、フェードアウトで終わる。まあ確かに他にこれを終わらせる方法は無いな。

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