Trevor Rabin – Rio(2023)

2023/10/6日にリリースされたばかりの新譜をレビュー。
古くは 90125 Yesで、最近では映画音楽制作者として大活躍な Trevor Rabin のソロアルバム。
この人は、Discogs等を見る限り随分と数多くのアルバムをリリースしているのだけど、ソロ作品となると意外と少なく、ライブやコンピレーションを除くと本作でようやく6枚目くらい。
23年ぶりのリリースと騒がれた前作の Jacaranda が2012年リリースなので、そこからまた11年の年月が経っている。
では寡作なのかというと全くそんなことはなくて、最近は映画音楽の世界で超売れっ子なのでなかなかソロ制作の時間が捻出できないんだろうな、きっと。

さて本作の印象であるが、マルチインスツルメント奏者としての Trevor は本作でも健在で、ギター、キーボード、ボーカル、一部の曲ではドラムスまで、要するにほとんど全ての楽器を一人で演奏しており、何を演奏させても腕前は超一流。
そして楽曲のバリエーションが、旧作以上に拡がった感があり、元気なロックからカントリー、そして何とボーカリーズ(アカペラコーラス)までやってくれている。
本人以外の演奏者は一部の曲で Lou Molino(ds) 、Vinnie Colaiuta(ds)、Charlie Bisharat(vln)、Dante Marchi(back vo)、Liz Constanthe(back vo) がゲスト参加している。Lou と Vinnie は前作 Jacaranda にもゲスト参加していたので、常連と言えば常連だ。(11年前だが)

Tr.1 Big Mistakes
Trevorが在籍した頃の Yes にも通じる、明るくポップで雄大な曲。
(プログレ感はほぼ無いが)
何だかいつもの Trevor 節なので、全然新鮮味は無いのだけどファンとしては安心感がある。
後半に入っての「ナーナーナナナ」なコーラスは、もうシニアなファンとしては笑って聴くしかない。

Tr.2 Push
待ってましたの Vinnie Colaiuta(ds) 登場。
バックトラックは全部 Trevor だが、更に Trevor の Mandolin と、Charlie Bisharat の Violin がトッピングされている。
曲は複雑でドラマチック、演奏は皆さん超絶技巧、そして Vinnie のドラミングが熱い。
Yes本家の方は Steve Howe メインになったためかすっかりまったりしちまったが、90125時代を支えた Trevor のソロの方がむしろ Yes らしさを感じるよ。

Tr.3 Oklahoma
先のTr.2とこの曲あたりが本作の一番の聴き所かなと思う。
ブローシャーに書かれている Trevor のトラック毎一言によると、この曲はオクラホマシティの連邦政府爆破事件を念頭に、破壊への憎悪と命の儚さについて書いた曲らしい。
雄大なオーケストレーションのアレンジが素晴らしく、ちょっと Peter Gabriel なんかを連想した。

Tr.6 Goodbye
dsも含めて全部 Trevor が演奏しているカントリー(!)ナンバー。
もちろんカントリーには不可欠の超高速 Banjo も演奏しているよ。
カントリーなパートの間に挟まれるサビ部分はラウドなロック調なので、切り替わりが何だかコントみたいに面白い。

Tr.7 Tumbleweed
この曲は驚くぞ~。
Jacob Collier か、はたまた Moon Safari かってなくらいの分厚く凄いボーカリーズで始まる。
楽器が入ってきてゴージャスな Jazz になり、最後はお見事な Jazz ギターっぽいコードソロで終わる。
いやあ才人だね。

Tr.10 Toxic
アルバム最後の曲。
ds も含め全楽器を Trevor が演奏。
導入部の歪ませたギターが何だか Jeff Beck っぽいなあと聴いていると、ラウドなドラムスが鳴り響き、Tony Hymas ~ Andy Wright 期の Jeff Beck みたいだ。

Tr.11 Spek &Polly[bonus]
僕が購入したのは Limited Edition なのでボートラが3曲入っている。
一つ目は Trevor の Piano と Charlie Bisharat の Violin による美しい小曲。

Tr.12 Fragile(Demo)[bonus]
ボートラ2曲目は、Trevor 一人で全部演奏しているデモ曲。
何かのアルバムに入れるために作ったデモなんだろうけど、もうそのままシングルリリースできるレベルの完全な仕上がり。
まあ良く聴くと、ドラムスはプログラミングで単調だし、パッドやクワイヤもシンプルで、全体的にはいかにも宅録っぽい感じがしなくもない。

Tr.13 Georgia[bonus]
曲自体はあの有名なジョージア。米国人が大好きなアレ。
Trevor はギターの多重録音で、超絶技巧オンパレード。とても楽しそうに弾いている。

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