
先日 The Tangent の新譜が出たばかりで、今度は The Flower Kings(TFK) の新譜が出たよ。
お気に入りのバンドの新譜ラッシュはおサイフには痛いが嬉しさ倍増だ。
さて、TFKの今回のアルバム、タイトルは大文字のHOPE。
前作が大文字のLOVEだったので、コンセプト的には連続している気がする。
参加メンバーも前作と同じ。
但し大きな違いもあって、前作は10分以内の(彼等にしては)短い曲が大半だったが、今回は久々に18分超と28分超の大曲がどどんと収録されている。
コロナ期に、(当時は)あちこちに分散して住んでいたメンバー間でハードディスクをピンポン(回覧)する形でスタジオレスの収録を行いアルバムを制作していた彼等だが、長大曲はどうしても集まってアイデアを出し合いつつ練らないと仕上がらないけれど、短い曲ならこのような分散形態で仕上げることができることがわかったので、以降は短めの曲中心となった・・・みたいなインタビューを読んだ気がする。
それとストリーミング(サブスク)対応(長い曲は敬遠される&売上が曲数でカウントされるので曲を切り分けて別の曲にした方が儲かる)もあったのかもね。
で、今回はそういうのを一旦捨てて昔ながらの大曲志向に戻ってきたのだが、2つの大曲はどちらも一応は10分以内のパートに分割されてチャプターを打たれているので、まあストリーミング対応だけはできているのかな。
前作と同じではあるが、一応メンバーを書いておく。
- Vocals, Electric Guitar, 12-String Acoustic Guitar, Acoustic Guitar, Keyboards, Percussion – Roine Stolt
- Vocals, Electric Guitar, Acoustic Guitar – Hasse Fröberg
- Bass, Vocals – Michael Stolt (Roineの実弟)
- Drums, Percussion – Mirkko De Maio
- Piano, Keyboards – Lalle Larsson
上記5名の固定メンバーに加えて以下3名のゲストが参加
- Solo Vocal – Jannica Lund (Michaelの彼女)
- Accordion – Aliaksandr Yasinski
- Violin – Juraj Stieranka
本作の目玉は、世間一般的には大曲 The Gods of Rome だと思うが、僕にとって最大の驚きと喜びだったのはアルバム冒頭の組曲 World Spinning – The Final Curtain の方。
前作 LOVE(2025) のTr.4に同名の World Spinning という2分ちょっとの短いけれど強く印象的で素敵な曲が収録されており、これを書いたのは Lalle Larsson だ。
本作で、彼はこの小曲を発展させて18分超、5パート構成の一大組曲に仕上げてきたのだよ。
印象的だったキラキラしたシンセのモチーフが、本作でも繰り返し導入されており、前作をしっかり聴いたファンであれば「あーあの曲がこうなるのか!」と驚きと喜びで満たされる仕掛けだ。
Lalle は自身のソロやプロジェクトで何枚もアルバムをリリースしているベテランで、作曲能力も非常に高いわけだが、実際に素材(2分の曲)を豪華な料理(18分の大曲)にどうやって仕上げるのかを教科書的に見せてくれているわけで、作曲に興味のある人ならすごく良いお手本になるんじゃないかな。
Tr.1 World Spinning – The Final Curtain
すっかり前述してしまったが、前作LOVEで Lalle が書いた小曲を自ら発展させた組曲。
LOVE(前作)とHOPE(本作)との音楽的連続性をとても美しい形で示すことで、アルバムコンセプトの連続性も暗示しているのだと思う。
そして今回は Hasse がこの曲に歌詞を書いて歌っているし、全メンバーのアンサンブルも豪華で完璧。(前作の小曲は Lalle のソロ多重録音だった)
前作をバンド形式にアレンジしたpt.1、ELP風味のオルガンで始まり勇壮なpt.2&3、まるでアルバムのエンディングのようなドラマチックなpt.4&5、そしてキラキラとドリーミーで印象的なあのモチーフとともに曲が終わる。
Tr.2 In a World of Fools
先行して YouTube にリリースされていた曲。
Roine の老け方と声の衰えに少しショックを受けたのは事実。
今年(2026)でちょうど70歳だからな~。
でも音楽的創造性も演奏能力も未だに衰え知らずでパーフェクトだ。
作曲もTr.2以降は全て Roine が書いている
(多分 Lalle の寄与も大きそうだが)
Tr.3 Mars & Minerva
Mars は火星でローマの戦の神、Minerva は小惑星の名前でもありローマの知恵と工芸の女神。
4分半の曲だが、大曲の多い本作の中では次に繋ぐための前奏曲的に聴こえる。
Tr.4 The Gods of Rome
28分超え、7パートからなる正真正銘の大組曲。
昔々のTFKはこういうのばかりやっていたのだけれど、オーディエンスの嗜好の変化(短い曲が好まれる)とか、前述したストリーミング向けビジネス面の配慮とか、制作面での変化とか、まあ色々な事情があって最近はコンパクトな曲が多くなっていた。
ところが Roine の心境に何やら変化が生じたみたいで、売れ行きを心配して作るのはやめて、自分たちが本当にやりたいものをやりたいように作ることにしたようだ。
Roine が書く大曲は、短いアイデアを引き延ばすのではなく、溢れるアイデアを詰め込むタイプなので、中弛みが一切無く次から次へと驚く展開が繰り広げられ、夢中になって聴いているうちにいつのまにか30分過ぎているみたいな感じなのだ。
そして本作においては、Roine の一つの側面であったダーク&モダンな曲調は抑えられていて、昔ながらのウォーム&ポジティブな曲調(ある意味クラシックなプログレ風味)が中心。
そこに Lalle が少しだけ不気味カワイイ感じの捻りを加えていて、まあ Tomas Bodin とは指向性は異なるが、バンドに加える機能性として素晴らしい寄与を果たしているように思う。
TFKに Lalle Larsson が参加してくれて本当に心から嬉しいな。

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