Jeff Berlin – In Harmony’s Way(2001)

Jeff Berlin 温故知新シリーズ、ソロ第5作目。
プログレ、フュージョン界でキャリアを積み、名人と呼ばれるようになった後、前作 Taking Notes(1997) で Jazz に回帰しかけたものの、生来のお茶目さんな人間性が顔を出し、Jazz/Pop/Rock が不思議な感覚で混在するほんわかとしたアルバムに仕上がった。
その次に制作した本作は、迷いを振り切ったのか(?)堂々の、王道の、ドが付くような Jazz だ。
基本メンバーは、Jeff Berlin(b) / Danny Gottlieb(ds) / Richard Drexler(p, b) の3名。
Danny Gottlieb は、Pat Metheny Group、John McLaughlin、Elements 等で活躍してきた Jazz 王道の人。
Richard Drexler は、ベースとピアノの二刀流の達人。なぜ本作にベーシストが2名いるのかというと、Jeff がフロントでリードベースを弾く際に、Richard がバックでリズムセクションとしてのベースを弾くのね。
他に一部の曲にゲストとして、Jeff とはBerklee同窓である Mike Stern(g) と Gary Burton(vib) 、Jeff のアルバムではお馴染みの Clare Fischer(kbd)、そしてホーンが若干名加わる。

Tr.1 This is Your Brain on Jazz
前半は、饒舌な Jeff のリードベース(エレクトリック)が聴きどころ。
その後ろで Richard がいわゆる普通のランニングベース(アコースティック)を弾いてバッキングしているのが楽しい。
後半、同窓の Gary Burton が入ってきて、Danny のドラミングも手数が多くなり、曲の疾走感が高まる。

Tr.2 Runaway Train
この曲が僕のおすすめ。
ブルーズなんかで良くある機関車の音(ポッポー、シュッシュッ)を真似たイントロからスタート。
Jeff は機関車(ガッタンゴットン)ごっこをしばし継続。
そこに David Liebman(ss) が一聴して彼の音とわかる特徴的なブローで切り込んできて、魂のこもったソロでしばし曲を支配する。
ブリッジを挟んで 4:52 頃から Mike Stern(g) 登場。彼のプレイも魂がこもって熱いね~。
続いて Richard のピアノソロ。素晴らしくうまい。
で Jeff はと言うと、最後まで機関車ごっこのバッキングのみで終了。大人だね。

Tr.5 Heart of a Child
いくつになっても子供のようなハートを持つことって大事だよね(という意味の曲名なんだろうか)。
基本メンバー3名のみでの、しっとりとしたバラード。
Jeff が奏でるひたすら丁寧に美しいベースが曲をリードする。
アコースティックではなく、あくまでもエレクトリック(しかもフレッテッド)に固執するだけあって、楽器の使いこなし方やサウンドのコントロールが超人的。
まあそういう演奏技術面は置いといても、曲として素晴らしい。

Tr.6 Liebman on a Jet Plane
Dave Liebman がジェット機に乗るの巻。
何だかスリリングな曲調。
当然の如く、Liebman は徹頭徹尾豪快に吹きっぱなし。
ふと、John Scofield の Live(1977) に収録されている “Air Pakistan” という曲を連想した。
手に汗握るようなハラハラドキドキを音楽で表現しているわけだが、航空会社の実名を挙げてこういうのをやって大丈夫なのか?と余計な心配したものだ。
あっちと比べると、本曲には今にも墜落しそうな^^;ほどのドキドキ感は無く、何とか無事に着陸できそうな気配だな。

Tr.9 A Place of Know
ジェット機ブローの後、ホーン入りの素敵な曲2つを挟んで、アルバム最後は基本の3名でしっとり。
歌うようなフレージングは Jaco 的でもあり、きれいな音色と知的なフレージングは時に Marc Johnson 的でもあるのだが、でも誰とも異なる Jeff Berlin 独自のサウンド。
いわゆる Jazz ファンの間でどれほど受け入れられているのかは不明だが、とにかく聞いてみていただきたい。Jaco 亡き後、エレクトリックベースという楽器の可能性を現在進行系で拡大し続けている偉人の繰り出す音は、とても美しくて優しい。

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