知る人ぞ知る元 Return To Forever の超高速弾きまくりギタリスト。
RTF 脱退後180度方向転換して ECM から内省的なアコギ作品を送り出し、これらはとても高水準のアルバム群だったので、今でも良く聞いている。で、またその後180度方向転換して(要するに元に戻ったわけだ) Allan Holdsworth フォロワー的な弾きまくりギタートリオを追求し始めた時代の第二作目。
1984年にリリースされたギタートリオ第一作の Step It では Dave Weckl が ds を叩いていたが、本作では Kim Plainfield というほぼ無名の人に替わっている。ではリズム隊がレベルダウンしたかというと全然そんな心配は無用で、ちょっとカリブ風味が入ったり、エレドラなんかも使ったりする Dave のどことなく余裕をかましたドラミングに対し、Kim のドラミングは超タイトで、比較すると空間を上手く残すタイプ。かなりの腕前と思われる。
リズム隊のもう一人は Tom Kennedy(b) 。この人は Dave Weckl と組んで Jazz 方面で活躍する一方で、後には Planet X に参加してプログメタル方面にも進出した。
Tr.1 Subtracks
イントロの変な金属音は Bill がギター弦のナットより上のところを掻き鳴らす音。反復される b のフレーズを g が追いかけてテーマとなる。0:40から短いけれど Holdsworthy なコード奏法、1:10から Holdsworthy なソロ、とまあそんな感じで丸ごと全部 Holdsworthy である。
g を軽く歪ませ、中域を強調して、ピッキングは弱めにアタックを消し、サスティーンを効かせて伸ばした音の後半を軽くビブラートで揺らす。高速フレーズは、左手のプリング・ハンマリングを多用し、決して右手を使ったり、全部ピックしたりしてはいけない。なんてね、簡単に模倣できるものでは勿論無いのだが、g 好きなら誰だって Holdsworth ごっこはやりたくなるものだ。
Tr.3 Floor to Floor
ほとんど弾きっぱなしの Bill の後ろをリズム隊がタイトに支える。中でも Kim のドラミング上手し。弦の2名がどちらも手数の多い人たちなので、ds までもが Dave Weckl のように隙間なくタイコを鳴らし始めるとちょっとうるさくなってしまうのだが、Kim は比較的隙間を設けながらもリズムの前進感(フォワ-ドゴーイング)を維持していて、なかなか上手いなあと思う。
Tr.6 Out by Twelve
12拍子のブルース進行でジャムっぽい構成なのだが、いわゆるソロ回しにはならない。最初に b ソロが短めに、続いて g ソロがうんと長めでいつまでも終わらない。僕のバンドだから全部僕のソロってなもんだ。で最後に待ちくたびれた ds が圧巻のソロだ。
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