Nils Petter Molvær – Stitches(2021)

Norway の Jazz Trumpetter/Composer である Nils Petter Molvær(NPM) のソロ、2021年リリースしたてほやほやをご紹介。
NPM以外の参加メンバーは、前作 Buoyancy(2016) にも参加していた Jo Berger Myhre(b, syn, p, その他電気モノ) 及び Erland Dahlen(ds, perc, その他電気モノ) の2名に加えて、新たに Johan Lindström(g, pedal steel g, organ) を採用。
前作の Geir Sundstøl と比べて聞くのも面白い。

前作は Post Rock 的なエモいリズム隊の上に、郷愁を誘うメランコリックな g (主にペダルギターによるみょーん的なサウンド)と NPM 御大による浮遊感に満ちたホーンが鳴り響くという感じの作りだったが、本作ではリズム隊も随分と抑制的になり、より円熟味が増した印象。
御大の吹き方も、一つ一つのシンプルで叙情的なフレーズを丁寧に、そっと送り出すように、歌うように鳴らしている。

Tr.1 Median
tp と b がユニゾンで訥々と語るテーマ。
ペダルgや電子音響が背景を染める。
1:45から勇ましく ds が切り込み、曲をドライブし始める。
過去の作品に見られた暴力的なサウンド、ヤサグレ感みたいなものは全く消失し、ちょっと Mark Isham みたいな感じ(映画音楽的、清潔)もある。

Tr.3 Framework 2
本作には Framework と題する曲が3つ入っていてその一つ。
主に b と tp の対話で成り立っている曲。
Tr.1 の冒頭部にも通じるサウンド。
つまり本作全体の基調を形成する骨格(Framework)の一つだ。
後半、ブラッシュワークによる ds も加わるが、ほぼリズム隊無し。

Tr.4 Framework 1
さて今度は ds + Electronics の細かいリズムを中心に添えた曲。
前作に近い Post Rock 的なエモいリズム隊。歪ませたNPMのホーン。
やはりライブではこういうのを聴きたいな。

Tr.6 A Sudden Rash
ペダルg、b、tp による感情を揺さぶるような叙情的サウンド。
2:28頃から深いリバーブをかけた勇壮な ds が鳴り響く。
後半、b 以外に p の低音弦によるベースフレーズが鳴るのも印象的。
音数が少ないこともあって、映画音楽的構成に感じる。

Tr.7 Angels Ahead
ds + perc が曲をリード。Tr.4 Framework 1 に似た構成の曲。
激しく歪ませた暴力的 g (ペダルでは無く普通の)ソロ、ハーモナイザーをかけたNPMの tp (和音奏法)、エモいリズム。
かっこよろし。

Tr.9 Nearly Invisible Stitches
叙情的なワルツ。
前作もそうだったけど、この曲のペダルgにも Bill Frisell を感じるな。
途中からがらっと曲調とリズムを変えて、強くエフェクトをかけた御大の tp が叫び始める。
先程の抑制的な曲調をちょっと逸脱して、何だか泣きたくなるようなエモーショナルなプレイ。
でも曲長が短いので節度をもって終わってしまう。もっと激しく変質して欲しいのだが。

Tr.10 Framework 3
ペダル g + Electronics と御大の tp の対話。
なるほどね、御大以外の3名のプレーヤーをそれぞれ取り調べ室に呼び出して個別聴取したわけだ。
NPM 「で、今回の仕事、君はどうしたいの?」
プレーヤー 「じゃあ、こんな感じはどうでっしゃろ?」
NPM 「ひとまずもらった」
ってのを3回やって、その上に全体像を形作っていった・・・のかなあ。
NPMもすっかり業界のボスになったから、そういう仕事のやり方もできちゃうし、許せるかもね。

Tr.11 True Love Waits
アルバム最後は美しいバラード。
Jo のシンプルな b アルペジオの上で、夢見るようなペダル g の音響(Bill Frisell 的な)と、優しく吹く NPM のホーン。
本作全体的に映画音楽的構成を感じるし、アルバム名・曲名も何やら印象的、何らかのストーリーを設定している印象が強い。そして本曲は暖かくハッピーエンド。
以前のヤサグレたNPMも大好きだが、こういう枯れて滋味深いNPMも良いね~。

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