Big Big Train – The Likes of Us(2024)

僕の大好きなバンド Big Big Train(BBT) の新譜が出たのでレビュー。
早く入手したいので、Bandcamp のD/L販売を利用した。
24bit HD-Audio版(48kHz)、PDFのブローシャー付。

まず皆さんが最も気になるのは、Alberto Bravin でしょ?
いやあ驚いた。大化け!!!
もともと上手いボーカリストなんだけど、故David Longdonと比較しようとするファンやクリティックの手前もあってか、今までは少し遠慮していたのかな。
何だか自分の全てを出していないというかバンドに馴染んでいない感が強かった。
ところが本作では、もう完全に彼が主役になっている。
それは曲作りの面でも強く出ていて、全8曲中5曲が彼の(共作だが)作曲だ。
ブローシャーの最後に各メンバーのThanksが掲載されているが、BBTのリーダー Gregory Spawton は Alberto Bravin に Special Thanks を捧げているよ。「自分が落ち込んでいるときに彼が引き上げてくれた」のですって。
それほどに David の事故死はあまりにも大きすぎる衝撃だったと思われ、そこからのバンドの再生は本作のテーマの一つにもなっている気がする。
蛇足だが、本作のアルバムジャケットも、これまで同様 Sarah Ewing の作。
彼女は故 David Longdon のパートナー。

参加ミュージシャンを紹介する。
Gregory Spawton(b, a.g, Mellotron) / Nick D’Virgilio(ds, perc, a.g, vib., vo) / Rikard Sjöblom(g, kbd, vo) / Dave Foster(g, vo) / Alberto Bravin(vo, kbd, g) / Clare Lindley(vln, vl) / Oskar Holldorff(kbd, vo)
以上7名が現在の固定メンバー。
他にゲストとしてブラス(Big Big Tran Brass Ensemble)4名、チェリスト1名が参加。

本作全体の雰囲気は、浪漫とリリシズム溢れる英国田園風景調フォーキープログレ+若干のジェネシス風味。
従来あった大作志向は少し薄れ、10分未満のコンパクトな曲が大半。
(各曲を通じて共通するテーマがあり、同じwordが何度も登場するので、全体が一つの組曲みたいな感じなのかも)
明るく穏やかなムードとポジティブさが支配的で、湿っぽさがあまり感じられない。
録音の多くはイタリア(その点でもいまやAlbertoが主役だ)で行ったようなので、それも要因の一つかも。

Tr.1 Light Left in The Day
最初の曲は、Alberto と Gregory の共作。
初っ端からいきなり、魂を鷲掴みにするドラマティックで美しいメロディー。
エンディング曲かと思ったほど。
ボーカルパートは少なめ、ほぼインスト曲。
そしてBBTらしい疾走が始まる。
ブラスアンサンブルの効果が絶大で、ただでさえドラマティックな曲をさらなる高みまで盛り上げまくる。

Tr.2 Oblivion
前作の疾走感を受けて、Nick と Dave の共作による疾走ナンバー。
さていよいよ、Alberto の本領が遺憾なく発揮されているよ。
曲の中に入り込んで、感情表現豊かに歌い上げる。
これはライブで盛り上がりそう。

Tr.3 Beneath The Masts
早くも本作の山場、10分超え大曲。(5パート構成)
Gregory、Nick、Alberto の共作。
辛い過去と決別して未来に進むといった内容。(まだ読み込めておらず)
もうとにかく随所のフレーズや歌詞が心に刺さる、刺さる。
ここぞというところで鳴り響く Dave のギターも、Clare のバイオリンも、歴代メンバーと比べて全く遜色無し。
そしてコーラスやブラスのアレンジ(恐らくほとんど Gregory の仕事)はもう神業級。
9:20頃から、インストのPart4 “The Devil’s Dressing Room” になる。
豪快な Nick の変拍子ドラミングを背景に、ソロ回し。
ここでの Clare Lindley のヴァイオリンソロは一聴の価値があるよ。
そしてPartの終盤、Watcher拍子(聴けば誰でもわかる)でちょっとファンサービス、にやっとさせる。
最後の Part5 は、涙なくして聴けない。
あーなんという、美しく、心に刺さる曲なんだろ。

Tr.5 Miramare
Alberto と Gregory の共作。
曲名はトリエステのミラマーレ城だと思う。
映画音楽のようなシーニックでドラマチックな曲。
全体が3partから構成されるが、part2とpart3の間のインスト間奏部がちょっと面白い。
とにかく Nick が太鼓を叩きまくり、バイオリンとギターが乱舞。
そして感動のPart3だ。
このあたりまで聴けば、本作ではもう完全に Alberto が主役だという意味がわかると思う。

Tr.8 Last Eleven
このアルバム最終曲は Gregory が一人で書いている。
(この後ボートラが1曲入るけどね)
もしかして「最後に残った11人」って、BBTの7名+ブラス4名のことかな。
暗闇を抜けて太陽に顔を向けて俺たちやっていくぜ的な歌詞が涙を誘う。
曲調が本作中の他の曲(誰かとの共作)と異なり、技巧的でエモいロックだ。
ブローシャーのこの曲の歌詞ページには、ジャケットに描かれた子どもたちが球技(クリケットかな)で遊ぶ光景が描かれる。
遠くには雲の上に浮かぶミラマーレ城。
辛い時期を脱した Gregory の素直な心情が溢れる佳曲だ。

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