所属しているツーリングクラブの一つでは、従前からアマチュア無線を利用して走行指示・誘導等を行っているのだが、ここ最近になって Sena のインカムが搭載している Mesh 2.0 による相互接続を強く推奨するようになった。
確かに無線自体には特に興味がない普通のバイク乗りに、ツーリングのためだけに無線機を導入してもらうのは敷居が高すぎるし、インカムと無線機とPTTを繋げようとするとそこらの素人さんには自力で超えられないほどの壁がある。
かといって普通の(Bluetoothによる)インカム接続で大所帯(このクラブのツーリングは参加台数が20-30台程度にもなる)を安定に相互接続するのは非常に難しい。
BT(Bluetooth)とMeshの比較については世の中にたくさん情報があるので割愛するが、20台以上のインカムが相互接続できて、しかも隊列の両端が互いに見通せないほど長くなって(信号待ち等で離れて)しまっても強靭な経路探索機能のおかげで結構繋がる。それでいて、接続操作は一回ボタンを押すだけ。新規導入者に対するベテラン隊員のサポートの苦労が著しく軽減される。
一応は通信工学科出身の僕としては、ノード間でどのような経路情報をやり取りしているのか等とても興味があるのだが、まあそのあたりはおいおいと。
さて、上記のような社会情勢?を背景に、最近になってインカムを Daytona DT-01 から Sena 50S に買い替えたので、少しレビューしてみる。Mesh 接続の便利さみたいな話は世の中にたくさん情報があるので、本稿では以下のようなポイントに絞ることにする。
1) バイク走行中の操作性と使用感
2) スマホ及び無線機との接続と Mesh 通信の併用
3) 音楽再生デバイスとして
4) 使用して感じられた問題点
1) バイク走行中の操作性と使用感
50Sは筐体がデカイので、これまで使用していた Daytona DT-01 と比べて少し操作がやりやすくなった。中でも音量増減はジョグダイヤルを回すだけなので、小さなレバースイッチを何度もカチカチと押さないといけない DT-01 と比べて随分ラク。
僕の場合、最も頻繁に操作するのは音量増減、その次に頻度が高いのは音楽再生の開始/停止。この開始/停止も大きなジョグダイヤルを横から押し込む操作なので随分ラク。但し短時間押しただけでは「インカム(BT)通信開始」操作になってしまうので、1秒程度押し続けないといけない点は要注意。
Mesh 通信を開始するためには、筐体上面に埋め込まれているアンテナを立ち上げ、その横(アンテナよりヘルメット側)にある小さなスイッチ(Meshスイッチ)を押す必要がある。まずこのアンテナ立ち上げだが、インカム筐体のプラスチックの突起に引っ掛けてあるので、横方向(ヘルメットに対して横鉛直方向)にアンテナを少し引いてから上に引っ張る必要がある。これをグローブをはめた状態で行うのは結構難しいので、走り始める前に素手で引き出しておくことをオススメする。
Mesh スイッチを押す都度 Mesh 通信が開始/終了する。また Mesh スイッチを1秒程度長押しすると、通信状態のまま自分のマイクだけを Off にできる。くしゃみとか鼻水ずるずるとかの雑音を垂れ流したくない場合は積極的に On/Off すると良い。
で、感心したのが Sena 50 Utility というスマホアプリ(僕の場合は Android 版を利用)の使用感。実は上述した操作の全てはインカムとペアリングしたスマホ上のアプリからも視覚的に行えるのだ。例えば Mesh のマイク On/Off 操作。押す都度 On と Off が切り替わるわけだが、現在どちらの状態にあるのかわからなくなることが多い。Off にしてあったのに、くしゃみが出そうだから操作したら On にしちまったい!というおバカな失敗をやらかす可能性がとても高い。その点アプリなら、Off にすると画面上のマイクアイコンに斜線が入るので現在の状態が視認できる。他にも本体だけではバッテリー残量が大雑把(高中低)にしか把握できないのが、アプリでは利用可能時間までわかる等、なかなか使い勝手が良い。
そのバッテリーについて。Mesh を使っていると減りはなかなか速い。朝から使っているとおやつ時には低バッテリー残量の警告音声が鳴る。モバイルバッテリーを持参して、ランチタイムにインカムを急速充電しておく等の工夫は必須。試しにインカムにモバイルバッテリーを接続した状態で走ってみたら、充電しながら普通に通信できたので、ランチタイムの充電をし忘れた場合にはそういう手もある。
