Jeff Berlin – Pump It! (1986)

Jeff Berlin のレビューを続ける。この後リリースの時間軸通りに進めるかどうかは未定。
今回はソロ2作目の Pump It! を取り上げるのだが、リリース当時、僕は下手くそな Fusion バンド(もちろんアマチュア)のギタリストをやっていて、本作の Crossroad あたりを良く皆で演奏して遊んでいたこともあり、思い入れが深いアルバムだ。青春の1ページって奴かも。(うええキモい。)

ソロ1作めの Champion は、いわゆる Players の皆様が参加した豪華絢爛な Jazz-Rock Fusion の傑作だったわけだが、2作目はもうちょっと Rock 寄りな味付けになっている。その差は参加ミュージシャンの違いから来るものかと思うので、ざっと紹介する。
Jeff Berlin(b) / Tris Imboden(ds) / Frank Gambale(g) / Ron Reinhardt(kbd) / Brad Dutz(perc) が基本メンバー。曲によりゲストが加わる。
Tris Imboden はセッションドラマーで、Kenny Loggins 等のメジャーな Rock 界での仕事が星の数ほどあり、Chicago にも参加歴ありと、ほぼ Rock 王道の人だ。
Frank Gambale は Scott Henderson と並ぶ当時の Fusion Guitar 界の牽引者。実はギタリスト虎の穴とも呼ばれるG.I.T.(音楽スクール)で Frank が講師、Scott が生徒(後に Scott も講師となる)という師弟関係なのだが、Scott の方が先にメジャーになる。Jeff Berlin のソロ1作目に Scott が参加し、2作目では後任として Frank が参加、では抜けた Scott は何をしているかというと、Chick Corea Elektric Band の第一弾に参加するのだ。そして Scott は Elektric Band も1作だけで抜けてその後任にまたまた Frank が加わる。つまり師弟で仕事を回しているのね。それは麗しき師弟愛ということだけでもなくて、当時このレベルの仕事を完璧にこなせるトップクラスのギタリストの代表格がこの2名だったということだろう。で、Scott に比べると Frank はやや Rock 寄りの音楽性を有する。
Ron Reinhardt については良く知らず。
Brad Dutz は、Tribal Tech にも参加しているパーカッショニスト。

Tr.1 Pump It!
イントロの金属的なベース音(タッピングかな)とギターのユニゾンリフが楽しい。
そしてゲスト参加の Buddy Miles が歌い始めると、ちょっと泥臭くて素敵な Blues Rock 風味が加わる。
この Buddy Miles は、70年代初頭に Jimi Hendrix と仕事をしたドラマー/ボーカリスト。本作時点ではもう引退に近い状態で既に伝説の人だったようだが、Jeff が自身のアイドルとして引っ張り出した模様。で、Buddy 御大、この仕事が本当に楽しかったようで、Jeff Berlin に「一緒に組んでバンドやろうぜ~」と熱心に口説いたらしい。Buddy は2008年に亡くなったが、伝説に満ちたキャリアの終盤で楽しい仕事ができて良かったね。

Tr.2 Joe Frazier (Round 2)
Jeff Berlin の名刺代わりみたいな有名曲。
因みに Joe Frazier とは米国の有名なボクサー。機関車みたいな突進力の人。
さて、なぜ Round 2 (2ラウンド目)かというと、この曲の1ラウンド目は何と70年代後半の Bruford で演奏されているから。Gradually Going Tornado(1980) にスタジオ版が収録されているが、Feels Good To Me(1978) のボーナストラックにまだこの曲が開発中モード(といってもほぼ完成)のライブ版が収録されている。
Bruford での演奏は楽しい中にもスリルとテンションが満ち溢れた素晴らしい演奏だが、本作の Round 2 は比べるならばもう少しリラックスしていて、テンポもゆったりめ。Brad Dutz の perc が実に良い味を醸し出している。
2:46頃から Frank の g ソロ。これが素晴らしい。後の Frank Gambale は、スウィープピッキングの鬼と化して、とにかく常に音符を高密度に叩き出す奏法になってしまうのだが、この当時の演奏は理知的なフレージングで丁寧に弾いている。この頃の方が好きだったな。
5:13頃、みなさんで “Huh” コーラス一発。これは楽しそう。

