Bokanté – History(2023)

米国の大所帯Jazz/Funkバンド(っていうまとめ方はいくらなんでも乱暴すぎるか)Snarky Puppy の一部メンバーと、カリブの歌姫 Malika Tirolien が立ち上げたバンド Bokanté の3作目。
(2作目は、Bokanté & Metropole Orkest & Jules Buckley 名義なので、Bokanté 単体としては2作目か)

Snarky のリーダー Michael League の西アフリカ趣味(モロッコ大好き)と、ボーカル Malika のルーツであるカリブ音楽(西アフリカの影響強し)が合体し、そこに日本人も含む多様な人種の技巧者ミュージシャンが集って、ダイナミックで素敵な音楽を生み出す。

メンバーは下記の8名。(打楽器名等を詳細に書くと凄く長くなるので乱暴にまとめちまった)
(vo) Malika Tirolien
(Percussion) Weedie Braimah / Keita Ogawa / Jamey Haddad / André Ferrari
(b, oud) Michael League
(g) Chris McQueen / Bob Lanzetti
(lap steel g) Roosevelt Collier
1作目の7名に、新たにWeedie Braimah が加わった陣容。
つまり8名のうち半分の4名が打楽器奏者!
この強烈に土着的なんだけどどこのものでも無い汎民族的打楽器アンサンブルを背景に、Jazz/Rock系白人ギターと、ディープサウスでブルージーなラップスティールギターが鳴り響く。
全ての歌詞は Malika が書いて歌うのだが、クレオールなので意味はわからない。
そしてこれら全てをまとめあげているのが、リーダーの Michael League だ。(作曲も大半は彼による)

Tr.1 Bliss
アルバム1曲目は、何だかロックっぽいリフで始まる。
導入部が終わったところで打楽器群がなだれ込み、あっというまにふかーいふかーいどこかの異空間に連れて行かれる感覚。

Tr.2 Adjoni
1作目の An Ni Chans あたりに近い、「民謡モード」の楽しい曲。
ちゃかぽこな打楽器群と、お囃子的なギター、そして腹に響くベースがリズムを前に前に送り出す。
そこに多重録音された Malika の未来的で不思議なハーモニーと、スティールギターの「俺だけ米国南部」な轟音が見事に溶け込む。

Tr.4 Illiminé
この曲が前半の山場かな。
撥弦楽器のリフと打楽器群をバックに、Malika の一人コーラスと掛け合い。
ときおり鳴り響く豪快なソロは、電気バイオリンかと思ってクレジットを探したけどいないので、どうやら Roosevelt のスティールギターだと思う。あの楽器でこんな細かいフレーズ弾けるのね。名人芸。

Tr.8 Mikrob
哀愁に満ちたアコギのリフと Malika の心に染み入る歌声。
2:23頃から転調して、それはもう素敵な雰囲気になっていくあたり凄いよ。
涅槃に行ける。

Tr.9 History
最後はアルバムタイトル曲。
Snarky の近作が米国南部(彼らはTexas大学出身)のブルーズに先祖返りしたのと同様に、この曲でも根っこのあたりにブルーズを感じる。
西アフリカと欧州の音楽が融合してブルーズ、ジャズ、ロック等が生まれ、それらを吸収して育ったミュージシャンが今一度あっちとこっちを混ぜ直して更に素敵な音楽を生み出している。
それらの背景には文化の衝突、差別や迫害、奴隷労働等の悲しい歴史があるわけだが、そういう中でも歌うことをやめなかった人々が蒔いた種が、現代の豊穣な音楽として育っているのだな。

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