もし The Beatles が、Sgt. Peppers 制作後に更にプログレ路線を追求し、ギタリストとして Jeff Beck を呼んで大プログレアルバムを作ったら?そういう70年代のクラシック風なプログレをやりたい。
そんな発想から、Alex Cora が大学生時代に構想(むしろ妄想か)を温め始め、8年かけて見事実現しちまったのが本作らしい。プロデューサーの Gustavo Farias (本作で一曲だけ syn ソロを弾いている)に巡り合ってデモテープを聴いてもらえたのがチャンスとなった模様。
Alex 本人は、メンバーが全員対等で、皆で曲作りもするバンドを目指したようだが、実際のところは Alex が全曲を書き、有名どころの腕っこきミュージシャンを集めて短期間(たった3日間!)で制作することになったようだ。
参加メンバーは、Alex Cora(g, vo) / Ric Fierabracci(b) / Vinnie Colaiuta(ds) / Derek Sherinian(kbd) / Ginny Luke(vln) と、信じられないほど豪華な顔ぶれ。
Ric は、Dave Weckl Band あたりが有名。凄腕テクニカルベーシスト。
Vinnie は、Jazz/Fusion 界のキャリアが長い名人ドラマー。Eric Clapton や Jeff Beck とも良く一緒にやってるね。伝説の Caldera にも参加していた。
Derek は、元 Dream Theater、今は Planet X とか、Sons of Apollo とか、手広く色々やっている。Prog Metal 系の凄腕キーボーディスト。
Ginny Luke については全然知らなかったのだが、上手いね、この人。Jean-Luc Ponty みたいな流麗なバイオリンを弾く。
あとこの変なバンド名だが、Porpoise というのはイルカの一種らしい。Purposeful Porpoise となると、「しっかり目的意識を持って生きているイルカ」という感じか。まあ英語の語呂合わせみたいなものなのだろうが。なお、本作の背景となるストーリー(SF)を Alex が書いて、バンドのHPで公開しているのだが、別の銀河にある水棲動物メインの惑星で平和に暮らしているイルカ型生物のお話のようだ。何でも構想としては全3部構成になる予定で、既発表部分を書くために7年かかったとのこと。この人の構想力(妄想力)は凄いね。
Tr.1 Crossing Into The Unknown
アコギのイントロで始まる爽やかで美しい曲。バイオリンがまさにイルカの声のようだ。曲長が20分超と、プログレの王道を狙う。ゲスト参加している vo の2名が良い仕事をしている。
聴きどころは、やはり Ginny 嬢のバイオリンじゃないかな。
5:00あたりで、ちょっと Genesis の Watcher of the Skies ごっこが始まるのが楽しい。とあるプログレ関係のバンドが集まるライブに参加した際に、最後の締めで、いわゆる3本締めではなく Watcher 締めというのが出てきて大笑いしたのを思い出した。
Tr.3 Cycles
70年代回顧というよりも、現代的な良い曲と思う。
メンバーが全員米国人なので、曲調に英国の陰りやら北欧のクールさ等は無く、ほんわか暖かく楽しい。Spock’s Beard とか Kansas とか、まあそんな感じだ。
途中曲展開が少しハード調になり、Derek のSFチックなソロが登場。でもそれが終わると、また暖かい感じに戻って Alex の g 、 Ginny の vln、Ric の b とソロが廻される。バックを支える ds のプレイにも注目したい。Vinnie は元祖手数王だからね。b ソロの後で圧巻の ds ソロ。
曲の最後に Tr.1 にちょっと輪廻して Cycles の輪が閉じる。
Tr.7 Serena Song
しょっぱなから Ric の美麗な b ソロで始まる。ちょっとボサノバ風味の軽妙な曲調に、Vinnie のドラミングが良くマッチしている。
幻想的なインタールードを挟んで、3:58頃から Alex の g のリードで曲が疾走を始める。文句無しにかっこいい王道アメリカンプログレハードロックだ。
Tr.9 Which Way is Up
ボーナストラックを除けば本作の最終曲。ダイレクトに The Beatles へのリスペクトを感じる懐古的なワルツ。
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