Scott Henderson – People Mover(2019)

テクニカルギター界の輝ける超新星だった Scott 師匠も歳を重ね、今や Jazz/Fusion ギター界の誰しもが認める世界的巨匠、いわゆるバーチュオーゾだ。その世界的巨匠をもってしても、CDを自主制作盤でリリースしないといけないんだねえ。
さて、何で今 Scott Henderson 師匠を取り上げるのかと言うと、実は Richard Hallebeek の古いアルバムを聴いていて、ふと Sebastian Cornelissen のことが気になり、Sebastian の古いアルバムを入手して聴いたら、そこに参加している Marc Guillermont が Scott Hendereson リスペクト溢れる素敵な演奏(音色や特徴的フレージングがそっくり)をしているものだからすっかり魅了されてしまい、回り回って今、本作を聴き込んでいる次第。Sebastian のアルバムについてもいずれレビューしたい。
参加メンバは、Scott Henderson(g)、Romain Labaye(b)、Archibald Ligonniere(ds) の3名。ギタートリオ編成だ。b と ds の二人については、素性良く知らず。かなり上手。
一言だけ蛇足を書く。本作リリース後に師匠が来日して都内のライブハウスで演奏したのだけど、僕がチケットを予約していた公演最終日は、猛烈な台風の影響で公演中止になってしまったのだ。久しぶりに師匠の御尊顔を拝することができるとわくわくして待っていたので、ずいぶんがっかりしたのだけど、まあ自然現象には勝てないな。

Tr.1 Transatlantic
のっけから技巧的で Jazzy なギター曲。ちょっと昔の Scott 師匠に先祖返りした感じもあるが、若いころの元気一杯感は当然無く、年齢相応に落ち着いた演奏。まあ当たり前だな。
Blues 風味や Rock 風味は抑え気味で、スモーキーに Jazz をやっているのだが、途中不思議なSEが入ったりで、ちょっと The Zawinul Syndicate とか思い出した。
繰り出すギターフレーズは文句なしに「教科書」であり「宝庫」であって、大学の Jazz 研の皆さんあたり、一音一音拾って必死に分析したくなるだろうな。僕はもう弾かなくなって久しいので、むしろリラックスして聴くことができる。

Tr.2 Primary Location
この曲は Tribal Tech 風で楽しいぞ。トリオなので、当然 g は出ずっぱり、弾きまくり。
最後、曲が終止してから、リズムセクションが静かにキープする中、リングモジュレーターをかけたような g でモゴモゴ弾いて不思議な雰囲気で終わるのが楽しい。

Tr.4 People Mover
これも技巧的な構成の曲。何と Scott 師匠ご本人が、この曲のイントロを一音一音コード名を挙げながら弾いてくれる動画を、Young Guitar 誌が上げてくれているので、ご興味ある方は是非。ついていける人にはものすごく勉強になると思うが、僕は落ちこぼれて絶望しか無い感じだ。

Tr.5 Satellite
軽快な Jazz フォーマットのナンバー。現代の g トリオとしてのお手本的な演奏だ。Romain(b) のソロ上手し。最後のあたりは Tribal Tech 風味。

Tr.6 Blood Moon
Blues 好きな師匠らしい、アーシーなイントロ。
この曲における師匠の g の音が素晴らしい。若かりし頃の透明感のあった音とは異なり、非整数次高調波多めの存在感ある音。

Tr.8 Syringe
何故「注射器(Syringe)」が出てくるの?
どうも本作のアルバム名、曲名には何かストーリーがありそうなのだがわからん。
スリリングで不思議な感触の曲。

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