Marc Johnson – Right Brain Patrol(1993)

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僕のこのサイトには、リリース年別インデックスというあんまり役に立たない機能を設けてあるのだが、1993年がぽっかり抜けているのを見つけたので、93年リリースのアルバムをレビューするよ。(そういう意味では役に立ったな)
(Discogsによると独JMT版は1992年リリースだったようだが、僕のPolygram版は1993年)

Jazz Bass 界の重鎮 Marc Johnson が、Bass Desires (2作品リリース)の後に立ち上げたプロジェクト。
参加メンバーは、Marc Johnson(b) / Ben Monder(g) / Arto Tuncboyaciyan(perc, vo) の3名。
ドラムスが不在でパーカッションが代替するのだが、バスドラ的な音が無いので全体的にちょっと内省的なサウンドになっている。
また Bass Desires と比べて g が一人になったが、技巧者 Ben Monder が頑張っているので色彩豊か。
全体的な曲調は、やはり Arto が参加しているためか無国籍ワールドミュージック風味が強い。真夜中に聴いていると、不思議な異界に誘われるよ。

Tr.1 They Love Me Fifteen Feet Away
Arto 作のとても感傷的で素敵な曲。
同じく1993年にリリースされた Al Di Meola – Heart of the Immigrants にも、Arto が参加しているご縁でこの曲が収録されているのだが、そっちはさわりだけ。たった1:25で終わってしまうのが残念。
Ben の美しいアルペジオ、煙るような Marc のベース音、そして Arto のボイスが素晴らしい。
この1曲目で、本アルバム全体の基調が定まる感じ。

Tr.2 Batuki Burundi
Marc のベースソロ。
Bass Desires 初作のやはり2曲目、ベースソロで始まる Resolution と似たフレーズが散見されるが、意図的なんだろうね。

Tr.3 Netcong on My Mind
Ben Monder 作のブルーズ。
Bass Desires の John Scofield といい勝負している。

Tr.4 Right Brain Patrol
アルバムタイトル作。作曲は当然 Marc Johnson だ。
Bass Desires の2作目 Second Sight(1987) の Tr.1 に Crossing the Corpus Callosum (脳梁を渡ってみたいな意味かと) という曲があり、これが恐らく Marc の「右脳宣言」だったのかなと僕は思っているのだが、さて本作ではその右脳をとことん探検(Patrol)することになるよ。
躍動的かつ細かいリズムのテーマユニゾンが特徴的。
途中挟まれるゆったりしたパートで、ギターの音が(多重録音で)2つ聞こえる。一方はクリーンなアルペジオ、他方はアタックを消してパッドみたいなコードトーン。やっぱり Bass Desires を意識しているんじゃないかな。

Tr.5 Heru Nazel
この曲は素晴らしいよ。Arto 作による無国籍サウンド。
Ben のバンジョーと Arto のスキャットが何とも美しい。
終盤の口パーカッションも素敵。

Tr.6 Inside Four Walls
Marc の作。
Ben の浮遊感溢れるギターが、まるで Bill Frisell のようだ。

Tr.7 You
Arto のパーカッションソロ。

Tr.8 After You
前曲を受けて Marc 作の楽しい曲に繋がる。
やや高音のパーカッションとギターのコードジャカジャカ弾きをバックに、Marc のリードベース(?)が饒舌に語る。本当にこの人は粒立ちが良くきれいな音を出す。

Tr.9 Whispers
Marc, Ben の共作。
この曲でもギターは、クリーントーンのアルペジオと、歪ませて残響たっぷりの浮遊感あるフレージングの2つが多重になっている。ボリュームペダル(あるいはボリュームノブ)でアタックを消して、振幅大きめのビブラート、空間を埋める残響の余韻、やっぱこれは Bill Frisell へのリスペクトなんじゃないかな。

Tr.10 Log O’ Rhythm
Marc 作。数学のロガリズムにかけたJokeっぽいタイトルなのかなと思うが不明。
ギターは無し。Arto のトントコリズムと Marc のベースの対話。

Tr.11 Light in Your Eye
Marc 作。ちょっと Traditional Music っぽい悲しげな曲。
Bass Desires 初作の Tr.3 Black is the Color of My True Love’s Hair とか、同2作目の Tr.2 Small Hands とか、アルバム内における立ち位置的に似ているかと。
主旋律を奏でるのは、Ben のギターと Arto のボイスのユニゾン。これが何か不思議な擦弦楽器(バイオリン的な)みたいに聴こえて、とても心地よい。

Tr.12 The Call
3人の共作。
この曲が僕のお気に入り。
ベース、バンジョー、ギターが基本的な音形をずっと繰り返す。コード進行も基本パターンを延々と繰り返し。その上で Arto の祈祷師のような心を揺さぶるスキャットが異界に誘う。
口パーカッションも効果的。一緒に歌いたくなる。
何だかこの曲は、我らモンゴロイドの魂に響いてくるんだよなあ。曲名の The Call というのは、「呼び声」なのかなと僕は勝手に想像しており、この曲を聴くたびに遠い未知の世界へフラフラと旅立っていきたい気分を抑えられなくなる。僕らのご先祖様も、そうやってアリューシャンからアラスカを超え、南米まで行っちまったのかもなあ。

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