King’s X – Three Sides Of One(2024)

久々のBLOG更新は、King’s Xの新譜で。
彼らは1979年から不動のメンバーで(最初期のギタリストは脱退したが)活動を継続してきたベテランバンド。
オルタナティブなんてジャンル名?がまだ使われていない頃から、ハードロックでもブルース・ロックでもメタルでも無い既存の枠に収まらない独自の音楽性を打ち出してきた方々。
メンバーは、Doug Pinnick(b, vo) / Jerry Gaskill(ds, vo) / Ty Tabor(g, vo) の3名。
いわゆるギタートリオのフォーマット。
3人全員が歌えるところに注目して欲しい。
そう、King’s X の音楽の最大の特徴は3声のハーモニーなのだよ。
荒々しい重低音リズムセクション+ジミヘンばりの轟音ギターの上に、ビートリーなハーモニーが乗る。
そして、緩と急、静と動の対比をうまく使った、ときに神秘的でもある曲調。
まあ文章で見ても何を言っているのかわからんだろうから、Youtube等で彼らの曲を一度聞いてみてくだされ。
彼らの演奏・歌唱能力は、特にライブで真価を発揮する。
激しい音を使いながらも、決して煩くならず、どことなく牧歌的な温かさを感じるのだ。
一般向けにヒットするタイプの音楽では無いのだろうが、ミュージシャン界隈で彼らを敬愛する人は多いらしい。

さて、長いキャリアを誇る King’s X だが、ドラムスの Jerry Gaskill が2012年に心臓発作を起こし、まさに生死の境を彷徨う事態となってしまう。
その後症状の再発等もあったらしいのだが、見事に復帰して久々(2008年の前作以来)にリリースされたのが本作だ。

それなりに彼らの音楽を聞き続けてきた自分としての第一印象は、昔ながらの King’s X の音ではあるが、何だか今風のガチでゴリゴリでメタリックな激しい音響も少し入っているのが微笑ましいというところ。
いくつか彼らのインタビューを読んだのだが、主にベースのDugが活動休止中に色々なバンドのライブを聞きに行き、例えば Meshuggah なんかを気に入って、「こういうのもやってみたい」と Jerry に聞かせたりしていたらしい。
(で、Jerry は「えーっ、俺がこんなのやるの???」みたいな塩反応だったとのこと)
長い年月を生きて70代に入ってもそうやって変化を模索していく姿勢って、まさにこれこそ真の意味でのオルタナティブだなあと思う。

Tr.1 Let It Rain
アルバムの幕開けは、いつもの King’s X らしい曲から。
歌詞は攻撃的で、インタビュー記事によれば彼らが受けた宗教界からの迫害や Dug の幼少時代の虐待体験等をベースにしている模様。
でも曲そのものは、カラッとしているんだよね。

Tr.2 Flood, Pt.1
さてお待ちかね?、Meshuggah みたいな曲の登場。
叫びと重低音リフでそれっぽいパートの後に美しいコーラスとクリーンな演奏、それが交互に続く。
なかなか楽しいが、基本的にはいつもの King’s X の音楽なので安心されたし。
Pt.1 とタイトルが付いているのだけど、アルバムには Pt.2 は収録されていないよ。

Tr.3 Nothing But The Truth
ゆったりとしたリズム、ポジティブな曲調、美しいコーラス、魂に訴えるソウルフルなボーカル。
これこそ彼らの音。

Tr.8 Swipe Up
スマホ全盛の風潮についての曲らしい。
Jerry のドラムスのぶっとい音が素晴らしい。
そして曲の最後、重厚なコーラスと低音リフの背後でときどき鳴り響くパワーコードの不思議な響きを聞いて欲しい。Ty Tabor って、本当に素晴らしい職人ギタリストだと思う。

Tr.12 Every Everywhere
基本的に何をやってもビートリーな彼らなんだが、「ビートルズみたいな曲にしたい」と意識的に書いたエンディング曲らしい。
聞いてて何だか微笑ましいぞ。

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