米国のキーボード/管楽器プレーヤー Peter Fernandes が制作した、新旧フュージョン盛り合わせ、豪華ゲスト大勢参加の「全部入り」的な作品だ。
全曲を自身が書き、多少のインプロ部分は残すものの、基本的には書かれた曲を書かれた通りに大御所達に弾いてもらう。まずここだけでも凄いよ(普通は恐れ多くてできないか、書き込むのが面倒だから任せる)。
そしてミックス、トラックダウンも2年かけて全部自分でやったらしい。
偏見かとは思うが、キーボーディストって、緻密で知的で完全主義者な印象あるよね。
総じての感想は、曲毎に「これは何風に」の「これ」があまりにも明確すぎて、少々気恥しい(何故?)ところはあるが、懐かしフュージョンと Holdsworth と Planet X を混ぜて聴かせていただけるのはとても贅沢で楽しい経験だ。
ゲストの顔ぶれを主だったところだけ挙げると、g は Brett Garsed, Richard Hallebeek, Greg Howe等。
b は Jimmy Johnson, Ric Fierabracci 等。ds は Virgil Donati, Gary Husband 等。kbd は Derek Sherinian 等。
他にもいっぱいいて書ききれない。あと一人(?)だけ挙げると、The BS&T Hornsが2曲参加しているのが嬉しい。Blood, Sweat & Tears ですぜ、まあ若い人は知らないか。
曲毎にメンバーが錯綜し、曲調も全然異なるので、全曲簡単にレビューしてみる。
Tr.1 Destiny Controller
Derek Sherinian(kbd) のソロを大フューチャーした Prog Metal から本作は始まる。
リズム隊は Ric Fierabracci(b), Shane Gaalaas(ds) の組み合わせ。
Brett Garsed(g) がいつもの流れるようなレガートフレーズを弾いている。Derek とのソロ合戦が楽しい。
Tr.2 Nightbird
雰囲気がガラッと一転して、まったりとした懐かしフュージョンだ。
曲名からして、Shakatak を思い出すよ。(全然違う曲だけど)
リズム隊は、Johannes Zetterburg(b), Joel Rosenblatt(ds) の組み合わせ。
Chris Bryant(g) がねちっこくて昔っぽいフレーズを弾いている。
Marcus Monteiro(as) も昔っぽくて良いね。
Tr.3 Grown Ups
Peter は、この曲で Dave Weckl 風をやりたかったらしい。
リズム隊は、Ric と Joel の組み合わせ。g と as は前曲と変わらず。
途中で Peter による EWI (AKAIが作ったウィンドシンセサイザー)のソロが聴ける。Marcus の as と一緒に Breckers 風をやっているのも楽しい。
Tr.4 Sheffield Songo
懐かしのラテン風味フュージョンだ。
前曲のメンバーに加えて、John Pelosi と Chris の g 勢と、The BS&T Horns が参加。
5:10あたりから、ラテンパーカッションが入り、BS&Tの皆様登場。ああ、Peter 君これがやりたかったんだねえ。その気持ち良くわかるよ。これは楽しいもの。
Tr.5 Your Truth
ここでまた曲調がガラッと転換して、Allan Holdsworth 大好き丸出しサウンドになる。
リズム隊は何と、Jimmy Johnson(b), Gary Husband(ds) のモノホンな大御所。
そして Allan 役をそっくりに演じるのは、Richard Hallebeek だ。
Jason Roze(vo) が入っているのは、Peter が Allan の Secret(1989) が好きであのへんを狙ったらしい。
Tr.6 Dorothy
また曲調が転換して、今度は Greg Howe(g) 御本人登場による Greg Howe 好き好き大会だ。
Peter は、Greg の Introspection(1993) あたりの少し古めの感じを狙って曲を書いた模様。
リズム隊はTr.1と同じ。Ric が結構物凄いソロを弾いている。
そして Greg はとても元気で伸び伸びだ。本作を収録していた時期は Maragold(2013) 立ち上げと重なると思うが、やはり彼はあっち(vo主体のrock)よりもこっち(インストフュージョン)方面が似合っているし、精神的に楽なんじゃないかなと思う。
Tr.7 Market Street
これも懐かしフュージョンなんだが、何と日本の Dimension の増崎孝司(g)、藤田一樹(as) を迎えて、日本のフュージョン好き好き大会をやっている。何故なのか不明だが、Peter 本人がアニメも好きだし日本のフュージョン大好きと言っているので間違いない。
キメフレーズをsaxとgでユニゾンする、あの世界だね。
リズム隊はTr.1と同じ。バンプするリズムを、Ric はあまりスラップせずに弾いている。
Tr.8 Flight To Rio
再び Dave Weckl 好き好き大会だ。
出だしを聴いて Larry Carlton の Rio Samba を思い出した。
リズム隊はTr.2の懐かしフュージョン組。Joel がサンバリズムを華麗に叩く。
The BS&T Horns が入って超豪華な仕上がり。
Tr.9 Q.E.D.Intro / Tr.10 Q.E.D.
さて最後は Planet X 好き好き大会だ。Derek に加えて、何と Virgil Donati(ds) まで引っ張り出してしまったよ。そして g は、Brett と Richard の2枚を贅沢に投入。b は Jimmy Johnson だ。何とまあため息をつきたくなるような豪華な組み合わせではないか。
出音はと言えば、Planet X に Richard Hallebeek が参加したみたいな・・・まあそのまんまだ。
でも曲を書いているのは Derek でも Virgil でも無く、Peter なんだから、まあ色々な意味で凄いね。なんちゃってPlanet Xを本人達を使ってやってるわけだ。音楽的能力に加えて強い心臓(怖いもの知らず)が無ければできないとても危険な技だ。
ということで、本作はこういう遊びの有難さを感じる人だけが買えば良し。とても楽しめるよ。
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