The Prog Collective – Seeking Peace(2022)

Yes の Billy Sherwood が主催するプログレ同窓会プロジェクト The Prog Collective の2022年リリース作品を2枚まとめ買いしたいので、その一つ Seeking Peace を紹介する。もう1枚 Songs We Were Taught についてもそのうち書く予定。
The Prog Collective は、ちょっと昔に活躍したプログレ界のスタープレーヤー達を集めて、往年の名曲を演奏するという、TVのヒットパレード的というか、ある種の余興芸みたいな楽しいプロジェクト。
でも本作は全部、本作のために Billy が書き下ろした新曲なのが驚き。
彼の人柄なんだろうね、スリリングな展開とか陰影とかはほとんど無く、ほんわかとしたポジティブムードでゆったりめのリズムの曲ばかり。
そういう点ではリスナーを選ぶかもしれない。
それと、これは瑣末事なのだが、ジャケットを見る限りバンド(プロジェクト)名から The が取れた。そのためなのか、Discogs で検索しても本アルバムが出てこない。
英語圏の住人にとっては The の有無なんてどうでも良いのかもしれないが、僕のような収集癖があってライブラリをきっちり整理したい人にとっては、アーチスト名の「ゆれ」は結構大きな問題なのね。The Art of Noise とか、The Producers とか、途中から The が取れちゃった人は何故か多い。売れ始めて認知度が高まったら The を取るのかね?それならそれで良いことかも。

Tr.1 Electric World
1曲目は歌姫 Sonja Kristina、Dream Theater の Jordan Rudess(kbd)、元Genesis等の Chester Thompson(ds) がゲスト。Billy は b / g / backing vo. を担当。
大御所の貫禄を見せる Sonja 嬢の歌声、シンプルにゆったり叩くが音が豪快な Chester のドラミング、その上で豪華絢爛な Jordan のkbdが聴きどころ。

Tr.2 Seeking Peace
ゲストは、Dream Theater の James LaBrie(vo)、元Yesで本プロジェクトでは常連の Patrick Moraz(kbd)、元Zappa等の千手観音系バカテクドラマー Chad Wackerman のお三方。
さすがに第一線級現役売れ線バンドのボーカルは存在感が凄い。
そして、Chad の抑えたドラミングが意外に面白い。手数は超少なく(当社比)、変拍子等も全く無いのだけど、何だか1打1打に「俺にもっとパカパカ叩かせろよ、もっと変態的にやろうぜ~」みたいな気概を感じるのね。
本アルバム全体を通して、このバカテクドラマーを呼んできて抑制的に叩かせる変な縛りプレイが感じられて、ちょっと面白い。

Tr.3 In An Instant
ゲストは、The Flower Kings の・・・と言うより現代プログレ界の巨匠 Roine Stolt(vo)、Top Gun Anthem で一世風靡した Steve Stevens(g)、元UKや The Sea Within 等参加の Marco Minnemann が参加。
Roine は全く g は弾かず vo のみ。なので、Steve Stevens とのギターバトルとかは無し。
Marco のドラミングは、これまでの他のゲストドラマーの方々と比べると少しだけ音数多めでちょうど良い塩梅。やっぱりこのくらい叩かせてあげたほうが気持ち良いよね。
脱線するけど、先日 The Aristocrats のライブに行ってきたら3人とも超面白い人ばかり。Marco Minneman もとっても剽軽な人で、もう完全にコミックバンド(超絶技巧の)だったぞ。
この曲、Billy の書いた作品なのでまったりしているのだが、Roine のボーカルが入ると少し TFK 的なファンタジックムードが感じられて心地良し。

Tr.4 All Is Meant To Be
ちょっと前に20年ぶりくらいにアルバムをリリースして世の中を驚かせた Angel の Frank DiMino(vo) と、本プロジェクトではお馴染みの仕事を選ばないプログレ職人 Geoff Downes(kbd) が参加。
曲調が80年代 Pop というか、イントロが Police っぽいというか、ところどころ Power Pop 路線の Rush みたいな感じもあったり、そのあたりを通過してきた我々世代(?)には味わい深い楽しい曲。

Tr.5 Finally Over
元 E-Street Band の David Sancious(kbd) と、元 Dregs その他諸々の Steve Morse が参加。
二人ともに Rock から Fusion まで業界をまたにかけて仕事する名プレーヤー。
曲調としてはプログレ感薄め、Fusion感無し、王道のアメリカンロックな感じ。
Steve Morse の伸びやかなギターサウンドが聴こえてくると、もう耳が喜ぶなあ。

Tr.6 A Matter Of Time
Billy とは現Yesのバンドメイツの Jon Davison(vo)、スペイシーなギターでお馴染み Gong 他の Steve Hillage、そして僕のお気に入り Virgil Donati(ds) がゲスト参加。
本アルバムの中では最も「スリリング」な曲調かもしれない。(当社比)
前述したように本アルバムを通してバカテクドラマーの皆様の抑制的プレイが楽しいのだが、さすがに荒ぶる変拍子 Virgil Donati 先生を誰も抑制しきれるものではなく、本アルバム中最高の手数を叩き出している。それでも Virgil 先生のいつものプレイと比べると音数は千分の一くらいか。
音数を減らそうとしながらも、ついオブリガードとかで手やペダルが勝手に動いてすごく短い一瞬の中に打音を5,6個詰め込んでしまう手数のサガみたいなものを感じるなあ。楽しいぞ。

Tr.7 Take The Path
元 Alcatrazz や MSG の Graham Bonnet(vo)、Shakti 他で有名なエレクトリックダブルネックバイオリン奏者 L. Shankar、御長寿プログレポップバンド Styx の Todd Sucherman(ds) がゲスト参加。
まあ普通では考えられない不思議な組み合わせだよね~。
Shankar のヌルヌル変態グリッサンドバイオリン(グリッサンドの語源通りに指に油を塗って滑らせて弾いているらしいぞ)が超気持ちいい。
Todd Sucherman って実は本作で初めて聴くのだけど、かなり上手いね。

Tr.8 Electric World(Full Length Version)
これはTr.1(3:30)の長めバージョン(5:32)。
Full Length とか言ってもすごく短い^^;。
ボーナストラックなので文句言わずに楽しんでくだされ。

Tr.9 All Is Meant To Be(Full Length Version)
こっちはTr.4(5:02)の長めバージョン(6:56)。
後半のアラブ・スペイン・ディープ・パープル風というかハーモニックマイナースケールっぽい展開のところが長めになっていて心地良し。

コメント