Richie Beirach – Continuum(1983)

ちょいといつもの路線から外れて、ジャズ・ピアノのソロアルバムを紹介。
Richie Beirach のピアノソロ作品は、本作で4作目とのこと。
大学生の頃、John Scofield の諸作を追っかけているうちに Richie Beirach も好きになり、購入した何枚かのうちの一つ。
ところが、CDを乗用車の中に置いておいたら窓ガラスを割られてごっそり20枚くらい盗難され、本作も含めて貴重な作品が戻らぬこととなってしまった。後日犯人が捕まったとのことで警察から電話があったのだが、CDは全て二束三文で売ってしまい、犯人はほとんど文無し状態なので弁償も困難とのこと。弁償なんていいから、CDを取り返してきてくれよ~と恨めしく思ったことを覚えている。
でその後CDショップをまわって探索するものの入手できず、かなり年月が経過した後に中古CD屋で韓国版のCDを入手し、現在に至る。実は現在所有している韓国版CDのジャケット画像はオリジナルとは全然異なるのだが、今も思い出に残るオリジナルのジャケット画像を貼っておくよ。

さて Richie Beirach について詳しく述べるほどの知識は無いのだが、Bill Evans の後継者であり、クラシカルなタッチと現代的な和声(ド素人な言い方を許していただけるならアウトとインを魔術のように行き来する)、そして超絶的な技巧を併せ持つ才人。
バンドフォーマットの場合は稀に肉体的バップも演奏するが、ソロ・ピアノフォーマットの場合はとにかく端正で凛々しい。
本作では、彼自身のオリジナル曲とともにスタンダードも収録されているのだが、その解釈・リハーモナイゼーションがとにかく驚異的。当時の Jazz 雑誌で本人の曲紹介・分析記事を読んだことがあるのだが、僕にはまったく理解できなかった。

Tr.1 Gargoiles
曲の始まりから既にもう只者じゃない雰囲気。
因みに曲名は、欧州の古い石造りの建物等に取り付けられている魔除けの像のこと。日本で言うところの鬼瓦やシーサーみたいなものか。
Richie Beirach のピアノを Classical (クラシック的)と表現する記事が多いが、こんな不思議な和声はクラシックではなかなか出てこないだろうな。
中盤スピードアップしてちょっとSFチックな音世界になり、再び欧州の石像に戻ってくる。

Tr.2 Heirloom
曲名(エアルームと発音)は遺産のことなのだが、オリジナル版CDに入っていた本人の説明文では「母から娘に受け継がれる美しい遺産のこと」らしい。代々受け継がれてきた素晴らしいアクセサリーの類なのかもしれないが、僕は遺伝情報のことなのかも(母親の美しい姿や優れた才能を娘が受け継ぐ)と勝手に思っている。
この曲では Jazz 的な、あるいはアウトサイド的な和声を一切封印し、とてもクラシカルで美しい小曲となっている。

Tr.3 Hyperactive Airways
打って変わって今度はスリリングでダイナミックな曲。
これも本人の説明文を覚えているのだが、Starwars 的なスリリングな音世界を狙ったらしい。
緊張感に溢れ、でもとても短く終わる。

Tr.4 Continuum
同名の有名曲とは異なる、オリジナル曲。
まさに曲名通り、ゆったり、まったり、時空連続体のように進行する。

Tr.5 ‘Round Midnight
有名曲の驚異的なリハーモナイゼーション。
BGM的に聞き流したり、カフェ等でオシャレに聞いたりするには全く相応しくない極度の緊張感。
周囲の空気がガラス化してしまうような鋭い音。

Tr.7 Some Other Time
アルバム最後は Bill Evans の有名曲を、優しくリリカルなアレンジで。
極度の緊張感に溢れたスリリングな本作は、この美しい曲でほっと一息ついて終わる。
良くできているなあ。

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