Delain – The Human Contradiction(2014)

この3か月ほど Snarky Puppy 関連ばかり集中して聴いていて、レビューが全然進まず。なので、ちょっと箸休め(?)に軽いところも聴きなおしてみる。
本作はオランダのシンフォメタルバンド Delain のスタジオ4作目。
このシンフォメタルというサブジャンルというかムーブメントは、Therion、Nightwish、Within Temptation あたりが元祖ということになるのかな。Nightwish の楽曲のほとんどを書いているリーダーの Tuomas Holopainen は、Hans Zimmer と Lisa Gerrard の影響を公言していて映画のグラディエーターのサウンドトラックが大好きらしいが、このハリウッド的な”盛り上がる”シンフォサウンドに、超絶技巧のオペラ唱法を乗せるのが、彼らが築き上げたフォーマットと言える。オランダの Within Temtaion も、シンフォニックで壮大な楽曲を製作する Robert Westerholt(g) と、オペラチックに歌う Sharon den Adel の2名が中心である。この Robert の弟である Martijn Westerholt(kbd) が立ち上げたバンドが Delain だ。
面白いのは、Martijn が新バンドを立ち上げるにあたって見つけてきた天才ボーカル娘(当時)Charlotte Wessels の歌い方が、オペラ的ではなく、普通のポップ唱法だったことだ。勿論天才ボーカル娘なので、音程コントロールも完璧、音域も無茶苦茶広く、声も素晴らしい。どうやら本式に声楽を習った人らしい。北欧の雄 Nightwish は、メインボーカルをオペラチックな Tarja Turunen からポップ唱法の Anette Olzon に切り替えて不評を買い、オペラチックに歌える Floor Jansen に切り替えて人気を戻した経緯がある。ところが、Delain は Charlotte のガーリーポップな歌声と壮大なシンフォを組み合わせるというやり方で意表をついて(?)成功してしまった。1リスナー的に言えるのは、オペラ声は聴いていて飽きやすく、ポップ声は意外と飽きないということかな。
歴史の授業が長くなってしまったので、簡単にメンバーを書く。
Martijn Westerholt(kbd)、Charlotte Wessels(vo)、Timo Somers(g)、Otto Schimmelpenninck van der Oije(b)、Sander Zoer(ds) というラインナップ。曲は Martijn が書き、詩は Charlotte が書いている。b の Otto はなんと本物の男爵だ。一部曲ではゲストボーカルに Marco Hietala (Nightwish) 、Alissa White-Gluz (Arch Enemy)、Georg Neuhauser (Serenity) 等が参加している。Marco は Delain のライブにも度々同行しており、ゲストミュージシャンというよりも若い後継者を見守る親心を感じる。

Tr.1 Here Comes the Vultures
アルバムの最初の曲は、ミステリアスな曲調と甘い歌声から始まる。この曲を Nightwish あたりが演奏すると本格的に怖いゴシックホラー曲になってしまうのだろうが、Charlotte が歌うので、コワ可愛い感じになるというこのバランスが、このバンドの売りだな。

Tr.2 Your Body Is a Battleground
体内で化学物質と免疫機構が戦いを繰り広げるという面白い曲。Charlotte は文学好きらしく、時々SFチックな詩も書く。

Tr.6 Sing to Me
切なくドラマチックな佳曲だ。
サビとなる男女ボーカル掛け合いで “sing to me” をリフレインするパートが出色の出来で、何だか短編映画を見たような深い満足感を覚える。
さて凄いのが 4:12~4:16 あたりの、Martijn 先生によるオーケストレーションアレンジだ。一旦曲調が静かになった後、終結部の大盛り上がりに向かうブリッジ的なパートなんだが、本稿の冒頭に書いた”ハリウッド的”云々がまさにこれだ。音楽的に盛り上げるためのテクニック、使いすぎるとうるさいだけになるので、ここぞというところで一発だけ使うのが素敵。
なお、この曲の Promotion Video がこれまた素晴らしく良くできていて、ゲストボーカルの Marco Hietala による”顔の名演技”を見ることができる。 この人は、”実在するガンダルフ”等とも呼ばれているが、本当に役者をやらせてみたい。

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