先日 Boston T Party のレビューを書いた後、色々と思うところがあって、Jeff Berlin の諸作(ソロもゲスト参加も含めて)を時間軸を遡って聴き返していた。
なぜかこれまでに彼のソロ作を全くレビューしていないことに気づいたので、ポチポチと書いていくことにする。
本作は彼のソロデビュー作。今は亡き Passport レーベルからのリリース。
1985年と言うのは、Jeff が Bill Bruford や Allan Holdsworth 等との仕事によって主にプログレ界隈で有名になり、その後の伝説の Players Live (本作と同じ面子)や、渡辺香津美の Spice Of Life が1987年にリリースされて Jazz 界においても広く認知されるようになる丁度そのような時期。
Jeff Berlin のプレイスタイル的には、この頃はかなり音符密度多めの超テクニカル・速弾きベーシスト。2000年以降はFusionを離れて、メインストリームに近いJazzを演奏するようになっていくのだが、80年代の彼はどちらかというとRock寄りのバカテクFusionベーシストだ。
本作の基本メンバーは、Jeff Berlin(b) / Steve Smith(ds) / Scott Henderson(g) / T. Lavitz(kbd) の4名。つまり、Players の皆様なのだが、本作では Vox Humana と名乗っている。
(因みにこの Vox Humana とは、パイプオルガンの音色(ストップ)の一つで、「人の声」の意味。)
あと曲により、Neil Peart(ds) や Neal Schon(g) 等の大物ゲストも参加しているよ。
Tr.1 Mother Lode
出だしからいきなり、Jeff によるきれいなコードバッキング、その上に乗る Scott の伸びやかなギターフレーズ。
1:43から、Scott のそれはそれは端正なギターソロがたっぷり1分間。
3:20頃から曲が疾走を始める。
Tr.2 20,000 Prayers
前曲と同じく基本メンバーのみでの演奏。
曲の雰囲気も同様。ゆったり切なく美しい。
2:56頃から、Jeff の速弾きソロ。全ての音がつぶれずきれいに聴こえ、フィンガリングミス等のノイズも皆無という超人的演奏。
Tr.3 Marabi
Cannonball Adderley 作の古い曲をアレンジ。
初っ端から Jeff と Scott の長い長い(2:12くらい続く)ユニゾン。これは度肝を抜かれるよ。
ゲストとして Neil Peart(ds)、Clare Fischer(kbd)、Ed Smith(perc)、Walter Afanasieff(p) が参加。
Neil Peart の音はどこに?
Tr.4 Subway Music
この曲では、Scott が伴奏にまわって、リードギターは Neal Schon がゲスト参加している。
恐らくは Steve Smith (ご存知のように彼は Journey のドラマーだ)が連れてきたのだろう。もう一音弾いただけですぐわかる彼独特の音色。フレージングもちょっとエキセントリックで楽しい。
もう一人のゲストとして Keith England(vo) なる人が参加。良く知らないのだが、サザンロックっぽい感じの味のあるロックボーカル。
Tr.6 Dixie
本作リリース後、Jeff Berlin がステージに上がると必ず弾く「必殺技」となった無茶苦茶高度なベースソロ。インタビューによると、超絶技巧の Jeff を持ってしても、この曲を(このアレンジで)弾けるようになるまで相当な年月を要したらしい。
曲自体は、米国南部に伝わるトラディショナルミュージック。皆さんきっとご存知の有名曲。
Jaco に、俺よりも上手いと言わせたみたいな話も伝わっているが、一時期の Jeff にとっては Jaco の Portrait of Tracy みたいな位置付けの曲だったように思う。つまり、誰もが感銘を受け、誰もが驚嘆するショウケースであり、そして何より驚くほど美しい曲。
Tr.8 Champion (Of The World)
アルバム最後は、Ronnie Montrose と Neil Peart をフィーチャーしたちょっと都会派Rockっぽいアルバムタイトル曲。
もう一人ゲストのメインボーカルは Roger Love というお方。良く知らない。
Ronnie Montrose をフィーチャーとは言っても、彼は作詞とバックボーカルのみ。ギターは弾いていない。(ギターは Scott Henderson)
そして Neil Peart だが、Steve Smith とは全く音色が違うので、聴き比べると面白いよ。Neil の音色は、全体的に乾いて軽く高い音。そしてタイム感的には超ジャスト、全くタメない。
うーん、Scott Henderson と Neil Peart の共演なんて、他作品には無いんじゃないかな。考えてみると凄いことだ。これを聴くだけでも本作を入手する価値ありなのだが、残念ながらレーベル倒産により再発ならず、今やレアCDなんだよね。
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