The Tangent – Songs From The Hard Shoulder(2022)

英国のボヤキ親父 Andy Tillison のプロジェクト The Tangent の新譜が到着したのでレビュー。
(彼等のネットサイトから買うのはさすがにもうやめて^^;、Amazonから購入したよ。このあたりの顛末は Kalman Filter のレビューをご覧あれ)
前作 Auto Reconnaissance(2020) から2年ぶり。
新型コロナ禍の最中に録音が進められたとのクレジット入り。
参加メンバーは前作と同じ。
Andy Tillison(kbd, vo) / Jonas Reingold(b) / Steve Roberts(ds, perc) / Luke Machin(g, vo) / Theo Travis(sax, fl) の5名。
音楽的方向性も基本的には前作同様。プログレとカンタベリーを骨格とし、そこにJazz、AOR、Soul、Funk 等の非常に多様な音楽ジャンルのエッセンスを上品に混ぜ込んでいる。
Andy のボヤキ節もこれまでと同じだが、Brexit への痛烈な毒吐きみたいなのは無くなったので、少し聞きやすく(当社比)なってるよ。

Tr.1 The Changes
最初から17分超の大曲だが、聞きやすく、あっという間。
Andy が影響を受けてきたと思われる様々な音楽の断片が組み込まれているのが面白い。
(わかりやすいところでは Eleanor Rigby とかさらっと出てくるよ)
最早プログレというよりも、Todd Rundgren あたりが作る上質な Pop みたいな感じで、聴いていてとても楽しい。
あとCDメディアを購入した人は是非歌詞カードに一度は目を通して欲しい。
メンバー実名入りで物語(というほどの話でも無い^^;)が語られる。
中でも自分(Andy)が還暦を迎えて、それなりに自由な人生を送ってこられたことを振り返り、若い(当社比)Luke や Theo も同様にやっていけるかな?みたいな箇所があって、何だかボヤキ親父なりの親心が心に響くよ。

Tr.2 GPS Vultures
彼等の第三作 A Place In The Queue(2006) に GPS Culture という曲が収録されており、本曲には(最後まで注意深く聴かないと気が付かないかもしれないが)そのテーマの一部が使われている。
GPS Culture はTFK的なポジティブかつドリーミングなプログレ佳曲、しかもボーカルナンバーだったが、本曲はカンタベリー風の Jazz Rock で、しかも17分超の大インスト曲だ。
まあ一種の変奏曲って感じかと。
なおCulture(文化・風潮)をVulture(猛禽)にしたのは、単なる語呂合わせだけだと思う。
Andy のボーカルが無い分、他曲よりも更に Luke のギターが際立つ印象を受ける。
後半は特に、エレキとアコギを持ち替えたりしつつ、Luke 君はずーっと真ん中で弾きまくり。
そして終盤、GPS Culture のテーマを変奏しつつ、曲は大盛り上がりで終わる。
作曲は Andy なんだけど、恐らくこの編曲には相当に Luke 君が関わっているんだろうな。
いやあ凄まじい才能だ。

Tr.3 The Lady Tied To The Lamp Post
曲調がぐっと変わって、しっとり切なく、そしてシリアスな内容。
曲長は20分超。8つのパートから成る大曲。
ジャケット画の女性について、そしてアルバム名の意味(路肩で生まれた音楽とは?)について、本曲の中で語られる。
つまりこのアルバムの中心曲ということだ。
ボーカル付きパートの間に挿入されるインストパート(part4と6)は、驚くほどハード。
Andy の激しい感情が伝わってくる。
昭和のボヤキ親父キャラは今回もご健在だ。

Tr.4 Wasted Soul
前曲がシリアスで重かったので、最後は軽めに楽しく。
これが60年代風(モータウン風)Soulナンバーなのだよ。
ちゃんとブラスセクションも入ってる。シンセだろうか。
もう聴けば聴くほど笑いをこらえきれない、もうなんて素晴らしい曲なんだろ。
Andy 才人だなあ。

Tr.5 In the Dead of Night / Tangential Aura / Reprise [Bonus Track]
Limited Edition のみに収録されているボートラ。
みんな大好き、UKの名曲のカバー。
オリジナルでは Allan Holdsworth が弾いていたヌルヌルした g ソロを、Luke 君が見事にヌルヌル弾いてくれていて、それだけで至福。
6分強くらいで In the Dead of Night が終了し、続けて Tangential Aura と題されたエレクトリカなパートになる。
Kalman Filter 名義で出している Andy のソロプロジェクトと同様の、酩酊感強め、ベルリンの香りがするテクノ。
以前、ちょいと経緯があって Andy 御本人から送っていただいた Kalman Filter のボツ曲データのいずれかがこっそりここで使われているかもと疑って(笑)、ボツ曲データを聞き返してみたが、この Tangential Aura は無かったよ。
12:30頃から、このエレクトリカの音の渦の中からゆっくりと In the Dead of Night の特徴的なベースリフが立ち上がってきて Reprise パートが始まる仕掛け。
最後は Allan Holdsworth のフレーズを、Luke と Andy がそれはもうとっても嬉しそう(想像)にユニゾンで奏でて終わる。
名曲への敬意と愛情が溢れ出る素晴らしいカバーだ。

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