Bill Frisell – Rambler(1984)

彼のソロ第二作目。第一作は未聴。
レーベルはECMだ。あの透き通った知的なサウンドで一世を風靡した、肉体派バップ絶対禁止のECMだ。でもこのレーベルはときどきこういう変態的なのも出すので面白い。
メンバーは、Bill Frisell(g, g.syn) / Paul Motian(ds) / Jerome Harris(b) / Kenny Wheeler(tp, Flugelhorn) / Bob Stewart(tuba) というちょっと不思議な構成。チューバだよ、チューバ。スターウォーズの毛むくじゃらじゃないよ。
全体を通して、Bill の不思議ちゃんサウンドが徹底的に鳴り響くのだが、とっても聴きやすい。曲調が明るくのどかで、ほぼ同時期に制作された Bass Desires のような殺気などは微塵も無い。

Tr.1 Tone
唐突に tp と tuba のラッパ隊が勇ましく鳴り響き、tp と Bill の不思議 g のユニゾンがテーマ(???)を奏でる。
クレジットによれば Bill はギターシンセも併用しているようだが、以前雑誌で読んだ本人のインタビューによると、この不思議サウンドは比較的単純にディレイ系エフェクターとボリュームペダルのみでも出せるらしい。音程がヨレたり、変なビブラートがかかったりするのも、結構指癖やアーティキュレーションでやっている(あるいはそうなってしまう)フシがある。先日表参道で彼のライブを見てきたのだが、確かにシンセは使わずにこの不思議サウンドを出していた。ギターシンセを使っても使わなくても、ほとんど同じような音を出せるなんて人は、音楽界広しと言えども、他に存在を知らない。
ところで tuba がなかなか凄い。低音で曲を支える役割は ds と b に任せて、猛獣のように自由に暴れている。

Tr.2 Music I Heard
タイトルが良いね。昔聴いた、いつどこで聴いたのかも覚えていないが、妙に懐かしい音楽。
立ち込めた霧のようにドローン的音響が鳴り響く中から、マーチングバンド(!)が近づいてくる。Bill が小さい頃に遭遇した何らかの音楽体験だったのだろうか。立ちすくんで驚きの表情でバンドの行進を眺める Bill 少年の顔が浮かんでくる。で、これをやりたかったから、どうしても tuba が必要だったのだろうね。

Tr.7 Wizard of Odds
オズの魔法使いならぬオッズ(賭け金)の魔法使いだ。まあ良くある英語のベタな洒落だな。
しばらくのほほんとしたのどかな曲が続いた後なので、フリーでスパイスが効いた曲が楽しい。

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