Santana – Abraxas(1970)

ちょっと温故知新したくなって、古いアルバムを聴いている。
Santana のスタジオ2作目 Abraxas だ。
もう少し後の Caravanserai や、Welcome 等を聴いていて、そういえば Carlos は元々 Jazz 好きだったらしいが、古い作品にもその片鱗はあるのかなと調べ始めたのがきっかけ。
スタジオ1作目の Santana(1969) であれば、Tr.7 Treat のピアノがまあ該当するかな。Jazz と言うよりも街角 Blues だが。
1作目に比べると、本作のTr.4 あたりはもう少し Jazz 濃度が高い。詳しい話は曲毎紹介にて。
本作の参加メンバーを書いておく。Carlos Santana(g) / Gregg Rolie(kbd, vo) / David Brown(b) / Michael Shrieve(ds) / Jose “Chepito” Areas(perc) / Michael Carabello(perc) といった方々がバンド Santana の固定メンバー。他にゲストが少し。因みに、Gregg Rolie は後に同じく Santana に参加していた Neal Shon と共に Journey を結成する。Michael Shrieve は Stomu Yamashta の Go に参加したり、ずっと後だが Shawn Lane や Jonas Hellborg とも一緒にやったり、面白い立ち位置で広く活躍することになる。

Tr.1 Singing Winds, Crying Beasts
邦題が「風は歌い、野獣は叫ぶ」と、まあ凄いのだけど、これは直訳だ。本作の翌年にリリースされた Pink Floyd の Meddle(1971) に One of These Days という(プロレスで有名になった)名曲があり、その邦題が「吹けよ風、呼べよ嵐」なのだが、時々混乱するよ。
打楽器隊に合わせてDavid Brown が b の太い音で繰り返すシンプルなフレーズと、Gregg Rolie の el.p の幻想的な感じが、しっかりと Santana 色(バンドカラー)を打ち出している。

Tr.2 Black Magic Woman / Gypsy Queen
Carlos のヒーローだった Peter Green (Fleetwood Mac) の曲と、同じくヒーローだった Gabor Szabo の曲をメドレーで繋げている。その後のライブで必ず演奏される、Santana の代表曲となった。
さて、後半の Gypsy Queen の方だが、作曲者の Gabor Szabo はハンガリーのジャズギタリストだ。You Tubeで、Gabor のオリジナルを聴けるが、ラテンフレーバーの神秘的なジャズナンバー。打楽器群は激しく盛り上がるのではなく、例えて言えばラベルのボレロの様に、執拗な繰り返しを通じて温度感が静々と上昇していき、狂気に至る。ああ、これが気に入ったのね。そう言えば、後に Festival(1977) で、Revelations (邦題が「哀愁のボレロ」)なんていう、そのものずばりをやってたね。

Tr.3 Oye Como Va
サルサの神様 Tito Puente の曲。Greg Rolie のオルガンがかっこいい。

Tr.4 Incident At Neshabur
今回のレビューは、この曲に注目。作曲者の Alberto Gianquinto が演奏にも p で参加している。
ペンタトニックのリフを中心に展開する Rock な演奏の上で、Alberto の p が一人だけ Jazzy なフレーズを弾くのだ。Gregg のオルガンと対比して聴くと面白いよ。
2:38頃からブレークを挟んで、Ⅰmaj7 – Ⅳmaj7 の幻想的繰り返しへ。僕はこれを Santana の「涅槃モード」と呼んでいるのだが、Caravanserai(1972) の Song of the Wind とかでも効果的に用いられている、言わば Santana のキメ技の一つだと思う。

Tr.7 Samba Pa Ti
邦題が「君に捧げるサンバ」、とこれも直訳しただけなのだが、いい感じだね。
作曲は Carlos ご本人だ。
最初はゆっくりとしたリズムで始まる。このペナペナした芯の無いギター音は、Gibson の SG かな。僕も含めて60年代前後生まれのギター少年はみんなこの曲をコピーしたので、寝ながらでも一音一音全てのフレーズを思い出せるよ。
1:59頃からリズムが倍速になり、バンプし始めて、いよいよ Samba になってくる。ギターが奏でるフレーズが、キューバ音楽の有名曲 The Peanut Vendor (邦題は「南京豆売り」、そのまんまだ)に似ているのだが、後のライブでは実際に Carlos はこの曲の途中で The Peanut Vendor を演奏するようになった。日本でも大昔(昭和初期、ディックミネとかの頃)流行して、「まめ~、まめかってちょ~だ~い」ってやってた曲なんだけど、知らないよね。

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