Ronald Shannon Jackson – Taboo(1990)

米国のフリージャズ系ドラマー Ronald Shannon Jackson のソロ作。
本作リリースから4年ほど遡る1986年10月に、彼は Bill Laswell の Last Exit の一員として来日し、新宿 Pit Inn でライブを行った。僕はフリージャズやノイズミュージックのことなんて良く知らず、Herbie Hancock の Rockit(1983) で知った Bill の名前だけに釣られてライブを聴きに行ったのだが、Sonny Sharrock(g)、Peter Brotzmann(sax)、そして Ronald の打ち出す狂暴な音に魅了され、全身を強打されてまるでパンチドランカーのようにメロメロになり、ふと気が付けば翌日も彼らのライブを聴きに出かけていたのだ。因みに同ライブ終了後の深夜に Herbie Hancock が同店で録音を行うので聞きたい人はそのまま残って良しというアナウンスが店内に流れ、でも疲れ切った僕は終電を気にして帰宅してしまったのだが、本当にその後 Herbie (と坂田明)が Last Exit の面子と一緒に同店で演奏したらしい。一生の不覚であった。
Last Exit ライブの話を少し続けるが、Bill は b プレーヤーというよりも仕掛け人&プロデューサー然としていて、ベレー帽なんてかぶって皮肉っぽい笑みを浮かべながら全体をコントロールしていた。一方、Sonny は狂暴な突撃隊長で、Zippoのライターを弦の上で滑らせてギュンギュン言わせたり、チューニングが外れためちゃくちゃな轟音を鳴らしたりやりたい放題。Peter はもうちょっとJazz的に狂暴なプレイで、怒りのsax。そして Ronald は見た目が最も狂暴(野人と呼ばれていた)なんだけど、実は結構知的に狂暴な音を打ち出す大学卒のインテリヤクザみたいな立ち位置だった。結局2日間のライブを聴いて、心に残ったのは Ronald の音。そういう経験があったので、後日本作をレコード屋で見つけて購入した次第だ。(前書きが長いね)
さて本作だが、参加メンバーが多いので、有名どころだけ挙げると、Living Colour の Vernon Reid(g)、華麗なJazz一家の Robin Eubanks(tb)、Ronald との共演歴が長い Bruce Johnson(b) といったところ。Bill Laswell はプロデュースのみ。

Tr.1 Mental Holiday
初っ端から5パートに分かれた大曲だ。dsの他に b が2名、管が2名、g、violin、synth というメンバー構成。ちょっと中東を思わせるエキゾチックで壮大な管楽器群のハーモニーに、James Blood Ulmer 的なペナペナな g (Vernon Reid ね)が加わり、やっぱり Ronald はハーモロディクスの人なんだよなあと思う。
非西洋的な和声、繰り返される謎めいたテーマ、でもリズムがしっかりしているので、フリージャズが苦手な人でも意外と楽しく聴けると思う。

Tr.2 Taboo
アルバムタイトル曲。Ronald のソロから始まるのだが、これはかっこいいよ。どこかの民族音楽的な世界から、内省的ssソロを経て、何故かロックンロール的世界に変化する。まさにジャケット画(米国の高層ビル群をバックに、未開民族がダンスしている)通りの曲だ。

Tr.4 Challenge to Manhood
これも好きな曲。比較的わかりやすいテーマ、ノリノリのリズム。g のバッキングが、これはハーモロディクス風なんだろうか、ちょっと面白い。

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