最後に音声操作について。”Hey Sena” あるいは「ねーセナ」というWakeup Wordに続けて、「音楽再生」「音量アップ」等の予め定められたコマンドを発声することで操作ができる。発声に若干慣れが必要なようで、僕の場合「バッテリー残量」というコマンドはほぼ百発百中なのだが、「音楽再生」はなかなか認識してもらえない。もう少し修行を積もうと思う。
2) スマホ及び無線機との接続と Mesh 通信の併用
これまで利用していた Daytona DT-01 は、BTを2系統搭載し、スマホとアマチュア無線機を同時接続することができた。Sena 50Sは BT が1系統、Mesh が1系統なので、同じ使い方はできない。まあアマチュア無線機の代わりに Mesh 通信を使うので概ね問題は無いのだけど、今後バイクモービルをやる場合に備えて少し実験してみた。
結論から言うと、スマホとアマチュア無線機は排他利用になり、同時には使えない。
まず接続関係について。Sena 50S にはセカンダリーフォンという概念があり、プライマリーとしてBT接続するスマホとは別にもう1台の機器を予め接続登録しておくことができる。それを利用して無線機(YAESU FT-3D)をBT接続した。
先にスマホ(プライマリー)がBT接続されている状態でFT-3DのBTを有効にすると、インカム(Sena 50S)上ではスマホの音声が聴こえなくなって FT-3D の受信音が聴こえるようになる。
この状態でインカムのフォンボタン(筐体後方)またはジョグダイヤル1秒押しにより、無線機のPTT操作(交互に送受切り替え)を行える。
無線機のBT接続を切断すると、スマホとの接続が自動的に有効になり、スマホ音声が聴こえてくる。
以上のような感じなので、ナビ音声や音楽プレーヤーを聴きながら無線機を使うのは無理そう。
一方 Mesh は BT とは完全に独立しているので、BT でスマホあるいは無線機に接続している状態で Mesh 通信を行うことができる。僕の利用法としては、BTでナビ音声と音楽プレーヤーを聴きながら Mesh 通信するのがメインになりそう。
3) 音楽再生デバイスとして
マスツーではなくソロで走るときには大抵音楽を聴きながら乗るので、音楽再生のクオリティは僕にとって結構重要なポイント。
Daytona DT-01 には別売の高音質スピーカーを取り付けていた。それと比べても、Sena 50S の音楽再生品質は格段に高い。低音もきれいに聴こえる。
インカム自体の内蔵アンプのパワーも高そうで、音量を目一杯上げると耐えられないほどの大音量になる。DT-01 ではそこまでの大音量再生はできなかった。
リッチな良い音で音楽を聴くことができる、それだけでも買って良かったと感じる。
4) 使用して感じられた問題点
まだツーリングで2,3回使ってみただけだが、現時点で感じている問題点がいくつか。
まず Mesh だが、頻繁に通信が途切れる。症状としては Mesh 通信の受信音が数秒間何も聴こえなくなり、突然接続が回復?して受信音が流れ始めるという動作を数分程度の間隔で繰り返す。
何らかの設定、特に BT 音声とのマルチタスクあたりが怪しいかもと疑っているが未解決。
まあ致命的問題では無いのだが、先頭を走るリーダーからの指示が「次の信号で(ブチッ)・・・」てな感じで途切れてしまうので、結構「使えね~」感が強い。
次に、筐体がデカイので風切り音が結構大きい。Daytona DT-01 はその点でも優秀だった。厚みだけでももう少し改善されると良いのだが。
最後にやっぱりバッテリー持ちが辛い。Daytona DT-01 なら1泊2日のツーリングでも一度も充電せず使えたが、Sena 50S は日帰りツーでも途中充電が必須。いっそヘルメットの逆サイドにセカンドバッテリーを付けて増量できるようなオプションが欲しいところ。
以上、バイク乗りでアマチュア無線家の皆様への情報提供となれば。
僕にできることであれば実験等いたしますので、質問やコメント等お寄せくださいませ。
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