The Flower Kings – By Royal Decree(2022)

前作 Islands(2020) から2年、The Flower Kings(TFK) の新盤がリリースされたのでレビューする。
メンバーは前作と同じ Roine Stolt(g) / Hasse Froberg(vo) / Zach Kamins(kbd) / Mirko DeMaio(ds) / Jonas Reingold(b) の5名に加えて、Roine の弟 Michael Stolt(b) が正式メンバーとして加入(初期メンバーなので再加入だ)したのが嬉しいニュース。
ベースが2名になったので、曲毎に交替して弾いているよ。(残念ながらベース対決みたいな余興は無し)
他にゲストとしてTFKのアルバムではお馴染みの Hasse Bruniusson(perc) 、Rob Townsend(sax) と、Jannica Lund(vo) が参加している。

まだネットのインタビュー記事等をあまり読み込んでいないのだが、ほぼリモートで制作された前作とは異なり、今回はスタジオに集う普通のプロセスで制作されたようだ。アナログのミックス卓を新調したので、そのテストも兼ねて色々収録してみたらしい。
それからこれは本作を特徴づける大きなポイントなのだが、収められた曲の多くはいわば昔のボツネタ(完成に至らなかったアイデア・使われなかった素材等)らしい。Roine 曰く若き日の自身のチャレンジ(正確には「中年の冒険」と発言している)を聴いて欲しいとのこと。
ボツネタとは言っても、超高品質の楽曲作りをしてきた Roine/TFK の作品だけに、どれもこれも驚くべき素晴らしい曲ばかりなので、そこはご安心を。
ところどころ昔のTFK、例えば第一作のキラキラした陽気さや、Stardust We Are あたりのポジティブでエモーショナルなエネルギーが感じられる楽曲が多いのだが、それを現在の演奏技術と録音技術で作品化している。
他に本作の特徴を挙げると、楽曲の長さが短い。
長くて7分強だもの。10分、20分の大作は全く無くなった。
前作はリモート制作だったので、必然的に短めになったのかなあと想像していたのだが、考えてみれば Banks of Eden(2012) 以降の彼らの作品には 10分超えの大曲は1枚につき1,2曲程度しか入ってなかったので、意識的にそういう方向(リスナーの聴取スタイルに合わせた方向)に進んできたのだろうね。
でも2枚組なので、アルバムトータルレングス的にはお腹たっぷりだ。

Tr.1-1 The Great Pretender
比較的「今のTFK」っぽいシリアスな楽曲。
シングルカットされ、昨年末に先行リリースされた。
ベースの Jonas も、Hasse の歌声も完璧。

Tr.1-2 World Gone Crazy
ちょっと昔のTFK風な楽曲。
Michael のベース。

Tr.1-4 A Million Stars
いやあ、これこれ!これですよ!
90年代の彼らの音を思い出す楽曲。
ついつい、Tomas Bodin の音を探してしまう・・・。

Tr.1-8 Peacock On Parade
本作(の僕が購入したCDメディアのブックレット)には、曲毎の Composer がクレジットされていないのだが、この曲については謝辞のところで Mirko が Neil Peart に捧げているので、Mirko の作品なのだろうか。
ボーカル無しのインスト曲。これも昔のTFKっぽい。
Zach のハモンドソロが素晴らしい。

Tr.1-9 Revolution
CD1枚めの最後を飾る曲。
Hasse の歌い出しを聴いてもう反射的に、これって Stardust We Are Part2 みたいな感じかと思う。
で曲の途中で A Million Stars のテーマが再登場し、ああ全体が大きな曲になっているのねと思い当たる素敵な趣向。

Tr.2-3 Evolution
Zach のハモンドが縦横無尽の大活躍。
出だしのモヤモヤとした音像は、Soft Machine の Third(1970) の終曲 Out-Bloody-Rageous の Mike Ratledge のオルガンに何だかそっくりだ。ぐっと短いけど。
Mirko のスネアとともに雄々しいテーマが立ち上がってくる。
この、ドリーミーでポジティブでちょっとカワイイ曲調は90年代のTFKの特色だ。

Tr.2-8 Shrine – Piano Intro
Zach のピアノ・ソロ小曲。
たった1分の、曲とも言えないくらい短いソロで、もう見事にTFKらしさ(最近加入したばかりだぞ)ともちろん Zach らしさを表現しきっているのが凄い。Zach 一人でTFKのアルバムを1枚作れと Roine 親方に言われたら、ちょっと頑張ればできるのではないだろうか。

Tr.2-9 Funeral Pyres
2枚組アルバムの終曲。
クレジットによると、Roine がシンセやクラビネットまで演奏しているのも面白いけど、Mirko がオーケストレーションを担当しているのも興味深い。
TFKのアルバム終曲らしい、印象的で壮大な大曲。
このドラマチックな曲を7分で収められるのなら、20分の大曲はもう不要なのかも。

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