Bruford – Gradually Going Tornado(1980)

大好きな作品をレビューし忘れていたのを、Jeff Berlin 温故知新の流れで思い出したのでレビューしようぞ。

英国プログレ/カンタベリーミュージック界のど真ん中を歩む Bill Bruford が立ち上げた自身のバンド Bruford の3作目。
1作目、2作目と参加した Allan Holdsworth(g) は本作には参加せず、ソロ活動を志向するも、金に困って色々とボロボロになりながら本作に少し遅れて傑作 “I.O.U.”(1982) を世に出す。その抜けた Allan に代わって登用されたのが John Clark(g) なのだが、それまで何をしていたのか誰も知らない無名のミュージシャンだったので、冗談ぽく John “Unknown” Clark 等と紹介されていた。
他のメンバーは前作と同じ、Dave Stewart(kbd)、Jeff Berlin(b)、そしてリーダーの Bill Bruford(ds) というカルテット編成。曲によりゲストが参加する。

アルバム全体のムードは前作・前々作とほぼ変わらない。
カンタベリーミュージックの雰囲気をまとった上質なプログレッシブ・ジャズロック。
細かく言えば、第1作 “Feels Good To Me” は女性ボーカル等も登用してカンタベリー色強め、第2作 “One Of A Kind” はボーカル無しのゴリゴリのインスト中心、そして本作はまた少し第1作の路線に戻った印象。
多くの曲でボーカルが入るのだが、大半は何と Jeff Berlin が歌っているのだ。まあ上手いかどうかと問われると答えに窮するのだが、及第点には達しているし、聴き込むと味があってなかなか良い声だよ。

Tr.1 Age of Information
イントロが終わり、酔っ払ったおっさんのような Jeff Berlin のボーカルに度肝を抜かれる(笑)。
Bill の細かく刻む乾いたタムとスネアの音、切り込む Dave の笙のような雅な(笑)シンセ、細かい音符でグルーブする技巧的な Jeff のベースと酔っ払ったおっさん風ボーカル。そして、Allan Holdsworth が抜けた穴をきっちり埋める、なかなかどうして超上手い John Clark のギター。
もうこれは完璧な音楽。Jazz Rock 好きなら天国に行ける音。

Tr.2 Gothic 17
この曲はカッコいいねえ。
ゲストで Georgie Born(Cello) が参加し、ミステリアスな雰囲気を盛り上げる。
音飛びが多く変態的なフレージングでとっても歌いづらそうなボーカルパートを、Jeff Berlin が一生懸命歌う。
そして John Clark のギターが繰り返し奏でるテーマフレーズのカッコよさよ。

Tr.3 Joe Frazier
Jeff Berlin 作のとても楽しい曲。以後彼の看板曲となる。
当然のごとく Jeff Berlin の弾きまくりコーナー。
バッキングに回っても超技巧的で耳を全部持っていかれる。
Players とか、Jeff のソロの Champion とかお好きな方に是非オススメ。

Tr.4 Q.E.D.
打って変わってちょいとシリアスな大作志向のナンバー。
因みに Q.E.D. とは「これにて証明完了」って意味の数学用語。論文や学会発表等でドヤ顔的に使うと盛り上がって楽しいよ。(そんな人いないからね)
雰囲気的には前作の The Sahara of Snow あたりに通じるドラマチックな曲。
Dave Stewart のエレピが、何だか Soft Machine あたりを想起させる。
John Clark のギターサウンドは Allan そっくり。鼻をつまんだような中域強調のオーボエトーン。速弾きすると音色のコントロールが少し雑になるが、まあ Allan と比べるのは可愛そうだな。

Tr.5 The Sliding Floor
Bill / Jeff / Dave 3人の共作。スリリングなナンバー。
11/16のカッコいいテーマフレーズを繰り返し、その後に16/16に変化して Jeff Berlin のボーカルパート。
更にその後 2:19 頃からドリーミーに曲が変化。このあたりは Dave Stewart の成せる技だろうか。
再び11/16のテーマ、そして短いピアノとギターの対話パートを挟み、とっても短い John Clark のソロ。これ Allan だったらもっと長く弾かせたでしょ。可哀想だなあ。無名だけど才能あるんだから、もっとプッシュしてあげれば良かったのに。

Tr.6 Palewell Park
Bruford 作の叙情的で素晴らしい曲。
でも Bruford と John Clark はお休み。
Dave Stewart のピアノをバックに、Jeff Berlin の美しいベースがリードするというデュオ編成。
ため息が出るほどの美しさ。

Tr.7 Plans for J.D.
曲名の J.D. って何だろう、人名かなとも思っていたが、歌詞の中で Judgement Day てのが繰り返し聴こえてくるのでそれかな。審判の日って奴だな。
Bruford 作の軽快なロック。Jeff Berlin のバッキングが凄い。そしてボーカルは・・・(笑)。

Tr.8 Land’s End
アルバム最後の曲は Dave Stewart 作のカンタベリーミュージックまっしぐらなナンバー。
何とゲストに Amanda Parsons と Barbara Gaskin がコーラス隊として参加している。
彼女たちは、ご存知 The Northettes の方々。
Hatfield And The North とその発展型 National Health を通じて、Dave Stewart 及び Bill Bruford と一緒に活動してきた盟友のお姉さま方だ。
曲の位置づけ的には、第1作の最後 Adios a la Pasada と同様に、「最後にどどんとドラマチックに盛り上げまくるクライマックス」であり、10分超の堂々の大曲なのだが、とってもアクの強い Annette Peacock 嬢が歌い上げる、とっても押しの強い Adios a la Pasada と比べると、こっちはあくまでも上品かつ爽やか。僕はもちろんどちらも大好きだ。

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