このBlogではお馴染みの、オーストラリアが産んだバカテクドラマー Virgil Donati のソロ名義としては今のところ最新作。
前作の The Dawn of Time(2016) はオーケストラを従えてのドラムコンチェルト、しかもスコアを全部 Virgil が書いているという驚きの作品だったが、本作は通常営業の Tech Fusion だ。Tribal Tech とか好きな人も、安心して聴けると思うぞ。
曲毎に参加ミュージシャンが異なるのだが、Virgil Donati(ds) 以外の基本メンバーとしては、
Junior Braguinha(b) / André Nieri(g) / Irwin Thomas(g, vo) / Chris Clark(kbd) / Joe Chindamo(kbd) といった方々。
Junior Braguinha はブラジリアン、初めて聴いたので良く知らず。抜群に上手い。
Chris Clark は Brand X 参加等で有名なお方。
Joe Chindamo はオージー。良く知らず。
そして、今回の聴きどころは André Nieri の超流麗ハイテックなギタープレイでしょう。
曲毎紹介の方で書くけど、一部の曲で IceFish メンバー(Marco Sfogli(g)、Alex Argento(kbd))が参加していて、そこもオススメポイント。
Tr.1 Castle Bastards
On The Virg とか初期の Planet X あたりを想起する曲調。
あまりシンセでグワングワン言わせず、エレガントにエレピ(Rhodes)でツボを押さえたプレイ。
このRhodesが左右に並んでいて、左が Chris Clark、右が Joe Chindamo らしい。
そして真ん中で目も覚めるようなフラッシーなレガート速弾きをしているのが、André Nieri だ。
Tr.2 Back To Me
kbd は Joe だけ、g は André だけ、そして Irwin は vo に回っている。
この曲が、なかなか IceFish を感じさせるのだけど気の所為だろうか。
IceFish が2017年、本作が2019年だから、欧州メンバーが Virgil から受けた影響と同じくらいに、Virgil も欧州メンバーから影響を受けたのかもね。
ややポップ(当社比)な歌モノで、なおかつ壮大な曲調のハイテックなフュージョン。
Tr.3 Ruination
アルバムタイトル曲。
エレピソロに続いて、3:07からギターソロ。
最初に左から Irwin 、続いて右から André 。
両名とも、やや普通のロックっぽいソロ。
Tr.4 The Crack
超高速・幾何学的リフのユニゾンという、Virgil の曲では良くあるヤツ。
途中からもう聴いている方は拍子がわからなくなるのだけど、演奏している方々はもちろんちゃんとカウントわかっていて、ブレークとかバッチリ決めるわけだこれが。
後半、André の超高速超レガートなソロで曲調も Holdsworth 的に。
Tr.5 Eleven, Pt.2
Virgil の In This Life(2013) の Tr.2 が Eleven という曲で、こっちはその Pt.2 なんだろうなきっと。
で、In This Life に参加していた Evan Marien(b) がこっちでも存在感抜群で手数も多い b を弾いているよ。
g は、In This Life のときの Marco Sfogli ではなくて大御所 Julian Lage が弾いている。
Tr.6 The Quiet Place
さてお待ちかね(?)、IceFish組の乱入だ。
Alex Argento(kbd) と Marco Sfogli(g) が参加。
壮大でロマンティックな曲調、生音っぽく感情豊かな Marco の弾きまくりソロ、ベースソロに続いて感情が爆発する Alex のグッと来るシンセソロ。
もうこの曲を聴くためだけに本作を買っても惜しくないと思う。
Tr.11 If There Were Nothing
この曲だけメンバーが大きく入れ替わって、Evan Marien(b) / Matteo Mancuso(g) / Steve Hunt(kbd) / Virgil Donati(ds) という布陣に。
Steve Hunt は、Allan Holdsworth の数々の名作を隣で支えた片腕。1958年生まれの大ベテラン。
そして Matteo Mancuso は、ピックを使わず指弾きで超高速フレーズを奏でる1996年生まれの若手バリバリ。Sebastiaan Cornelissen の The Holdsworth Reinterpretations(2020) でも参加しているぞ。
というわけで、この曲を前にしたリスナーは、どうしたって Allan Holdsworth 先生の面影を追い求めてしまうわけだ。
その期待を一身に担って(?)、1:43あたりからゆるゆるとレガートなギターソロ。
3:25から Steve Hunt の滋味深いシンセソロ。
もっと聴いていたい・・・と思うところで終わってしまう寂しさよ。
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