Russian Circles – Blood Year(2019)

Russian Circles の新譜が届いたのでレビューしてみる。
彼らは、Chicago を拠点に活動する3ピースバンド(g/b/ds)だ。
「轟音系」とか “Post Metal” とか、果ては “Post Rock” とか、まあ随分なジャンル名を冠して呼ばれることが多い。インタビュー記事等で彼ら自身が、ポスト何たらと呼ばれるのはうんざりだし、そう呼ばれる他のバンドとの共通性も少ないと言っているんだけどね。
スタジオアルバムとしては7作目となる。前回の Guidance(2016) からは3年ぶりだ。一部の曲で効果的に女性voを取り入れた前々作 Memorial(2013)や、アコースティックな優しい響きと轟音リフの対比が素晴らしかった前作からの延長線上にある作品だと思うが、明るいポジティブなフレーズが少なくなり、どちらかというと暗く陰鬱で怒りを感じるような曲調が多い。彼らが出てきた時に、しばしば Tool と比較されていたが、そういう音に戻ったように思う。
メンバーは、Mike Sullivan(g) / Dave Turncrantz(ds) / Brian Cook(b) の3名。g と b は Looper 等を駆使し、たった3名の出音とは到底思えない分厚い音の壁を作り出す。またvo不在のインストバンドなのだが、いわゆるソロパートみたいな部分は作らず、3つの楽器で分厚く塗りこめた音像だけで曲を仕上げている。でも哀愁を帯びた美しいメロディーの断片が時折挟まれて鳴り響くので、インストものが苦手な人にも聴きやすいと思うよ。

Tr.1 Hunter Moon
前作と同様、最初は切なく美しいアンビエントな曲から始まる。因みに、Hunter Moon とは10月に昇る満月のことで、狩猟者が冬に備えて鹿等を獲る季節に昇る月なのでそう呼ばれるらしい。別名が Blood Moon らしいので、アルバムタイトルとの関連性も何かありそう。

Tr.3 Milano
劇的かつ強靭な音の響きに魅了される。いわゆるシンフォロックがオーケストラサウンドを導入して作り上げる壮大な構築物のような音を、g/b/dsだけで作り出していることに、毎度のことながら度肝を抜かれる。そして鳴り響く g のコードのトップノートで奏でられる美しくも怪しいメロディー。

Tr.7 Quatered
Dave(ds) がリードする導入部に続いて、Mike(g) がお得意の低音弦リフを Looper で鳴らし、その上で怪しく美しいメロディーの断片を奏でる。部分だけを聴けば Djent 系との共通項もあるのだが、敢えてリズムをゆったりと、空間を多く残す構造にして、全ての楽器のサスティーンを利かせて長く音を鳴り響かせることによって、忙しない Djent とは全く異なる音世界を作っている。まあこれを日本語で簡潔に言えとなると、「轟音美メロ」とかになるんだろうね。

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