Riverside – Out of Myself(2004)

Poland のプログレバンド、Riverside のデビューアルバム。
まず初作でこれほどの完成度、構成美、そして風格すら感じられるのが凄い。このバンドはこの後次々と名作をものしていくわけだが、基本的路線は変わらず、最初から完成されていた感があるね。
メンバーは、Mariusz Duda(vo, b, a.g) / Piotr Kozieradzki(ds, perc) / Piotr Grudziński(g) / Jacek Melnicki(kbd) という方々。
元々友人同士の Piotr x 2 + Jacek の3名がドライブしているときに今度一緒にバンドやろうぜということで盛り上がり、b を探して Mariusz に声かけ、セッションしてみたら良い感じ。Mariusz が歌ってみたらこれも良い感じなので、以後彼は vo+b というポジションが固定、ってなスタートだったらしい。Mariusz 以外の3名はプログレ大好き、一方 Mariusz はどちらかというと Electronic, Ambient, Experimental 系が好きらしい。
さて、彼らの音楽であるが、Pink Floyd から Porcupine Tree へ脈々と続く切なく美しいしっとり系(あるいは陰鬱系)の流れがまず本流としてあって、現代のプログレバンドが当然影響を受けている Dream Theater のテクニカルな曲作りといううねりも加わる。そこに、Mariusz の好むユーロテクノのクールな流れが表層に流入してできた大河が Riverside の音だ。(無理やり川に引っかけてみたのでわかりづらい・・・)

Tr.1 The Same River
ラジオのSE、そして暗い霧の中から物憂く立ち上がってくるシンセパッドと 続く g と b、まるで Pink Floyd の Shine on You Crazy Diamond のように2分強かけてゆっくり曲のムードを作ってからおもむろに g の特徴的リフが始まる。Piotr(ds) のシンバルワークが美しい。
4:43 頃からテンポが変わり、Piotr(g) の伸びやかな g がリード。
6:34 頃から再びテンポが変わり、Mariusz の vo がリード。彼の b リフもなかなか素晴らしい。
10:54 頃、 Piotr(g) のそれはそれは美しいソロ。David Gilmour のモノマネでは無いのだが、ロングトーンを効果的に活かすフレージングと、存在感のある音から、どうしても連想してしまうね。それにしても、デビュー作でこの堂々たる風格は凄い。

Tr.2 Out of Myself
アルバムタイトル曲。
ここから(あるいは自分自身から)出してくれ、出たい~、という歌詞なのだが、Poland という国が辿った歴史や、恐らく彼らが子供の頃に見聞きしたであろう不安定な日常なんかを想像するに、じわじわと迫ってくる感じがある。

Tr.3 I Believe
本作全体的に、Mariusz の音楽性がキーになっている感はあるのだが、この曲は特に彼の個性を感じる。メタル成分はほぼ無く、アコギと vo がメインだ。
曲調的に、TransAtlantic の We All Need Some Light (S.M.P.T.E, 2000) あたりを思い出す。しっとり切なく美しい。

Tr.4 Reality Dream
曲調ががらりと変わって、Electronic なシンセリードと、Dream Thater 的なキメキメのリフとユニゾン。でも3:09あたりからチルアウト的になるのがいかにも欧州的で良いね。

Tr.5 Loose Heart
Mariusz の美しい声を生かしたボーカルナンバー。そして Piotr(g) が時折散りばめる Gilmour 節。もうこれは確信犯でやっているのでしょう。本当に好きなんだろうね。

Tr.8 The Curtain Falls
前半はボーカルメインで進行。歌詞はまあ人生の幕が降りるってやつだ。
3:09頃、幕が降りてから、インストパートになる。g にディレイをかけて、1拍半遅れで重ねるやつ(Gilmour 師匠や U2 の The Edge が良く使う)をさり気なくほんの少しだけ入れたり、何かもう態度が大人だね。
ちょっとセッション的に進むが、散漫な感じは全くせず。

Tr.9 OK
前曲がアルバム終曲っぽい雰囲気なのだが、更にここでチルアウトっぽい曲を入れてくるのが、欧州っぽいな。しかも全てを優しく肯定する歌詞だ。悲惨な日常を経てきた国民だからこそ、今はもう大丈夫だよと言えるのだろう。
最後に長い無音(1分近く続く)が挿入された後、Mariusz の詠唱で静かに余韻を残して終わる。アメリカあたりのバンドで、最後に無音を挟んでから、ラッパとか吹き鳴らしてみんな爆笑と大騒ぎで終わるって奴があるが、彼らはそういうおバカなことはしない。大人なんだね。

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