Snarky Puppy – Empire Central(2022)

スーパー大編成 Jazz Funk エリート集団 Snarky Puppy の最新作。
彼らの故郷 Texas に大集結して、スタジオライブ方式で作り上げた驚きの一枚だ。
それにしても前作同様今回も国内流通が細い。
グラミーウィナーの超売れ線バンドなんですよ~。
(2023-02-06 追記 彼らは2020年の Live At The Royal Albert Hall の受賞に続いて、本作でも2023年の Best Contemporary Instrumental Album を受賞したよ。今日のNHKのお昼のニュースでは長崎県出身の小川慶太さんが所属するバンドが受賞みたいな報道だった。)
もっとCDの取り扱い増やしてくださ~い。
全国民が一家に一枚買って欲しいくらいの大傑作なんだけどね。

Snarky Puppy の過去作品では、リーダーの Michale League が曲の大半を書いていたのだが、ここ最近の作品では他メンバーの作曲を徐々に増やしてきた。
本作では Michael の曲は合作を含めても16曲中5曲のみ。
そして Michael の曲はもちろんのこと、他メンバーの曲も、もう途轍もなく素敵でかっこ良いのだ。
過去作に比べれば少しシンプルかつキャッチーな曲作りになっていて、その分演奏力やアンサンブルの凄さが際立つ気がする。
加えて言うと無茶苦茶音が良い。
20名近い演奏者、しかもドラムスが3人もいたり、ホーン等の生楽器も大勢参加している。
それをスタジオライブ形式で一発勝負で収録し(128トラックも使ったらしいよ)、まるでその場で聴いているような迫力あるクリアな音像に仕上げており、オーディオエンジニアの凄まじき力量(とご苦労)に感謝したい。

Tr.1-1 Keep It On Your Mind
初っ端は Michale League の曲。
もういかにも南部っぽいサウンド。
そう、彼らの旅はここ Texas から始まったのだ。
3:30頃から、エレピとシンセで魔法のような場面転換。
そのまま神秘的なエンディングを迎える。

Tr.1-3 Bet
これも Michael League の曲。
リズムに軽くラテンフレーバーが加わり、ちょいと懐かしいフュージョン風。
打楽器隊に煽られ曲はどんどん盛り上がり、そして3:34から、みんな大好き Shaun Martin の Talkbox ソロ。
最後は立ち上がって両手を突き上げたくなる感じ。
あー絶対これライブで聴きたいなあ。

Tr.1-5 Take It! (featuring Bernard Wright)
Hammond 弾きの Bobby Sparks の曲。
そしてゲストにモノホンの Funk 野郎 Bernard Wright (kbd) が登場。
動画も公開されているので、伝説のファンク野郎を囲んでみんなニコニコ演奏している様子を是非見てくだされ。楽しいよ。
Bernard の千鳥足のような不思議かっこいいフレーズをたちまち皆が吸収してアンサンブルに反映していくのが、もう凄いというより普通の人類には理解できないレベルに達している。
世界最高のライブバンドとよばれる所以かと。
圧巻なのが、5:10頃からの ds 3名によるソロまわし。
なお国内盤にはボーナストラックとしてこの曲の別テイクが収録されているよ。

Tr.1-6 Portal
パーカッショニスト Marcelo Woloski の曲。
この曲も素敵。
ビッグバンド Jazz のお手本のようなゴージャスなアレンジと強靭なラテンのリズム。
Chris Bullock のソプラノサックスソロに続いて、Marcelo の短いけれど強烈なパーカッションソロ。

Tr.1-7 Broken Arrow
このイントロの雰囲気どこかで聴いた覚えが・・・。
彼らの作品 Immigrance(2019) の Tr.2 Bigly Strictness に良く似ている。
トランペッター Justin Stanton の作。
Bill Laurence の el.p ソロに聴き惚れる。

Tr.2-2 Fuel City
Bill Laurence の作。
この曲はリズム隊(ds 3名、perc 3名)が素晴らしい。

Tr.2-7 Coney Bear
ギタリストの Bob Lanzetti の作。
ボトムにくるリズム、チャカポコバッキング、スライドギター、真っ黒な南部のロック風味。
4:08頃、しばしのブレークを挟んでの鬼の盛り上げが凄いぞ。

Tr.2-8 Trinity
こっちはギタリスト Mark Lettieri の作。
ギターの幾何学的アルペジオをバックにルーズなリズムと煙るようなホーンで神秘的に始まる。
このホーンとユニゾンするように Shaun Martin が Talkbox で呻くのが素敵。
Jazz が米国南部で生まれた初期の頃、スネアとホーンが先導して葬送の行列を引き連れて歩いたと読んだ気がするが、何だかそういう雰囲気を感じる曲。
でも終盤は少し雰囲気が変わり、現在進行系の都会的 Jazz Funk になっていく。
彼らの音楽的旅路(Texas から NYC へ、ローカルバンドから世界へ)を物語っているのかな。

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