Kazumi Watanabe – Mobo(1983)

渡辺香津美がNYに単身乗り込んで、超一流のスタジオミュージシャンを集めて制作した作品。とにかくまず顔ぶれが物凄い。
渡辺香津美 (g)、Marcus Miller(b)、Omar Hakim(ds)、Robbie Shakespeare(b)、Sly Dunbar(ds)、Michael Brecker(ts) が基本メンバーで、曲により Don Glornik(kbd) や Kei Akagi(p) 等がゲスト参加。
この、b+ds のリズム隊が2つあるのが大きな特徴で、いわゆるツインベース、ツインドラムというよりも、強力な土台担当の Sly & Robbie 組と、強靭な骨組み担当の Marcus & Omar 組が一緒に現場で建築作業をしている感じ。
S&R組はシンプルな反復フレーズ中心で、少しタメが入ったビート。腰から下にズンと響くリズムで業界屈指の強力かつ堅牢な土台を形作る。
一方M&O組は手数が多く、曲の空間を埋めて輪郭を作り、楽曲にしなやかで強靭な骨格を与える。
この4人の名人親方たちが作り出すうねりの上で、Michael の ts が朗々と唄い、Kazumi の g や g.synth が様々な色を重ねる。
詳しいことはわからないが、一部の曲のタイトルに Mobo#1 等とサブタイトルがついているので、恐らくレコーダーをまわしながらジャムセッションを録って、後から編集や重ね録り等したのかなと思う。そのためか、これら Mobo#1,2,3,5 の各曲に漂う緊張感が半端無く、しかも良くある「熱いバトル」にはならなくて、例えて言うなら剣豪の真剣勝負のような一触即発のヤヴァイ感じが続くのだ。当時の雑誌で「絶対零度の音楽」と評されていたことを思い出す。

Tr.1 Shang-Hi(Mobo#1)
まず出だしの Kazumi の変なフレーズがこの曲のテーマとなっている。当時の雑誌にアナリシス等が出ていて、このフレーズの譜面を見ながら弾いてみたけど、まあ何でこんなフレーズ思いつくかね。
続く Michael Brecker の朗々たる ts の響きよ。シャンハイだねえ。

Tr.2 Yatokesa(Mobo#3)
これも出だしの Robbie のフレーズがテーマになっていて、それをずっとリピートしながら展開していくセッションっぽい構成。後半、Marcus が凄いソロを弾いている。

Tr.8 Mobo#2
LPではこれが1枚目の最後(B面ラスト)で、僕は良くこれだけを聞いて満足していた。本アルバムに捨て曲は無く、人によってお気に入りの曲は異なると思うが、僕にとって一番はこれ。とにかく緊張感が凄まじい。
Tr.2 と同様に Robbie のフレーズが繰り返され、その上で曲が展開していくのだけど、まあどこかに向かって曲が進んでいくのではなく、ずっとそこに留まってズンズンやっている感じなのね。まあつまりジャムセッションなわけだ。
Michael の朗々たるソロの途中で10:30あたりから Robbie のbのパターンが切り替わる。するとリズム隊が一体となって怒涛のパルスを刻み始める。ここからが凄いよ。Kazumi のソロを挟んで、Marcus がスラップで煽り、最後は怒涛の流れのまま滝となって泡立ち流れ落ち、フェードアウトで終わる。まあこれにエンディングをつけて終わらせるなんて全く考えられないから、フェードアウトしちゃうしかないよね。

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