Planet X – Moon Babies(2002)

Virgil Donati(ds) / Derek Sherinian(kbd) / Tony McAlpine(g) によるハードメタルフュージョンプロジェクトの2作目。
1作目の Universe(2000) と同じメンバーなのだが、Tony の作曲数が減り、その分 Virgil の書いた曲が増えた。次回作 Quantum(2007) では Tony が抜けて、ほとんど Virgil のプロジェクトになっていくのだが、その途上。
なお、ベースだけは曲毎にゲストを呼んでいるが、その顔ぶれも豪華だ。
後、プロデューサーとして、ご自身がフュージョン界の名ドラマー Simon Phillips が参加しているよ。

Virgil は、オーストラリア出身のバカテクドラマー。
「変拍子」という言葉が恥ずかしくなって裸足で逃げ出すような、凄まじく複雑なリズムを平気な顔で叩き出す。
加えて作曲・編曲能力が高く、自身のソロではオーケストラのスコアを書いてドラムコンチェルトをやっているぞ。

Derek はご存知、元 Dream Theater の人。
脱退してから、Planet X、Sons of Apollo、Black Country Communion と、実に僕の好みを押さえた活動ばかりしてくれていて、おかげで財布の紐が緩みっぱなしだ。

Tony は Shrapnel レーベル出身のネオクラ・メタル超速弾きの人であったが、ネオクラブーム終焉を見越したようにハードフュージョン系に営業領域をシフトして成功。デニチェンと組んだ(組ませていただいた)CABは結構売れたんじゃないかな。

さて本作であるが、滅茶苦茶テクニカルだ。口ずさめるメロディーだの、叙情的ハーモニーだの、幻想的なシンフォサウンドだの、そういう甘っちょろい要素は微塵も無し。こういう複雑な曲を書ける能力も凄いと思うし、その譜面を渡されてぱぱっと演奏してしまう演奏力も凄まじいと思う。

Tr.1 Moonbabies
Derek と Virgil の作によるアルバムタイトル曲。
ゲスト b は、Dave Weckl との共演歴が長い Tom Kennedy だ。
Derek らしいSFチックな感じで始まり、幾何学的高速ユニゾンリフ+Virgil 乱れ打ちが聴きどころ。
その後3:28からの Tony の g ソロはやや短いが、スイープの教科書のような滑らかで美しいフレージング。
4:29 から Tom の b ソロも用意されているが、これも短い。

Tr.2 The Noble Savage
Derek / Virgil /Tony 3名での共作。
軽くシャッフルしてジャズセッション風・・・と思わせて、轟音リフが始まる。
クレジット上はゲスト b の記載が無いのだが、音は聴こえるな。もしかして Billy かな。

Tr.3 Ataraxia
Virgil の曲なので、リズムが無茶苦茶複雑。
ゲスト b は、Allan Holdsworth との共演で有名な Jimmy Johnson だ。
曲の後半 Virgil の見せ場多し。

Tr.5 Micronesia
Virgil 作。
ゲスト b は Tom Kennedy だが、一部特別ゲストの Billy Sheehan が弾いている。
いかにも Virgil の曲。リズム面の仕掛けが多くて楽しい。

Tr.9 Midnight Bell
Virgil 作。
ゲスト b は、Jimmy Johnson。
Alien Hip-hop みたいな感じの、細かい刻みと大きなうねりが共存するリズム。

Tr.10 Ignotus Per Ignotium
最後の曲も Virgil 作。何だか Derek の書く曲っぽい雰囲気なのだけどね。
ゲスト b は Tom Kennedy。
中間部の Tony の g ソロは一聴の価値あり。
6:40くらいで一旦曲は終了し、しばらく無音区間が続いた後、8:47あたりからシンセをバックにアコギの短いソロが入り、で唐突に終わる。ボーナス扱いなのかもしれないけど、意図が謎だ。

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