Yes – The Quest(2021)

ご長寿プログレ(なのか?)バンド Yes の7年ぶりのスタジオ新作を新年早々に入手したのでレビュー。
Chris Squire がこの世を去り、気ままな天使 Jon Anderson は ARW で別バージョンの Yes を営業中。
では本家 Yes を名乗るこっち側のメンバーはと言うと、
Steve Howe(g) / Alan White(ds) / Billy Sherwood(b) / Geoff Downes(kbd) / Jon Davison(vo)
という布陣。
ゲスト的に Jay Schellen(perc) が参加しているが、途中で Alan が腰を悪くして叩け無くなったので急遽お呼ばれしたらしい。Alan ももうお年だからなあ。
本作の目玉は、亡くなった Chris Squire のことを心底敬愛している Billy Sherwood が、まるで Chris が憑依したようなブリブリきらびやかなベースサウンドを鳴らしているところ。
白血病で倒れた Chris に代わって Yes のライブをやり遂げた Billy だけに、Chris 役をやらせたら天下一品。
それとアルバム全体のプロデュースを Steve Howe が担っている。
英国らしいのどかな田園的サウンド、しっとりしたオーケストレーション、クラシカルなギターサウンド。
音楽的統一感が一本貫かれており、安心して聴ける。
それにしてもだ。
以前 Billy Sherwood のプロジェクト The Prog Collective のレビューで書いた記憶があるのだが、Billy と Alan White や Jon Davison あたりが集って、「いつでも Yes として営業可能なレベルの素敵な Yes Music」を演奏している様を聞いて、あーこうしてオリジナルメンバーが誰もいなくなっても Yes は存続し得るのだなあという感慨を抱いたことがある。
もちろん本作では Steve Howe (彼ですら実はオリジナルメンバーでは無い)がご健在で大活躍されているのだが、それ以外の Billy を筆頭とした言わば二軍メンバー強力なサポートメンバーによる「Yes サウンドの伝統芸的継承」が十分に機能していて、もうこの先何があっても Yes は大丈夫という妙な気持ちになる。
King Crimson は Robert Fripp がいなくなれば成立しえず、The Flower Kings は Roine Stolt 不在では成立し得ない。
でも Yes は、Yes サウンドを心から愛し、なおかつ Yes 的な音楽語法を理解する音楽家がいれば成立し得るのだ。
その意味では既に Yes というのはバンド名ではなく、音楽のサブジャンル名か楽曲のスタイル名みたいなものだと思うぞ。
では長年の Yes ファンである僕が本作を大喜びで聴いたのかと言うと、実はそうでもない。
何故かと言うと、楽曲のレベルがとっても月並みなのだ。
Billy 作曲のものと Steve 作曲のものが半々くらいだが、特に Billy の曲はまったりし過ぎてあまり面白みは無い。
月並みなレベルの楽曲に、ベテランの Yes マン達が Yes 的サウンド、Yes 的フレーズ、Yes 的アイデアをトッピングして水準を押し上げている。
なので、細部を聴き込むとそれなりに満足感は得られるのだけど、音楽的感動までには至らない。
月初から1ヶ月、ほぼ毎日のように聴き込んでみたうえで、Yes ファンとしては愛すべき1枚ではあるが、記憶に残る1枚にはならないだろうなというのが僕なりの結論。

Tr.1 The Ice Bridge
作曲者のクレジットに Francis Monkman(ex. Curved Air) の名がある。
Geoff Downes が自分の持ち曲をベースにして Jon Davison とともに作った曲らしいのだが、Geoff が自分のアイデアと長年思い込んでいたものが実は Francis Monkman の曲(のパクリ?)だったらしく、クレジットしたらしい。
何にせよ円満解決して良かったね。
ブリリアントな Billy のベース、ディストーションをかけていつもより音数多めな Steve Howe のギター、いつも通り Jon Anderson そっくりな Jon Davison の歌声、安定した Alan のドラムス、職人仕事に徹する Geoff のキーボード。

Tr.2 Dare To Know
Steve Howe の曲。
最初聴いたときは、あまりにもまったりし過ぎて面白く思わなかったのだけど、聴き込むうちにじわじわと心にしみて来た。
そうだなあ、うまく言えないけれど、例えば And You And I からスリリングな展開を全部取り去り、「緊張と緩和」の緩和成分のみを抽出して、演奏スピードを御老体向けに遅めにして演奏するとこんな感じになるんじゃないかな。

Tr.5 The Western Edge
Billy Sherwood と Jon Davison の曲。
この曲あたりに最も、前述した「元の誰がいなくなっても伝統芸継承者がいれば Yes の音楽は存続し得る」感を感じる。
確かにこうやれば Yes サウンドになる。でも楽曲としては月並み。聴いて心地よいけどね。

Tr.7 Music To My Ears
Steve Howe の曲。
これもスリリングさは微塵も無いのだけど、聴けば聴くほどスルメのように味わいが出てくる佳曲。
サビの “Music To My Ears” を繰り返すところの溢れ出る哀愁、でもあまりドラマチックに盛り上げず、比較的淡々と上品に仕上げる。
曲の終わらせ方もお見事。

Tr.8 A Living Island
この後にボートラが3曲あるけど、一応これが最後の曲。
Geoff Downes と Jon Davison の曲。
これがなかなか素晴らしい楽曲。
全然 Yes 的ではない。Geoff Downes らしい、美しくちょっと切ないポップナンバーなのだよ。
でもそこに、Yes 的サウンドや数々のアイコンが散りばめられると何だかもう魔術のように Yes に他ならない楽曲になる。
Trevor Horn による Yes サウンドのでっちあげ方作り方を良く勉強しておられる。相方だけに。
あとどうでも良いことなんだけど、3:20 あたりからの Alan の細かいドラミングが、Pat Metheny Group の Last Train Home みたいでちょいとぐっとくるぞ。

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