SHOEI Neotec 3 + Sena SRL-3 の簡単なレビュー

これまでヘルメットは OGK Kabuto Ryuki Energy をメインに愛用してきたのだが、高速走行時の風切り音と雨中走行時の雨漏り(どこかの隙間から雨が侵入する)が気になってきたので、思い切って新規購入。
1ヶ月ほど使用してみたので、簡単なレビューを記しておく。
専用インカムの Sena SRL-3 も購入したのでそっちも併せて。

システムヘルメットを選択する理由

そもそも何でシステムヘルメットばかり使用しているのかというと、主な理由はかぶる時ラクだから。
フルフェイス(GT-Air初代)も持っていたのだけど、Ryuki にすっかり慣れてしまい、フェルフェイスの着け外しがすっかり億劫になってしまった。
フルフェイスは、狭い開口部を横に押し開いて頭をぐいっとねじ込むわけだが、耳を折り込まないようにとか、前髪が垂れないようにとか、色々留意しながらねじ込むのが多少大変。
その点、システムヘルメットは顎側が大きく開口するので、軽くかぶるだけで装着できる。
それともう一つ。
バイク乗車姿勢のままで直下や斜めすぐ後方を見たい場合が時々ある。
僕の場合、割と多いのは、冬季に用いるシートヒーターのスイッチ(インジケーター付き)を確認する場合。
フルフェイスだと、それがかなりキツイ。
システムヘルメットなら、チンガードを持ち上げればとても簡単。
他に、装着したままペットボトルの飲料を飲むことができる等の利点を挙げる人もいるが、僕の場合はあんまりそれはやらないな。
というわけで、Neotec 3 も当然ながら、これらのシステムヘルメットの利点を有している。
Ryuki との比較で言うと、チンガードを持ち上げた状態での固定がとても強固。実はそのまま走行することもある程度は許容する設計らしい。
Ryuki は首を縦にふるだけで簡単にチンガードが降りてきてしまう。

チークパッド

上の画像はチンガード開口状態での正面ショットだが、チークパッドの分厚さに注目。
Ryuki はここのパッドが薄めで、ほっぺたを圧迫しないところがとてもラクだったが、Neotec 3 のパッドは結構ほっぺたを圧迫する。
会話に支障を来すほどではないが、ヘルメット装着状態でチューインガムを噛むと、ほっぺたの内側のお肉を噛んでしまうことが多い。(その時の肥満状態によるけどな)
以前 Gt-air(初代) を使っていたときも同様だったので、薄めのパッドに交換したのだが、Neotec 3 のパッド(の圧迫状態)はぎりぎり交換せずに使えるレベル。まあ慣れの問題もあるしね。

外気導入

上の画像はチンガードを下げた状態。
顎にある赤くてデカいボタンが、チンガードのロック。
これが世の中ではデザイン的にかなり不評らしいが、僕はそれほど気にならない。
チンガードロックの上にあるT字型のスリットがエアインテークで、開閉可能。
ブレスガード(付属品)も取り付けているので、自分の呼気は下や横に逃げ、シールドには向かわない。
そしてインテークから入った外気は「ブレスガードよりもシールド側」を通ってヘルメット上部に抜けていくという素晴らしい設計になっている。
実際、走行時にインテークを開けておくと外気がしっかり流入してきて、頭頂部が涼しく感じるほど。
一方で、ヘルメット(内装含め)の気密性がかなりしっかりしているので、シールドを閉めて走行すると、鼻から下のあたりに自分の呼気が溜まって暑苦しくなってくる。
シールドには微開ポジションってのがあって、雨が侵入しない程度に少しだけ開けることができるのだが、それでも暑苦しくなってくるので、信号待ちの都度シールドを全開して中の暖気を抜いたりしている。
この気密性の高さが、走行時の騒音遮断性能にも貢献しているので文句は言えないところ。
その点 Ryuki は気密性が低いので、暖気が溜まりにくいという利点もあった。

