Nils Petter Molvær – Buoyancy(2016)

Norway の Jazz Trumpetter、Nils Petter Molvær(NPM) のソロ作品。
リミックスモノやサウンドトラック等を除けば、ソロ第9作目くらいになると思うのだが、この人の場合はそのリミックスモノが結構独立したソロ作品として成立していたりするので、数え方が良くわからん。

メンバーは前作 Switch(2014) とほぼ同じ。
・アコ・エレ双方のベース+ギター+シンセ+電気モノ担当の若き才人 Jo Berger Myhre (80年代生まれだよん)
・ドラムス・パーカッション担当の中堅 Erland Dahlen (こちらは70年代生まれだ)
・ペダルスティールギターやボトルネックで演奏するレゾネーターギター等の「みょ~ん」な音響担当のベテラン Geir Sundstøl (60年代生まれ)
・リーダー(Tp)の NPM が1960年生まれ
といった感じの年齢バンド構成。
曲の多くは NPM と Jo が書いている。
2009年リリースの Hamada を最後に当時右腕同様だった Eivind Aarset(g) が離れ(経緯は知らん)、次作の Baboon Moon(2011) では Stian Westerhus(g) を登用。その後の Switch(2014) と本作では Geir Sundstøl(g) を継続雇用したので、このまま行くのかと思いきや Stitches(2021) ではまた別のギタリストに変えてきた。(Stitches は後日レビュー書きます)
恐らくNPMの音楽においてギターのサウンドというのはかなり重要な位置を占めている。それもディストーションで歪ませ、深くエフェクトをかけ、半ばノイズのように鳴り響く轟音のようなギターサウンドが。
但し、ドラムスとバックトラック(クラブっぽい電子音の)の上に暴力的轟音ギターと、エコーをかけたNPMのペットが鳴り響くというのが基本フォーマットだった2000年代までのサウンド(換言すれば Eivind Aarset が在籍した時代)に比べると、2010年代以降は円熟なのか深化なのかギターサウンドの使い方が変化してきた気がする。あまり上手な例えでは無いと思うが、より Bill Frisell 的な方向に。

Tr.1 Ras Mohammad
まず出だしのスライドギターと曲調から Pink Floyd (David Gilmour) を想起した。
クリーン音のスライドギターに重ねて歪ませたギターソロが乱入してくる。これは Jo が弾いているのか、Geir の重ね録りかわからん。更にアルペジオも聞こえるので、ギターだらけ。
ドラムスは生音っぽい。電子音は少なめ。トランペットはあんまり吹かない。
ということで、以前のDnB+Acid Jazzは鳴りをひそめ、何だか Post Rock みたいな音響。

Tr.2 Gllimanuk
今度は御大NPMが出ずっぱり。哀愁を帯びた小曲。
この曲での Geir の音に特に Bill Frisell 的な役割(空間を染める、強い想起力等)を感じる。要するにキーボード(パッド)の替わりってことか。

Tr.4 Jackson Reef
出だしは御大NPMが吹くが、その後はほぼDs+B+Gのスリーピースでまるで Russian Circles みたいな曲調。最後は再びNPMが登場して締める。何だか面白いぞこれ。

Tr.6 Lamna Reef
トルコかアラブ方面みたいなエキゾチックなイントロ。
ゆったりしたハンドクラップをバックにNPMが朗々と吹く。
最後は電子音とともに宇宙へ飛び立つ。

Tr.7 Amed
アルバム中では最長となる9分の大曲。これがピークかと。
詠唱のような5拍子のバラッド。
4:07から生音っぽいドラムスと轟音ギターで、以前のクラブサウンドではなくこれも Post Rock みたいな世界へ。Erland のドラミングは熱くエモい。

Tr.9 Kingfish Castle
短いブリッジ曲を挟んで、これがラスト。(CDにはこの後ボートラが入る)
映画音楽的な強い想起力を持った曲。
本作全体を支配している Post Rock 的なアンサンブルはここには無く、最小限の打楽器音+パッド音によるサウンドスケープをバックにNPMが朗々と吹く。

Tr.10 Maddagala
ボーナストラック。
ペダルスティールとアルペジオの2つのギター音をバックに哀愁を帯びたNPMのペット。
ミニマムでツボを抑えた Erland のドラミング。
ちょっとだけ使われるレゾネーターギターの土くさい音。
感情を鷲掴みにされる素敵な曲だ。

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