Nils Petter Molvaer – Solid Ether(2000)

Norway のトランペッター Nils Petter Molvaer(NPM) のスタジオ2作目。
本作リリース後、彼はECMを離れることになるわけだが、このECMってレーベル、選択眼がなかなかおもしろい。バップ・肉体派は基本出入り禁止で、リリシズム漂う知的ジャズ中心のレーベルと世の中には思わせといて、ときどき「らしくない」ヤンチャな音楽をひょいとリリースしてくる。僕はECMがときどき「ところでたまにはこんなのどう?」と出してくる、らしくない奴が大好物なのであった。
本作及び前作も、乱暴に言えばいわゆる Acid Jazz であり、D’n’B の上でエフェクトをかけたホーンが鳴り響く酩酊感強めの音楽。Jazz本流とは距離を置いた音世界だったが、これが意外にも新旧のJazzファンの心を掴んでいく。Jazz も Rock も、他の音楽ジャンルと交差し遺伝子交換しながら進化してきたわけで、これも必然。まあ難しい話はおいといて、とにかく NPM はキモチ良い。これを聴きながら車やバイクに乗っていると、世界が違った姿を見せてくれるから試してみて。
さて、本作の参加ミュージシャンだが、核となるのは Nils Petter Molvaer(tp, kbd, b, loop etc.) / Eivind Aarset(g, electronics) / Sidsel Endresen(vo) の Norway 出身仲良し3名。あとは曲毎に Audun Erlien(b) / Strangefruit(Pål Nyhus)(DJ) / Per Lineal(ds) / Rune Arnesen(ds) 等が加わる。サンプリング・ループによるD’n’Bに加えて、生のツインドラムとベースが鳴り響くのだ。この低音方面が超強力。
蛇足を書くが、管やギター等のフロントメンの人がやりたがるパターンの一つに、後ろに多数のリズム隊を侍らせて、自分対リズム全員でバトルするというのがある。若い頃新宿ピットインで観たライブ。梅津和時氏がドラマー3名に半円状に取り囲まれて、180度から浴びせかけられる大音量ポリリズムの大渦の中で、身悶えしながら法悦の表情でフリーブローしていた。本作のNPMも、まあそういうのをやりたかったのかなと勝手に想像している。

Tr.1 Dead Indeed
曲名通り、「ああもう死んじゃう」ほどイイ曲。
生演奏D’n’B隊はまだ参加せず、バックトラックはNPM自ら制作のLoopのみ。
事実上、NPMと Eivind の2名で作っている。
導入部のソロtpは、しっかり伝統のJazzの音。そして怪しく空間を埋めてくる Eivind の g と、おもむろに鳴り始める刺激的なバックトラック。
NPMの tp は、効果音的プレイに逃げることが無く、あくまでも旋律と調性を節度を持ってキープする。この、熱い中での冷静なコントロールが凄いのだ。

Tr.2 Vilderness 1
ここで2Ds+1Bの生演奏D’n’B隊が加わる。
NPMのtpは、ハーモナイザーを用いた和音プレイが中心。と言っても、Michael Brecker みたいな速いパッセージではなく、白玉(全音符)的。
何だかもう、高度に設計され組み立てられた現代建築のような美を感じる。

Tr.3 Kakonita
tpの多重録音・・・というか、サンプリングされたtpによる和声をバックに、tpのソロを吹く。構想力が面白い。

Tr.4 Merciful 1
ここで、Sidsel Endresen が登場。NPM のピアノをバックにしっとりと歌う。素敵な小品。

Tr.5 Ligotage
生演奏D’n’B隊が入り、スローなD’n’B。
このD’n’Bプラス進行しない和声というのは、曲をいくらでも長く続けられるので楽しいね。元々は、クラブで一晩中踊るためのフォーマットなわけだが、ジャムセッション的に集まって演奏するときにも使えるな。

Tr.7 Vilderness 2
これはTr.2の別バージョン。いわゆる別テイクというよりも、恐らく元の素材は同じで、その継ぎ接ぎ具合が異なる別編集。クラブミュージックや、Trevor Horn なんかが得意なやつだ。実際、NPMは本作リリースの後、自曲のRemixを集めたアルバム Recoloured なんてのも出している。

Tr.9 Solid Ether
出だしの音は何だろうね。海棲哺乳類の鳴き声か、潜水艦のpingみたいな音。
酩酊感強めの、これぞ Acid Jazz といった音世界。

Tr.10 Merciful 2
これはTr.4の別テイクなのかな。バックのピアノが微妙に異なり、最後は分散和音をパララと鳴らして余韻を残し終わる。

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