Chambers, Berlin, Fiuczynski and Lavitz – Boston T Party(2006)

ぼーっと生きていたらBlog更新を1ヶ月近くしていなかった。
過去に何度かレビューを書こうか書くまいか迷ってきた作品を今こそレビューしようぞ。
(広くオススメできかねるアルバムなので迷ってきたのだが、考えてみればこのBlogで紹介しているアルバムの大半はそーゆーのばっかりだから、何の問題も無いことに気づいた。)

バンド名・プロジェクト名は特に無い。参加ミュージシャン名を順番に並べただけ。
ジャケット記載順に Dennis Chambers(ds)、Jeff Berlin(b)、David Fiuczynski(g)、T Lavitz(kbd) の4名なのだが、大半の曲を書いているのは Lavitz であるし、アルバムタイトルで “T” Party と言っているぐらいなので、事実上は T Lavitz がリーダーだと思われるよ。まあそのへんは実にどうでも良いのだが。

僕がこの作品を買った理由は、Jeff Berlin、T Lavitz が参加した4人組のフュージョンと聞いて、Players(T Lavitz、Jeff Berlin、Steve Smith、Scott Henderson) の再来を期待したから。
多分この作品を購入した人の3人に2人くらいは同様の理由じゃないかと思っている。
で、わくわくして聴いてみて・・・、しばし脱力してしまった。
Players のキレッキレの音世界は微塵も無く、ゆったりのんびりくつろいだ大人の音世界。
そこに加わるそこはかとないおバカな香り。
一部のおバカっぽい曲名や、Fiuczynski の変なフレーズ。
そうね、Players と言うよりもむしろ、これは Uncle Moe だな。
で、正直言って、購入してからしばらくはあまり聴いていなかったのだけど、ときどき引っ張り出して聴き込むうちにじわじわと好きになってきた。
業界屈指のテクニックを誇るメンバーがテクニカルプレイを封印して?奏でる、変な余裕と無駄な高品質に満ちたそこはかとなくおバカっぽいフュージョン。ニヤニヤしながら聴くのが楽しいよ。

Tr.1 D’funk’d
ちょっとハイテクフュージョン風のかっこいいイントロで期待を持たせるが、Fiuczynski の変なギターが始まるとすぐに醸し出されるおバカっぽさ。
曲は Lavitz が書いているので、昔のかっこいいフュージョン(Players とか Dregs とか)の成分はかなり多めなのね。
ここでもしギターを Scott Henderson が弾いていたなら「かっこよさ100」となるだろうし、Brett Garsed だったら「かっこよさ70/おバカっぽさ30」くらいになるのだろうが、Fiuczynskiの場合は「かっこよさ15/おバカっぽさ85」くらいにまで振り切れているので、そこを楽しめるかどうかで本作品をお勧めできるかどうかが決まる感じだ。

Tr.2 (Great) Ball of Issues
「問題だらけ」みたいな慣用句と、昔の有名曲 Great Ball of Fire をかけたのかな?
Tr.1 はさすがに初っ端なのでキャッチーな仕上がりだったけど、2曲目はもう、お酒を飲みながらゆったり聴いてね(はあと)みたいなモードだ。
ところがだ!デニチェンのやたら細かい技巧的な刻みのドラミング、饒舌に歌う Berlin のベース、時に Berlin とユニゾンしたり付かず離れず無茶苦茶細かいワザを入れてくる Lavitz のバッキング、一人ニワトリの鳴き声みたいな変音で歌う Fiuczynski のギターと、聴けば聴くほどこれはもう素晴らしく高品質な演奏。
このあたりを聴き込んでいくと、だんだんじわじわ来るのね。

Tr.3 Around About Way
前曲と打って変わってスリリングな曲。
でも Fiuczynski は相変わらず、ニワトリの鳴き声みたいな変な音でフレーズを奏でる(そこに Lavitz も変な音でユニゾン)ので、「おバカっぽさ>かっこよさ」なのは変わらず。
中盤、ニワトリというよりも変なネコみたいな鳴き声で Fiuczynski の長めのソロ(なのか?)。
うーん、80年代フュージョンを高度に進化させ続けると、バカテクコミックバンドになっていくのか。
楽しいなあ。

Tr.4 Hate the Blues…(But Here’s One Anyway)
Jeff Berlin の作品。
Berlin がきれいな音で、リードベース的に美しいフレーズを弾きまくるのだが、曲名の通りいわゆる昔っぽいブルーズなのだ。
若い頃は絶対「つまんね~、だせ~」と敬遠していたやつ。
それを楽しそうに弾くのね。まあそういう曲だ。
同業(ベース)の Stuart Hamm の Radio Free Albemuth(1988) というソロアルバムに、”Country Music (A Night in Hell)” という凄まじい曲があって、ハイテクロック・ジャズベーシストの Stu が地方巡業に行くと「カントリーをやれ~」と客席から強く要求されて仕方なくおバカっぽいカントリーを弾き始める(バンジョーみたいな超高速フレーズをベースで軽々と弾くという物凄くハイテクな演奏をおバカっぽくやる)というもの。それを思い出してつい笑ってしまう。
(因みに上述の Stu の曲だが、演奏が終わってほっとしているところに、客席から「今度はポルカをやれ~」というオチがつく。)

Tr.6 Emotional Squalor
本アルバムの中では比較的今風の曲。これも Lavitz 作。
デニチェンが、「これもお仕事」てな姿勢で流して叩いている感じで、誰かのソロを後ろから煽り立てたり、殺気を入れてきたり、そういうのが一切微塵も無い。超まったりだ。
Fiuczynski の変音ソロの後ろで、デニチェンと Berlin が、全くやる気を感じさせないバッキングを続けるのがもう何だか妙におかしくて、ついつい聴いてしまう。
もうね、高齢の名人噺家がお昼の高座でゆる~く流している感じ。これが楽しくなってくるとはまる。
エンディング前に、テープ回転速度落ち~逆回転という全く必要性の無い(笑)オチあり。やっぱり、この人達、高度に進化したコミックバンドなのね。

Tr.7 Deff 184
前曲の逆回転オチから、今度はいきなりやる気を見せたハイテクフュージョン。
Lavitz/Berlin/Chambers の共作。
本作をお買い上げした3名につき2名くらいは、本来こういうのを期待したはず(根拠ゼロ)。
「おー、ついにキター」と思わせておいて、わずか1:47で謎のハイテクフュージョンは終わる。

Tr.8 Last Trane
前曲が Fiuczynski 抜きで盛り上がったので、今度はフューちゃんメインの曲。
作曲もフューちゃん。
ハイテクもスリルもあんまり無し。
期待感を盛り上げておいて、やや肩透かしに終わる。
でもデニチェンのバッキングとか、かなり名人芸なことを細かくこっそりやっている。
高度な芸風(コミックバンドとして)だなあ。

Tr.10 Foxy Morons
最後は Berlin 作の、いかにも Berlin らしい、爽やかで昔っぽいフュージョン。
ちょっと Dregs っぽいかな。
曲名は「色っぽくてオツム弱い娘」みたいな感じか。
3:06あたりから Fiuczynski の長いソロ。暑っ苦しい音で、ねちっこいフレーズを弾く。全く爽やかさは無い。
バックの3名が、もう淡々と爽やかなバッキングに徹し、フロントでフューちゃんが意地になってねちっこいフレーズを弾き続けるこの時間が何だか楽しい。
そして最後は爽やかなメインテーマをフューちゃんが奏でて、そのままフェードアウトしていくのね。
もう何をやりたいのか全然わからないのだけど、妙におかしくて楽しい、そういうアルバム。

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