シールド微開ポジション

前述の微開ポジションについてもう少し。
Neotec3のシールドを普通の力加減で下ろすと、チンガードとの間に微小な隙間が開く「微開ポジション」で止まる設計になっている。
この状態で走行すると、チンガード上のエアインテークからの外気導入に加えて、シールドの隙間からも外気が入って頭頂部に流れるので、暑いときには涼しく、寒いときにはシールドの曇りを軽減できる等の効果がある。
僕が普段走るときは、ほぼ常にこの微開ポジションにしている。
(SHOEIは、通常走行時にはシールドを完全に閉じることを推奨しているよ)
初代GT-Airにはこのようなポジションは無く、一段開けると結構な幅で隙間が空いてしまうので、雨天時等には使いづらかった。Neotec3の微開ポジションの隙間は、弱い雨なら入ってこない程度なのでなかなか使い勝手が良い。
しかし、強い雨に遭遇するとさすがにこの隙間から雨が吹き込んでくるので、シールドを下方向にぐいっと押して完全に閉じる必要がある・・・のだが、この操作が思ったよりも大変なのだ。
微開ポジションから更に下方向にシールドを強く押し下げると、ロックされて完全に閉じる・・・のだが、非力な僕が走行中にシールドを下に引っ張ったくらいではロックを乗り越えることができず、閉じることができない。
色々試した結果、左手の掌(手のひらの手首に近いところ)をチンガードの下側に押し当てて、中指と薬指をシールド下部にあるタブに引っ掛け、手を握る要領でタブを下向きに引っ張ると閉じやすいようだ。
逆に完全に閉じた状態のシールドを少し開けるためには、シールドタブの直下(チンガード上)にあるロックボタンを「押しながら」、シールドタブを上に持ち上げる操作が必要。
これも慣れないと片手ではなかなか困難。
例えば左手の中指でロックボタンを強く押し込みながら、親指と人差し指でタブをつまんで持ち上げる感じ。
まあこのあたりは慣れの問題だ。

気密性と遮音
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Neotec 3 を真下から撮影。(こういう画像は滅多に見れないかも)
画像の右側が前方(顎側)で、左側が後方(後頭部側)。左にある大きなカバーはインカムの本体及びバッテリーの収納部だ。
チンストラップ(顎紐)の内側に垂れみたいな内装パーツが付いていて、これが外気遮断性を一層上げているらしい。
チンガードの下にチンカーテン(付属品)も取り付けているので、ヘルメット下部からの吹込みは皆無に近い。
そのため、高速走行時の風切り音もとても軽減・・・されることを期待して購入したわけだが、実は期待したほどでは無かった。(がーーーん)
新東名の120km/h区間の走行時にインカムで会話すると、Ryuki + Sena 50S では相手の発言がかなり聞き取りにくい。
同じ状況でも、Neotec 3 + Sena SRL-3 の場合はほぼほぼ聞き取れるレベル。
でも会話ではなく音楽聴取については、Neotec 3 であってもかなり厳しい。
一種の兄弟モデルである GT-Air3 の方が若干遮音性が高いと思われるが、その GT-Air3 を購入した知人に聴いたところ、その前に使っていた Z-8 の方が遮音性が良かったとのこと。
まあなので、Neotec 3 については、「システムヘルメットの割には」遮音性がまあまあ良いという程度なのかも。

Sena SRL-3

最後に、専用インカムの Sena SRL-3 について。
これまで使用してきた Sena 50S との比較を中心に書く。
インカムとしての機能や使い勝手はほぼ同じ。
でも機能面での大きな違いが2つ。

機能面1)充電しながら使えない

50SはUSB-Cソケットから充電しながら通信できるが、SRL-3はUSB-Cソケットから充電すると通信機能がOffになってしまう。
なので、ツーリングの帰路に電池切れしたとき、50Sならモバイルバッテリーを接続して使い続けることができるが、SRL-3はそれができないのだ。
その充電に関してもう一つ言うと、50Sならホルダーから外して本体だけを持ち運ぶことが容易なので、ランチ時に充電するのがラク。
SRL-3はヘルメットに完全にビルトインされてしまうので、ランチ時にはモバイルバッテリー等をヘルメットに接続した状態で持ち運ぶか、その状態でバイクに放置することになる。
僕の場合は、バイクシート上にワイヤーロックした状態でヘルメットを置き、モバイルバッテリーを接続して置いておくようにしている。
万が一盗難されるとしてもモバイルバッテリーだけなので、被害は小さいと割り切る。