Tr.3 All the Greats
憂いに満ちた良い曲。ソロ1作目の路線に近いムード。
ただ惜しむらくは、ドラムスがやや単調過ぎ(Steve Smith 比)、ギターの音色にやや色気が足りない(Scott Henderson 比)等々。こうやってファンは無い物ねだりするんだよね。
ゲストで Toto の Jeff Pocaro が参加している。クレジットは Tom Tom [solo] 。5:12頃から鳴り響くタムタムのところでしょう。短いプレイだけれど、単調になりがちな曲調を見事に締めている。
因みにこの曲は Rush の3名に捧げられている。All the Greats とは Rush の超人3名を指すのだろう。Jeff Berlin は Geddy Lee と仲良しで、Neil Peart とも前作で共演している。

Tr.4 Bach
超絶技巧ショウケースな曲。
オリジナルは J.S.Bach の平均律クラヴィア曲集第1巻第2番ハ短調。
元のLP版では、この曲からB面が始まって度肝を抜かれるという仕組み。
1:12から Jeff の超絶技巧ベースソロ。やたらと音符を叩き出すのではなく、クラシカルなフレーズ(当たり前だが)を丹念に一音一音きれいに響かせている。そして、ちょっとしたビブラート等のアーティキュレーションが丁寧で、まるで歌うように演奏しているのだ。
Frank Gambale はバッキングに徹し、バイオリン的な役割をキコキコキコキコとキープ。これ意外と難しいよ。
2:16から、前作に参加した Clare Fischer がゲストで syn ソロ。パイプオルガン的な高音でクラシカルかつエレガントにまとめる。
ドラムの Tris Imboden はなかなか頑張っていて、単調になりがちなリズムを時々スリップさせたり、煩くならない程度にタムワークで走らせたり、なかなかの職人芸。

Tr.5 Crossroads
さてお待ちかね。Eric Clapton の演奏も有名だが、元々は伝説のブルーズマン、四辻(Crossroad)で悪魔に魂を売ったギタリスト Robert Johnson の代表的名曲だ。
曲の聴きどころは、Eric Clapton の有名なギターソロを、Jeff Berlin がほぼそのままベースでなぞって弾いているところ。チョーキングだらけのあのソロを、フレッテッドベースでどうやって滑らかに弾くのか。そりゃもう頑張ってチョーキングするのだよ。超絶技巧に加えて、指の筋力も超人的。
話が脱線するが、映画の Crossroad ってのがあって、主演は若かりしラルフ・マッチョ君なのだが、正義のギタリスト(?)であるラルフ君とギターで対決する悪魔のギタリストとして、Steve Vai 本人が出演しているのだ。音楽監督として Ry Cooder が参加していて、ラルフ君の演奏は実際には Ry の演奏に当て振りしている。Steve Vai のパートは勿論本人の演奏。ところが、ギター対決の終盤でラルフ君が掟破りな超絶技巧クラシックギター奏法(テレキャスターで、パガニーニをクラシックギターの奏法で弾く)で悪魔を打ち破るところは、実際にはどっちも Steve Vai が演奏していて、この負ける方の演奏がもう実に職人芸なのだよ。ベテランの芸人さんが上手にコケて見せるのと同じ、天才 Steve Vai らしくない(それほどはわざとらしくない)ミストーンと演奏の破綻が連鎖して、最後は膝をがっくりついてうなだれるその負けっぷり。ああ大好きな映画。
さて脱線から戻るが、ボーカルは再び Buddy Miles。もうさすが貫禄のブルーズマン。映画 Crossroad で老人ホームに引退していた伝説のハーピスト Blind Dog Willy を主人公が引っ張り出して、ステージで伝説の演奏と歌声を響かせる凄いシーンがあるのだが、ちょっと思い出すよ。(脱線から戻ってない)
なお Paul Gilbert(g) がゲストでちょっぴり参加しているのだが良くわからず。

Tr.6 Freight Train Shuffle
Players(1987) にも別面子で収録されている Jeff Berlin 作の名曲。
Paul Gilbert がゲスト参加しているが、ソロは Frank Gambale の演奏。
曲の最後を締める Rock なギターは Paul の音かな。

Tr.7 Manos de Piedra
前作に近いムード(Players にも近い)、ちょっとラテン風味の、軽快で少し憂いを含んだ曲。
Tris Imboden が本アルバム中最高の仕事をしている感あり。
一方で、Ron Reinhardt と Frank Gambale のバッキングワークは今ひとつ単調過ぎか。
どうしてもこの曲調だと、Players の人たちの音を求めてしまう。特に Scott Henderson の色気ある音色が欲しいな。ああファンというヤツは、演奏者の素晴らしい仕事に対してこうやって勝手なことを無責任に言うのだな。

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