コロナ禍の中、音楽ライブもなかなか開催されないので、最近は音楽関連のネットニュースのチェックをあまりしていなかったのだが、今春3月に Bill Rieflin ががんで亡くなっていたことを遅まきながら知り驚いた。享年59才とは、僕と同い年ではないか・・・。合掌。
2018年の King Crimson(KC) 来日公演(オーチャードホール)では、打楽器奏者ではなくキーボーダーとして参加してくれた。その前からバンドを長期休業(でもなぜか籍は残されている)したり、Bill は今後もKCの重要メンバーだとの Robert 翁の発言があったり、その特別扱いにやや不思議さを感じていたのだが、周囲の理解を得て闘病していたのかもね。
さて本作は、長い音楽キャリアを有する Bill が初めてリリースした自分名義(3人共作)の作品。
同年リリースではあるが先行して制作された Birth of a Giant(1999) という Bill のソロ作品に Robert Fripp が参加し、その際の音源を利用して本作が制作されたということらしいが、詳細は不明。
個人の趣味に走った(売れ筋ではない)ソロから、もう少し商業的なアルバムに発展させるというのなら理解できるのだが、両盤を比較して聞くと Birth of a Giant の方がほんの少しだけ(ほんとにちょっぴりね)ポップさがあり、本作の方が Robert Fripp 丸出しの攻撃的かつ前衛的なサウンドだ。
1999年頃といえば、KCが活動停止し、いわゆる Projekct (スペルミスじゃないよ)が多数発生・乱立して、次代のKCサウンドを求めて研究開発(と Robert 翁は説明していた)を繰り返していた時期。僕が本作を購入したのも、Projekct 漁りの一貫だったし、本作のサウンドもまさに Projekct 的である。(わかる人にしかわからず、わかる人はこんな説明は不要なので、まったく意味の無い文章だなあ)
メンバーは、Bill Rieflin(ds, loops) / Trey Gunn(Warr guitar) / Robert Fripp(g, soundscape) の3名。
Bill は基本的には打楽器奏者なのだが、鍵盤もギターも弾きこなすマルチプレーヤーで、ミックスも自分でやってしまう技巧者。
Trey Gunn はタッチギターの先駆者の一人で、KCでは Robert Fripp の右腕の一人(右腕は一杯いる)。
Robert Fripp 先生は、大企業 King Crimson(KC) の経営者。他の同世代のプログレ者達が昔の看板で商売する路線(有名アルバムの完全再現ライブとか)で悠々と老後を楽しむ中、飽くなき前進(Progression)と商売っ気を高次元で両立させてきた偉大なお方。(経営者だけに、バランスは商売っ気の方に傾いているけどね)
Tr.1 Blast part 1 / Tr.2 Blast part 2
深い残響を伴うキラキラしたシンセのパッセージやパッド音の後ろで、生っぽいスネアの音が妙に生命感を感じる。
重低音のベースは Trey Gunn の Warr だろう。タッチギター独特の腹に響く澄んだ重低音。
4:17 あたりから Robert 翁の(いつもの)サウンドスケープギターがなだれ込んでくる。
つい上モノの音に注意が持っていかれるが、敢えてリズムセクションを聴いて欲しい。
静である part1 に続いて動の part2 になる。スネアでパーカッション的に細く刻んだ part1 に対し、part2 ではヘビーなロックドラム。
最後は Robert 翁のサウンドスケープ的に終了。
Tr.4 Hootenanny at the Pink Pussycat
身動きできないほどの緊張感が連続するTr.1-3の後、何だかおバカなタイトルでやけに楽しげな曲が始まる。
主旋律(?)は、これはギターシンセなのだろうか。音はシンセなのだが、グリッサンド具合が何だかギターシンセ的なので。でも Bill によるシンセのオーバーダブかも。
で、その後ろのリズムセクションがやっぱり凄い。Bill のドラムミングのタイトな刻み方が超かっこよい。ずっと聴いていたいのだけど、2分強で終わってしまう。
Tr.8 Re-entry
ミドルテンポで重厚なロック。本作の中では最もKCっぽさを感じる曲。
Tr.10 Strangers on a Train
短いブザーみたいな音を用いたリズムパターン(loop)を背景に、Trey による Warr のソロから始まる。Warr guitar ってのは音域的には通常のベースより高音域がかなり広く伸びているはずだが、Trey の使い方は割とベースギター的。まあ Robert Fripp 大先生が横でギターを弾いているのだから、高音域は譲らないとね。
アルバムの最後を締める曲だから多少は叙情的にとかメロディックにとか、そういう俗世間の考えはここには一切存在せず、Trey と Bill による壮絶なリズムの取っ組み合いを横目に Robert 翁はサウンドスケープ的謎ギターを鳴らしながら天上をゆるゆると旋回する。そして頃合いを見計らって、Robert 翁のギターが一閃切り込む。いやかっこいいわ。
最初から最後まで、緊張の連続。ガチのトリオバトル。いやあこんな演奏を生で観たかったなあ。
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