機能面2)アンビエントモードが無い

50Sにはアンビエントモードってのがあって、本体を固定するホルダー下部にある小さいスイッチをダブルタップすると、外の音を拾ってインカムのスピーカーから再生してくれるのだ。
例えば有料道路のゲートのおじさんに何やら聞かれた場合等、これが無いとなかなか聞き取れない場合がある。
自分のまわりにあまりこの機能を使っている人がいない(機能の存在さえ知らない人も多い)のだが、地味に嬉しい機能だった。
SRL-3にはこのアンビエントモードは存在しない。
恐らく、外音収集用マイクロホンを付ける場所が無いのと、これ以上スイッチを増やせないあたりが理由かと思われる。

続いてSRL-3の操作性について3点ほど。

操作性1)ボタンが左右に分かれた

まず50Sとの大きな違いは、操作ボタンがヘルメットの左側面と右側面に分かれたこと。
左側面には3つのボタンがあり、ジョグダイヤルと同等のことができる、
また右側面にはメッシュボタンがある。
50Sから切り替えた僕にとっての問題はこのメッシュボタンの位置変更なのだ。
メッシュ通信中にメッシュボタンを長押しするとマイクオフ/オンを切り替えできる。
僕はマスツー中にこれを多用しているのだが、走行中(右手がスロットルを握っている状態)にヘルメット右側面のボタンを(左手で)押すのはなかなか面倒だ。

操作性2)左側面の3つのボタンの区別がつき辛い

50Sはジョグダイヤル方式なので、押し込むか回すか、操作は明確だ。
SRL-3は水平に並んだ3つのボタンで操作する。
電源Onは中央+左の同時押し。
音楽再生/停止は中央の長押し。
ボリューム変更は左(増)または右(減)。
この3つのボタンの大きさはほぼ同じなので、ぱっと手を動かして「どれが中央ボタンなのか」すぐには分かりづらい。
結局左側面のボタンパネル付近を撫で回して、3つのボタン位置を探り出したうえで、所望のボタンを操作することになる。
今でも時々、音量を下げたいと思って右ボタンを押したつもりが中央ボタンを押してしまい、しばらくしてから「インカム失敗」のアラートが出たりする。
SHOEIが決めた規格の範囲に何とかボタンを押し込めて、50S等とほぼ同等の機能を実現した企業努力には大いに敬意を表したいと思うが、できればもう少し、触感で区別できるようにしていただけると有り難いと思う。

操作性3)USB-C コネクタの形状の問題でケーブルとの相性が難しい

これはSenaに文句を言っても仕方ないことだとは思うが、充電・設定変更・ファームウェア更新等のためにPCとSRL-3の間をUSBケーブルで接続する際に、そこらに転がっている一般的な A to C ケーブルを使ってもうまく繋がらないことが多い。
これは電気的なことではなくて、恐らくは小型化のためにSRL-3側のUSB-Cコネクタが本体に埋まりこんだ形状となっており、差し込むケーブル側のUSB-Cコネクタが大きい場合(高価で頑丈なケーブルによくある怒り肩タイプのコネクタ等ね)、根本まできちんと挿入できずに通信が不安定になる。
SRL-3に付属する WIFI アダプターケーブルのUSB-CコネクタはスリムでしかもL型になっている。
別売品になるが、SENA純正の充電・接続用USBケーブルも、USB-CコネクタがスリムでL型だ。
普通の人は、SENA純正のケーブルを購入すればよろし。少々お高めではあるが、高々1,000円ちょっとだ。
普通じゃない変態さんは、手持ちのケーブルの中を探して、USB-Cコネクタの肩のところが少しでもスリムなものを探すとよろし。
あるいは根本まで入らない場合が多いことを念頭に置きながら、コネクタをぐいぐい押したりしてトライしてみてくだされ。
経験上、充電だけならそれほど相性問題は生じない。
問題発生するのは、PC側のSenaDeviceManagerで設定変更する場合や、PCからファームウェア更新する場合。
ファームウェア更新中に接続不安定になって失敗するのは心臓に悪いね。

