英国のプログレバンド The Tangent が、まだ結成間もない2004年にドイツで行ったライブの録音。
最近になって Pyramids, Stars And Other Stories というタイトルでリマスターされ、しかもそっちには2017年の最新式(当社比)ライブも収録されているのだが、今回レビューするのは2004年のライブだけが収録された初期版の方。
彼らの最初のアルバム The Music That Died Alone が2003年。Andy Tillison 主導による一度限りのプロジェクトのつもりだったらしい。
その翌年 2004年に第二弾アルバム The World That We Drive Through がリリースされ、数多くのメンバーチェンジを経ながらも現在まで恒常的なバンドとして継続している。
本作は、この第一作及び第二作の時期に行われたライブの唯一の公式リリースであり、何と言ってもメンバーが下記のように超豪華なのだ。
Andy Tillison(org, syn, p, vo)
Roine Stolt(g, vo)
Sam Baine(p, syn)
Jonas Reingold(b)
Zoltan Csorsz(ds, perc)
Andy, Sam は Parallel Or 90 Degrees(PO90D) の主要メンバー。
Roine, Jonas, Zoltan は The Flower Kings(TFK) の主要メンバー。
そう元々この The Tangent は、この2つのバンドの主要メンバー同士のコラボプロジェクトとして始まったのだ。(プロデュースも Andy と Roine の共同)
その後、TFK勢は去り、Andy 個人のプロジェクトのようになって形を変化させながら存続していくのだが、本アルバムではTFKカラーが最も色濃かった初期メンバーによるサウンドを聴くことができる。
しかも、Zoltan はTFK歴代ドラマーの中でも最もテクニカルで、しかも Jazz センスを持ち合わせた僕のお気に入りのプレーヤーなので、その点でもオススメ。
Tr.1 The World That We Drive Through
当時リリース仕立てほやほやだった第二作のアルバムタイトル曲からライブが始まる。
スタジオ版ではPO90Dの Guy Mannings(g) とプログレ界を代表する名saxプレーヤー Theo Travis が参加しているが、ライブではその2名はいない。でも音が減って寂しいかとかそんなことをほとんど(※)感じさせないのが驚き。
(※フルートのパートをシンセで弾いているので、音質的に若干寂しいのは事実)
Tr.2 The Canterbury Sequence
第一作に収録された彼らの初期の代表曲。
Canterbury という地名を聴くだけで心が躍るプログレファンは多いだろう。
英国プログレ(というか Jazz Rock)の心の故郷 Canterbury Music を継承し、そこに現代的な Jazz, Soul Music, R&B あるいはポップセンスを混ぜ込んで、最新のディジタル楽器と演奏技術で生み出す温故知新なサウンド。
今聴いても、芳しく香る英国調の響きとオシャレな Jazz センス、そして Andy 親父のボヤキ漫才みたいな語りのミクスチャーが素晴らしい。
Tr.6 In Darkest Dreams
第一作のスタートを飾った大曲。
そう、この音から彼らの歴史は始まったのだなあ。
僕自身は、TFK主要メンバーが参加しているスーパープロジェクトとして彼らの存在を知り、アルバムを購入してその素敵なサウンドにブッたまげたわけだが、曲のほぼ全てを Andy Tillison が書いていることを知り、その驚くべき才能にまたまたブッたまげたことを覚えている。
その才人 Andy Tillison は、バンドのセンターポジションでキーボードを弾きながら歌うのだが、そのボーカルはとっても上手いというわけでも無く、声質が素敵ということでも無く、何だかボヤキながら嘆きながら語るように叫ぶように歌うのだけど、しみじみとハートに響いてくるのだ。
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