Shakti – A Handful of Beauty(1976)

John McLaughlin が、自らの宗教名を冠した Mahavishnu Orchestra の解散後に結成したインド音楽グループ Shakti の2作目。インド音楽とは言っても、勿論伝統音楽を忠実に演奏するのではなく、Jazz を吸収して育った現代のミュージシャン達が作る現代のインド音楽である。クレジットを見る限り、曲作り面での主役は John と、バイオリンの L. Shankar の2名と思われる。
高校生の頃、僕はこのアルバムを、FM放送でLP丸ごと流してくれる、いわゆるエアチェック番組で録音し、毎日のように聴いていた。Mahavishnu も、その他の John の輝かしいキャリアも何も知らず、Jazz の基礎知識も皆無なロック少年だった僕にとって、Shakti はあくまでもアコースティック楽器で物凄いスリリングな演奏をするそういう名前のかっこいいバンドであり、John McLaughlin が率いているなんてことは意識せずに聴いていた。素晴らしい音楽には能書きはいらないってことだなとつくづく思う。
メンバーは、アコギ (a.g) の John McLaughlin、Violin の L. Shankar、Tabla の Zakir Hussain、Ghatam / Mridangam の T. H. “Vikku” Vinayakram 。
Shakti 時代の John のギターにはサウンドホールを斜めに横切る形で共鳴弦が張られていて、シャクティーギターとかシタールギターとか呼ばれていた。共鳴弦というからには、演奏する6本の弦の音に共鳴して勝手に鳴ることで残響のような効果を出すのだが、John はフレーズの端々でこの共鳴弦をピックで掻き鳴らす技を使っている。また、このシタールギターにはもう一つの秘密(?)があって、指板のフレット間が深くえぐられている。今でいうスキャロップ加工というやつだ。Yngwie あたりから有名になったメタラー御用達のスキャロップ加工は、左手指を省力化して高速に動かすための工夫なのだが、シタールギターのえぐり加工はそうではなく、まさにシタールに似たピッチベンディング効果を出すためのもの。シタールという楽器は、フレットが宙に浮いていて、指で弦を強く押さえると弦が引っ張られチョーキングみたいに音程がベンドする。逆に言うと、適切な力で押さえないと音程が定まらないという難しい楽器だ。ギターのスキャロップ加工程度ではシタールのように強く押さえたとしても、それほど大きなピッチ変化は得られないはずだが、John は通常のチョーキングと組み合わせて、ピッチ変化が異様に大きいしゃくるようなベンドをかけている。
もう一人の中心メンバーである L. Shankar の楽器も面白い。10弦のダブルネックバイオリンなのだ。そして、油を塗った左手指から繰り出す滑らかなグリッサンドを多用する。また彼は Peter Gabriel のツアーに同行したり、坂本龍一と組んだり、実に多芸な演奏家だ。
楽器の話を書き始めたら長くなってしまったので、パーカッション担当の2名については一言だけにするが、Zakir も Vikku も担当楽器の世界的第一人者であり、教本なんかも出している偉い先生達だ。

Tr.1 La Danse du Bonheur
ダガドゥビダガドゥンというコナコル(南インド音楽でリズムを口伝えに教えるための口パーカッション)で始まり、John と Shankar がユニゾンでテーマを奏でる。そしてリズム隊が素晴らしい。Zakir の tabla も凄いが、低音で鳴る太鼓の音がちょっとトーキングドラム風で迫力ある。クレジットに楽器名は無いが、これは kanjira だろうか。自分も何か楽器を持って、この人たちの中に飛び込みたくなるような、素晴らしく、そして楽しい演奏だ。

Tr.2 Lady L
Shankar の曲。g と vln がユニゾンで奏でるテーマが美しい。Tr.1 の情熱的な盛り上がりの後で、この穏やかでちょっと切ない曲想がとても良い。

Tr.4 Kriti
これは南インドの伝統曲らしいが、「橋の~うえで~踊るよ踊るよ、橋の~うえで~輪になって踊ろ~」みたいな雰囲気もある楽しい曲だ。

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