Riverside – ID.Entity(2023)

Poland の Prog Rock バンド Riverside の新譜が届いたのでレビューする。
2016年に創設メンバーの一人 Piotr Grudzinski(g) が亡くなり、バンド存亡の危機を迎えたのだが、その悲しみを乗り越え、2018年に傑作 Wasteland をリリース。
その Wasteland ではリーダー格の Mariusz Duda(b, vo) が g も演奏していた(つまりトリオ編成)のだが、さすがにライブでは再現不可能なので、助っ人として呼んだのが Maciek Meller(g) だ。その後 Maciek は正メンバーとして加入し、今に至る。
話の流れでメンバーを紹介する。
Piotr Kozieradzki(ds) / Michael Lapaj(kbd) / Mariusz Duda(b, vo) の3名はバンド創設時からの不動メンバー。そこに Maciek Meller(g) が加わって4名編成。

さて新譜の印象を最初に語るが、一言でとても乱暴に言えば「暗くない」ってのが最初の感想。
Riverside の音世界は、Pink Floyd や Pocupine Tree を強く想起させる暗くて湿ったサウンドが特徴だったが、恐らくは亡くなった Piotr Grudzinski の嗜好がそっち方向だったのだろうと想像する。
新譜は Mariusz が大半の曲を書き、リードしている。その Mariusz は、インタビュー等で Electirca や Ambient 等が好きだと広言しているし、実際彼のソロプロジェクトである Lunatic Soul を聴いてみても、確かにそっち方面の音だった。
歌詞の内容はそれなりに攻撃的・刺激的なのだが、サウンドは意外にもカラッとしていて、カラフル。何だかすっかり現代っ子の音になっている。
そこを気に入るか、昔の音に固執するかによって、本作の評価は分かれるかもね。

Tr.1-1 Friend Or Foe?
いきなり問題作だよ。
この曲についての Mariusz のインタビュー記事を読んだが、このネット社会において果たして自分が自分自身でいられるのか、他の何かのフリをしないといけないのか、そういう歌詞の内容に呼応して、誰もが聞き覚えのある80年代のRock/Popの雰囲気やモチーフを意図的に(ある意味では嘘っぽく)曲に被せているのだ。
本作についてのネットのレビューで、「まるで Aha かと思った」みたいなものをいくつか見かけたのだが、まさにそれ。それを意図的にやっているのだ。
で、何度も聴いていると、表面に嘘っぽく被せた80年代風のモチーフのすぐ下から、いかにも Riverside らしいフレーズが浮かび上がってきて安心するのだけど、それはあくまでも Wasteland から繋がる Mariusz の音楽であり、Piotr Grudzinski が好んだ暗く陰鬱な Poland の音世界はもう無い。

Tr.1-3 Big Tech Brother
ds, b, そして Brass っぽい syn によるユニゾンのイントロがカッコよい。
ちょっと前の作風、例えば Anno Domini High Definition(2009) や Shrine of New Generaion Slaves(2013) あたりに近い気がする。
曲は Mariusz と Michael Lapaj が書いているのだけど、この雰囲気は Michael のセンスなのかも。
昔の Riverside らしいサウンドは、やはり聴いていて落ち着くな。

Tr.1-7 Self-Aware
歌詞の内容はまだ未確認だが、タイトルと曲調から Tr.1-1 と呼応しているんじゃないかな。
またまたいかにもな80年代風のトッピングがモリモリと被された曲。
そうだなあ、Aha + Rush だな。例えて表現するならば。
聴いていて勿論楽しいのだけど、80年代風できもちい~と素直に喜んで良いのか、どうにも Mariusz の周到な意図(というか意地悪さ)を感じて居心地が良くないのね。
単純に楽しんで良いのか、ひねくれた裏の意図を読み取りつつ斜に構えて聴く方が良いのか、どうにも中途半端な気分に包まれて本作はここで終わる。

Tr.2-1 Age Of Angar
僕が購入したのは Deluxe Edition ってヤツなので、豪華2枚組なのだ。
2枚目の冒頭は11:56のインスト大曲。
Shrine of New Generaion Slaves(2013) の2枚目にも、Night Session Part One/Two と称する酩酊系のテクノ大曲が収容されていたが、今回のこれはテクノ風味は少し控えめ。
新入りの Maciek も頑張っており、Riverside の Progressive Rock Band としての良さが全面的に現れた良き演奏。

Tr.2-2 Together Again
2枚目の2曲目もインストの良い曲。
これも Mariusz と Michael の共作だな。
やはり Michael が加わると、ちょっと昔の Riverside の音になる気がする。

コメント