
随分長いこと愛聴しているのにレビューしていなかったアルバムを発見したので、今こそレビュー。
米国の舞踏家 Twyla Tharp のダンス作品 The Catherine Wheel のために David Byrne が作曲した音楽をまとめたアルバムなんだが、リリースには2種類あり、”The Songs From ~”という名称の11曲入り抜粋バージョンと、”The Complete Score From ~” という名称の23曲入りフルバージョンがあるのでご注意を。
1981年というと、その前年に Talking Heads の歴史的名作アルバム “Remain in Light” が発表され、まさに David Byrne が飛ぶ鳥を落とす勢いというか、音楽以外も含めたアーチスト達から熱視線を浴びまくっていた頃。
ずーっと時代を下って2018年頃に David Byrne 自身が、音楽とダンスが融合した素晴らしい舞台芸術 “American Utopia” を制作し、これは日本でも映画として劇場公開されたから御覧になった人も多いのでは。
つまり David Byrne の制作する音楽というのは、ダンス(現代的舞踏)と相性が良いのだよ。
その原点を見る(聴く)ことができるのが本作なのだ。
なお、ダンス(映像)については、YouTube等でフルセットを無料で見ることができるので、ご興味ある方は是非。
まず本作の音楽性について。
舞踏のための音楽なんて書くと身構える人もいるかもしれないが、安心してお聴きくだされ。
Talking Heads とか好きな人ならきっと気に入るタイプの、ちょっとひねくれたPopな音楽。
1曲あたり2,3分の短めの曲が並んでいて、次々と場面展開していくので、曲を集めたアルバムではなく全体が一本の映像作品のサウンドトラックになっているのが良くわかる。
さて参加ミュージシャンだが、中心人物は当然ながら David Byrne ご本人。
大半の作曲(一部は Brian Eno や John Chernoff 作)と、大多数の楽器を自ら演奏している。
サポートミュージシャンとして全体を通して参加しているのは John Chernoff(perc) と Yogi Horton(ds) あたり。あとは曲毎に Brian Eno(syn)、Adrian Belew(変態g^^;)、Headsの盟友 Jerry Harrison(kbd,perc)、他。
僕個人としては、Soul 界の引っ張りだこドラマーだった Yogi Horton の絶頂期のスティック捌きを味わえるのがなかなか味わい深い。彼は本作の6年後にホテルから転落死してしまう。
Tr.1 Light Bath
最初と最後(Tr.23)は同じ曲で始まり終わる。
クレジットでは triggered fultes と書かれているのだが、どういうカラクリなんだろ。
Tr.2 His Wife Refused
タイトなリズム隊(Yogi Horton と David Byrne)、シャープなカッティングg(David)、その上で浮遊する楽し気なMini Moog(Bernie Worrell)、更に南洋気分を盛り上げるまるで Steel Drum みたいなg(Adrian Belew)と、もう最初から芸達者大集合。
そして、David Byrne が歌う、意味が良くわからないんだが緊迫感溢れる不思議な歌詞。
この曲で一気に作品世界に連れ込まれる。
Tr.5 Two Soldiers
これは Brian Eno の作品。
vo 無しのインスト曲。
聴きどころは一杯あるんだが、まずは Yogi Horton のスリリングなドラミングを良く聴いて欲しい。
そして Eno によるいつものピヨピヨ、ビュンビュンな未来サウンド。
不気味でスリリング。
曲はノンストップでそのまま次の Tr.6 Under The Mountain に繋がっていく。
出来る限り Gapless 再生できるプレーヤーで聴いてね。
Tr.8 The Red House
Yogi、Brian、David 3人の演奏。
人声がエフェクト的に入っているが、サンプラーで鳴らしているのだろう。
中東で高い塔から発声されるコーランの詠唱みたいなユニークな効果を出している。
Tr.18 Big Business
これは John Chernoff の作品なんだが、とても Heads 感というか David Byrne 感が強いので面白いよ。
進行しないワンコードのバックトラック(Yogi, David)の上で、John Chernoff の g と Bernie Worrell の clavinet がシンプルなフレーズを繰り返す。
つまり方法論としては、Remain in Light と同じなのだ。
Tr.21 What A Day That Was
ここから大団円のエンディングに向かう。
スリリングでタイトなバックトラックの上で、南洋気分で浮遊感のあるシンセと、相変わらず何を言っているのか良くわからない(韻を踏むためには意味は二の次らしいぞ) David Byrne のボーカルが楽しい。
Tr.22 Big Blue Plymouth (Eye Wide Open)
前曲の最後のコーラス繰り返しからそのままこの曲に突入。
この曲は楽しいよ~。僕のお気に入り。
思わず両手がフラダンスみたいにフラフラしてくるね。
ゲストvo(Susan Halloran)を迎えて分厚いバックコーラス。
その上で David Byrne 節が炸裂。
気分が最高に盛り上がったところで、最後に Light Bath が再演されて本作は終わる。
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