Peter Gabriel – Peter Gabriel 4 (Security)(1982)

長年愛聴し続けている1枚を紹介。
Peter Gabriel のソロ4作目。
今更ご紹介の必要等無いとは思うが、元Genesisの看板ボーカリストであり、独立してからは自身のソロ活動に加えて、WOMAD等のワールドミュージック普及啓蒙活動や、自身のレーベル(Real World Records)及びスタジオ(Real World Studio)の経営と、多方面で驚くべき大活躍をしている偉大なミュージシャンだ。
僕が若い頃、人から好きなミュージシャンを聴かれると Peter Gabriel の名前を挙げていたのだが、「ネクラ!」あるいは「誰それ?」のどちらかの反応が大半だった。つまり、PGのことを知っている人はネクラだと言い、そもそも彼の存在を知らない人が多かった。次作あたりからは(特にヒットした Sledgehammer等)少し明るい曲も増えてくるのだが、本作までは確かにネクラで痛々しい曲が大半。ある種の傾向を有する人たちを惹き付ける磁場を強く発生する音楽だったのだ。(ネクラなプログレオタクってことね)
さて、彼のソロ作のうち第1作から第4作まではアルバム名が無い。ジャケットには単に Peter Gabriel と書かれているだけ。なので通常は “1” とか “Peter Gabriel 4” とかそういう呼ばれ方をしているのだが、わかりにくいったらありゃしないので、ジャケット画の印象から “Car”、”Scratch”、”Melt”、”Security” (作品順)と呼ばれることがある。今回はその Security を取り上げる。
参加ミュージシャンを挙げておくと、Jerry Marotta(ds) / Tony Levin(b) / David Rhodes(g, vo) / John Ellis(g, vo) / Larry Fast(syn) が基本メンバー。曲によっては Peter Hammill(vo)(ex. Van Der Graaf Generator)、Morris Pert(perc)(ex. Brand X) 等がゲストとして加わる。
特に Tony Levin と David Rhodes の二人は、PGとの絆が深く、大半の作品に参加している。Growing Up ツアーを収録した映像作品では、PGも加えて3人で頭を丸ハゲにした仲良しトリオの楽しそうな様子が見れるぞ。あとTony Levin は、自身がメインメンバーとして参加している King Crimson のライブと、ゲストとして呼ばれた PG のライブのスケジュールが重なったときに、迷わず PG の方を優先した(結果的にKCはライブをリスケせざるを得ない)逸話も有名だ。本当に深い絆なんだよね。

Tr.1 The Rhythm of the Heat
アルバム最初のこの曲、特徴はアフリカ音楽の大胆な導入だろう。明確な始まりとしては前作(PG3 Melt)の Biko からだとは思うが、あれは曲のテーマ(アパルトヘイト反対)に沿って選択された表現方法としてのアフリカン。まあ例えて言えば、Biko の映画を作って、それにわかりやすくアフリカンな映画音楽を付けるような感じだ。対して本作におけるガーナの打楽器群の大胆な導入は、もっと深い表現欲求に根ざしているように思う。心の底から沸き上がる原始的な何かを表現するために、どうしてもこの地響きのような打楽器アンサンブルが必要だったのだろう。
本作がリリースされた1982年に、PGが主催するワールドミュージックの祭典 WOMAD(World of Music, Arts and Dance)が開始され、今でも継続的に開催されている。

Tr.2 San Jacinto
この曲が僕のファイバリット。
曲名はカリフォルニアにある山脈の名前だが、歌詞の内容はネイティブ・アメリカン(いわゆるインディアン)と共に山を登った際の印象的な体験を綴る。大地と生命を称える素敵な内容だ。
音楽面の特徴は、マリンバやサンプリングシンセ(Fairlight CMI が大活躍)の多重録音によるガムラン調のバッキングだろう。
バックボーカルに、当時のPGの奥様 Jill が参加している。まさに本作製作中に、奥様がプロデューサーの一人と浮気してしまい、それが原因で離婚。その後長いことPGはうつ病で苦しむこととなる。

Tr.3 I Have The Touch
ドラムの音(エフェクト)に注目。フェーズシフターあるいはコーラスを深くかけてシュワシュワ言わせ、深めにかけた残響とともにゲートか何かで短めにカットする。いわゆるゲートリバーブに近いのだが、更に過激な音だ。
本作を通してこのテクニックが使われているのだが、特に効果的なのがこの曲とTr.8 だ。

Tr.4 The Family and The Fishing Net
ああ暗い。真っ暗だ。歌詞も不気味。
何十年聴き続けても、この曲自体を大好きにはなれそうにないのだが、でも本作にはこの曲が絶対に入っていないとならないのだ。

Tr.5 Shock The Monkey
シングルヒットした有名曲。
Tony Levin が演奏する Chapman Stick がとても効果的で素晴らしい。
この曲や、King Crimson の Diciplin あたりで Stick の魅力に取り憑かれて、高額な楽器を購入してみたものの弾きこなせず、部屋に放置している人が世界中にいっぱいいるらしいよ。

Tr.6 Lay Your Hands on Me
シアトリカルだが暖かい曲調。まるでティンパニーのように鳴り響くドラムが、ドラマチックに曲を盛り上げていく。Tr.5の浮かれた感じを少し鎮めてくれる。

Tr.7 Wallflower
政治的な理由で不当に収容されるいわゆる政治囚に向けて静かに歌いかける、とても感動的な曲。
自らの生命と人生を賭けて戦う政治囚。その獄中の彼らに向けてPGは、君たちはある日消えて(消されて)しまうかもしれないが、決して忘れ去られることは無い、そのために僕(PG)はできる限りのことを全力で為し続けると宣言する。実際PGは、アムネスティ等の活動に参加し、この曲を歌い続けている。

Tr.8 Kiss of Life
最後は、シリアスな前曲からがらっと変わって、陽気で楽しいハッピーな曲だ。
エフェクトを加えたドラムの音がとてもかっこいい。
ネクラだったり、湿っぽかったり、不気味だったり、本作はそういう曲が多いので、最後にこういう陽気な曲で終えてくれるのは素直に嬉しい。

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