The Tangent – WAS(2026)

お気に入りの英国プログレバンド The Tangent の新譜がリリースされたのでレビューするよ。
前作の To Follow Polaris(2024) は、リーダーの Andy Tillison がたった一人で全楽器を演奏する The Tangent For One プロジェクトの作品だったので、バンド形式によるアルバムとしては前々作 Songs From The Hard Shoulder(2022) 以来となる。
(Andy が一人で To Follow Polaris の制作に取り組んでいた時期に他のメンバーは並行して本作に向けてじっくり時間をかけて準備していたらしい)
今回のメンバー構成は、
 Bass Guitar, Pedalboard – John Jowitt
 Drums, Percussion, Gong – Steve Roberts
 Electric Guitar, Acoustic Guitar – Luke Machin
 Vocals, Keyboards, Synth Bass, Percussion – Andy Tillison
 Woodwind – Theo Travis
の5名。
前々作を最後に、バンド立ち上げメンバーであり、The Flower Kings メンバーでもあり、欧州を代表するプログレ界の名プロデューサーとしても大活躍している Jonas Reingold(b) が脱退したため、代わりに入ったのが元IQ等のベテラン John Jowitt だ。
他メンバーは変更無し。

前作までは Insideout レーベルからリリースされていたのだが、何やら思うところあって円満にレーベルから抜けた?らしく、今回は White Knight Records という小さな?レーベルからのリリースとなった。
CDメディアのセールスよりもサブスクやD/L販売の方が上回る世の中なので、もう大手レーベルからレコード店という流通に期待しても仕方ないだろうしね。
実際僕も入手経路は Bandcamp だ。
(本当は彼等の直営ショップからCDメディアを直接購入したいのだが以前未配で苦労したので・・・)
流通経路がシンプルになって、アーチストに届くフィーが増えるのは良いことだと思うぞ。
なお、本作のリリース形態には、2CDの標準版の他に、3CDのデラックス版ってのがあり、後者には Almost WAS と命名されたアウトテイク集と歌詞等のブックレットが付属するらしい。
僕が購入したのは前述したようにD/L版(Digital Edition)なので、2CDと同等
つまりアウトテイクも歌詞カードも付属しない。
アウトテイクはまあ無しで良いのだが、作品理解のために歌詞カードは欲しかったな。

さて、本作の曲構成であるが、CD1枚目には3曲、2枚目には6パート構成の組曲1つが収録されている。
以下簡単に曲毎にレビューしていくよ。

Tr.1 Was
最初から22分超え、6パート構成の大曲。
歌詞カードが無いので歌の内容が良くわからんのだが、ノスタルジックな曲調に乗せてちょいと昔のロックレジェント達やらメロトロンやらの名前なんかが出てくるので、Andy 親父が影響を受けてきた昔の素敵な音楽達へのオマージュ的な内容なのかもしれず。
でもね、バンドのホームページ上に Andy の宣言的なメッセージが書かれていて、The Tangent は過去の追憶に浸るためのノスタルジーだけのプログレはやらない、しっかりと現代に刺さる音楽をやっていくぞ~とあるので、単なるオマージュだけとは思えず、きっと現代のロックへの皮肉な目線とか込めているんだろうなと想像するのだが・・・。
歌詞カードが欲しい~。
蛇足だが、ボヤキ親父 Andy Tillison の声が、前作と比べて明らかにお年を召した感じになった。
これはこれで少しハスキーになっていい感じなんだが、喉を労ってくださいね~。
更に蛇足だが、13:45頃の Theo のサックスの音がまるで Pink Floyd の某有名アルバムみたいだ。
本作をCDメディアで買った人は、ジュエルケースの裏側を見ていただきたいのだが、この三角形(チョコレートビスケット?)を通過する七色の光は、まあわかりやすいパロディーだよね。
それと16:30あたりのオルガンワークはまるで Soft Machine みたい。
仕掛けが多くて色々面白いよ。

Tr.2 Follow The River
Andy 親父が大好きなディスコナンバーだ。
新加入の John Jowitt と継続の Steve Roberts によるリズム・セクションが超ド安定の見事にヘビーかつタイトなファンクを叩き出していてつい笑顔になる。

Tr.3 Was Not
再び20分超え、6パート構成の大曲。
曲名からしてもTr.1と呼応して本作のコンセプト?を伝える位置づけなのだろうが良くわからん。
パート3で少しフリーフォームになってから、パート4で7拍子のプログレらしい曲調に。
彼等は Progressive な Jazz Rock を名乗っているのだが、僕はこの Jazz Rockってのが大好物なのでこういう曲は気持ち良いね~。
そしてパート5でAOR風味のディスコ!
若手代表 Luke のギターソロもすっかりディスコナンバーに合わせてファンキーノリノリだ。
最後は The Care Home (老人ホーム)と命名されたパート6。
うーん歌詞カードが欲しい~。

Tr.4-9 Suite “Ce qu’était”
CD2枚目は6曲から構成される組曲。
フランス語の Ce qu’était は、「以前~であったもの」という意味のようで、つまりはアルバムタイトルの Was と同じだと思う。
最終曲を除いてボーカルなしのインスト。

1曲目 L’Aperitif (食前酒?前菜?)
上品かつメランコリックな室内楽風。
Andy Tillison の作曲家としての能力が発揮されている。

2曲目 Steak de chevreuil et Le Fermier (農家風鹿のステーキ)
オルガンロック。
Andy にとって、Keith Emerson は敬愛するロックヒーローの一人らしく、まさにそういう曲。

3曲目 Danse (踊り)
Jazz Rock + ELP + AOR みたいな不思議な質感の素敵な曲。

4曲目 La Route côtière (海岸沿いの道)
カンタベリー風味の Jazz Rock ナンバー。
Andy はエレピ、Theo はフルート。
海岸沿いをドライブしながら聴くには少々構成が複雑すぎるかも^^;

5曲目 Multi partisanisme (多党派政治)
組曲中のこの1曲だけで15分超え、しかもこの曲自体が複数パートに分かれている感がある。
Andy 親父といえば政治風刺なんだが、現在欧州や日本で生じている多党派政治についてどう考えているんだろうね。
物事が決まらない、前進しないというデメリットはあるのだが、広く多様な意見を吸い上げる、二元論を回避できるという点ではメリットもあるわけだが。
(Andy はこの人々を陥れている一見わかりやすそうな二元論のワナについてかなり怒っていて、そういう曲も書いている)

6曲目 Laisse moi chanter (私に歌わせて)
組曲最後の曲は素敵なボーカルナンバー。
冒頭の Andy のしっとりした歌いだしに被せるように Luke の轟音ギター(Queenのような)、その最後の音にユニゾンで繋げて Theo のサックスという魔法のような繋ぎ方が素晴らしい。

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