WIFIアダプターケーブルについて言及したついでに、こいつの設定方法について少しだけ書いておく。
まず製品に付属する小冊子には、つなぎ方がロクに書かれておらず、一切全く役に立たない。
スマホアプリの Sena Motorcycles App の方が少しはマシで、アプリ右上にある歯車アイコンの設定メニューから「ファームウェアのアップデート」を選ぶと、中に「WIFI経由でアップデート」の項目があり、簡単な説明(4ステップ、イラスト付き)を行ってくれる。
この簡単な説明がクセモノで、何と一番重要なところが決定的に誤っているのだ。
WIFIアダプターケーブルをリセットし、ステータスLEDが点滅している状態で、アプリ内の「WIFI設定に移動」を押し、ここで説明文としては「接続するWIFIネットワークをタップしてください」と書かれているのだが、正しくは「SenaのWIFIアダプターケーブルと思われる名称のWIFI機器をタップ」すべし。
ここで接続先のWIFIルーター等のSSIDをタップしても、スマホがルーターに繋がるだけ。事態は何も進まない。
実はここでやろうとしていることは、スマホからWIFIアダプターケーブルにルーターを介さず直接WIFI接続して、WIFIアダプターケーブルの中の設定を行おうとしているのだ。
従って、ルーター等ではなくWIFIアダプターケーブル自体のSSID名を指定する必要がある。
因みにWIFIアダプターケーブル自体のSSID名は、Senaで始まるいかにもそれらしい名称なので、間違うことはないだろう。それをタップしてスマホと直接接続してくだされ。
その後はあらためて前の画面に戻り、WIFIアダプターケーブルから接続すべきWIFIネットワーク(例えば自宅のルーター等)のSSIDとパスワードを設定してその情報をWIFIアダプターケーブルに書き込み、ようやくファームウェア更新が始まる。
どうもネット情報を見ていると、このWIFIアダプターケーブルで難儀しているユーザーが比較的多いみたいなので、ちょっとだけ書いてみた。ご参考になれば。

Neotec 3 への SRL-3 の組み込み

最後に取り付けについて。
SHOEI が定めた専用規格に沿って Sena がデザインした専用商品なので、組み込み終わった状態のスマートさは他に類を見ないレベル。
ではインカム組み込みが以前よりラクになっているかというと、やや微妙だ。
まずインカムの取扱説明書に書かれた小さい図だけではほぼ取り付け不可能。
Sena が公開している動画を何度か見てやっと配線取り回しを理解できる。
特に、操作ボタンパネルとアンテナ類を取り付けた後、これらの配線を避けながらチークパッドを嵌め込むところが最も難しいと感じたが、動画ではさっと流してしまって細部が見えない。
またチークパッドにある2個所の切り欠きを、ヘルメット側にある部品に噛み込ませて固定するのだが、何度やっても後ろ側の切り欠きが完全には嵌まらず、走行中にチークパッドが段々抜けてくるという悲惨な(大げさに言えば危険な)状態も経験した。これはインカムには無関係で、完全にヘルメット側の問題だが。
専用設計にするのであれば、SHOEI 側でもう少し頑張れるところが多々あるように感じた次第。

インカム組み込みの話から逸れるが、Neotec 3 のセンターパッド(Type-Q)をヘルメットに取り付けるのも意外に難しい。
センターパッドの前縁プレート(ひさしみたいな部分)を、ヘルメット側のブラケットの隙間に差し込んで固定するのだが、このブラケットの長さが異常に短いために隙間に収まらずすぐに抜けてしまうのね。
端の方から隙間にはめ込みつつ、そこをしっかり押さえながら他の部分を差し込んでいく・・・と言葉で書けば容易そうだが、慣れないとまるで無理ゲーみたいに長時間楽しめるぞ。
このあたりも、もうちょっと設計で工夫しようがあると感じた次第。

総合評価

Neotec 3 + SRL-3 全体としての総合評価。
なかなか高価な買い物になったが、買って良かったとは思う。
遮音性はまずまずだが、雨天走行時の気密性は抜群で、恐らく冬季走行時にも快適だろう。
(逆に真夏の猛暑時にはもしかすると、サブに格下げとなった Ryuki を再登用するかも・・・)
ビルトイン型インカムも初めて使用したが、出っ張りが無いので風切音が小さく、操作性も心配したほど悪くは無い。
次にヘルメットを買い替えるときに、インカムをどうするか(後継機種じゃなければ多分SRL-3は使えない)という問題はあるし、そこを気にしてビルトイン専用機種を否定する人も多いが、まあどうせ数年単位で新機種・新機能が出てきてしまうから、そこは割り切ろうかと思う。

以上ご参考になれば。

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