Conception – State of Deception(2020)

偉大なシンガー Roy Khan(vo) の復活である。
彼をご存知の方にはそれだけで良し。
彼をご存じない方には、まあ何を書いても上手く伝わらないかも。(最初から努力を放棄・・・)
Norway の Prog Metal(なのかな?)バンド Conception は、1990年代に活躍し、それなりに売れて、確か来日公演もしてくれたはず。
看板ボーカリストの Roy Khan は、その後米国の Power Metal バンドである Kamelot に参加し数々の歴史的名作を送り出すが、いわゆる燃え尽き症候群のために、2011年にバンドを脱退したばかりか音楽界から完全にリタイアしてしまい、ノルウェーの教会で静かな日々を送っていた。その後、何が彼を再び再燃焼させたのかそのドラマは未だ語られていないのだが、2018年に旧友とともに Conception を再結成し、EP(My Dark Symphony) をリリース。そして今年2020年に、フルレンスアルバムとして本作をリリースしてくれた次第。

Roy Khan の特徴は、本格的な声楽を学んで身につけた完璧なボイスコントロール、深く豊かな声量、ちょっと日本の演歌歌手にも通じるようなエモーショナルな歌いまわし(コブシ的な)、そして素晴らしい作曲能力にある。ロック界には、才能と表現力に恵まれた天才的ボーカリストは多々いるが、僕にとって Freddie Mercury と Roy Khan は別格の位置にある。そんな素晴らしいボーカリストがリタイヤしたのはとても残念だったので、この度の大復活は本当に心底嬉しい。

さて、本作のメンバーであるが、Ingar Amlien(b) / Arve Heimdal(ds) / Tore Østby(g) / Roy Khan(vo) の4名が基本。
曲作りの大半は、Tore と Roy の手による。
その他、曲毎のゲストとして、Michael Rodenberg(kbd)、Lars Christian Narum(org, mellotron)、Aurora Amalie Heimdal(vo)、そして Amaranthe の Elize Ryd(vo) が一曲だけ参加。

僕はオリジナルの Conception については名前くらいしか知らなかったので、本作についてもあまり多くを語ることはできないのだが、一度は燃え尽き、敬虔なクリスチャンとして静かな生活を送った男が作る楽曲としては、ちょっと驚くほどダークでゴシックなエネルギーと怒りに満ちている感がある。Spock’s Beard を脱退した Neal Morse が明るくポジティブな音楽で伝道活動を続けているのとは対照的だ。

Tr.2 Of Raven and Pigs
短いインストのオープニング Tr.1 In: Deceptin で、壮大かつゴシックにアルバムが始まり、そのトーンのまま本曲がスタートする。
そして Roy の歌声は、全くブランクを感じさせない。
歌詞の内容が暗く過激なのに少々驚いた。Kamelot の March of Mephisto を連想。Roy は、あの手の楽曲をもうやりたくないのかなと思っていたのだが。

Tr.3 Waywardly Broken
暗さを増す世界に立ち向かう、そのために私はいる、留まる義務があると歌う。
このあたりに Roy の復活のドラマが隠されていそうだ。

Tr.5 The Mansion
切ないバラード。Kamelot の House on a Hill をちょっと思い出す。
Amaranthe の Elyze 嬢がゲスト参加。これはライブで聴きたい。

Tr.8 She Dragoon
歌詞を読んで心配になり、Roy と奥さん(Kamelot の DVD にも登場した Elisabeth)がうまく行っているのか、つい検索してしまったほど。(杞憂でした、笑)
この曲と Tr.2 は、ドラムス担当の Arve Heimdal が書いている。なかなか素晴らしい才能。疾走感が心地よい。

Tr.9 Feather Moves
この曲は、2018年のEPからシングルリリースされた Re:conception の裏面(って今は呼ばないかな)に収録されたものをリマスターした模様。ds と vo 以外の楽器(g, b, kbd)は Tore が演奏しているようだ。Tr.1-8 の高エネルギーな流れをここで鎮めてしっとりと終わるのは良いね。

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