お気に入りの轟音系・音響系・ポストなんちゃら系・シカゴ系バンドの新作をレビュー。
いやもうね、彼らの音楽にジャンル名を付けてもあんまり意味が無いと思いますよ。
Russian Circles は、Mike Sullivan(g)、Dave Turncrantz(ds)、Brian Cook(b) によるインストゥルメンタルロックトリオ。
過去のアルバムでは女性ゲストボーカルを招いたり、叙情的かつ暖かな音像を志向した時期もあったが、本作では最も彼ららしいフォーマット、すなわち無慈悲に鳴り響く分厚い音の壁の上でギターのトップノートが時折奏でる情緒的なメロディーの欠片が現れるという形式を貫いている。
僕が好きなタイプのロックバンドには、「空間を異化する作用」の強い人達が多いのだが、彼らもまさにそう。日没頃の山道なんかをバイクで駆けているときに彼らの音楽を聴くと、あたりの光景が異化されて、この世のものと思えない美しさを味わえたりするのでオススメ。
Tr.1 Tupilak
リズムを刻むギターの音から始まる。
このバンドの場合、ギターはまずはリズム楽器の役割を担う。そのうえで、轟音コードを鳴らしつつ、トップノートで断片的なメロディーを提示するのだから、一人三役の大活躍。
そして重低音のベースと、饒舌なドラムスによるリズム隊の堅牢さ。
例えが古臭くて申し訳ないのだが、最初期の King Crimson や、Tool あたりのヘヴィネスに通じる音。でもこれだけの密度の音響をたった3名で鳴らしているところが信じられない。
Tr.2 Conduit
ギターリフだけ取り上げるとそこらのメタルバンドで良くある形なんだけど、リズム隊の音質が独特でメタル的では無いんだよね。
やたらとヘヴィーなんだけど生っぽい。
ちょいと Tool とか想起させる。
Tr.3 Gnosis
アルバムタイトル曲。
彼らの音楽にアルバム名や曲名がどれほど意味を有しているのかわからないのだが、ちょっとグッとくる曲名。
前2曲とは異なり少しエキゾチックさを感じる悲しげなメロディーと、ゆったり進むリズム。
エモいとか、ポストなんちゃらとか呼ばれる所以か。
Tr.5 Ó Braonáin
曲名はアイリッシュの人名だと思うが・・・。
ヘヴィーな曲に挟まれた悲しげなインタールード。
ギターソロなんだけど、深くエコーをかけて、訥々とつぶやくように演奏する。
Tr.6 Betrayal
見事なまでの静から動への転換。
ドラマを感じる曲名。
轟音コードリフをルーパーで進行させつつ、上に別のコードを重ねて色を付けたりするのがカッコよろし。これをライブでもやるんだから凄いよね。
Tr.7 Bloom
無慈悲な轟音ロックの後に、こういう叙情的で美しい曲を鳴らすのはずるいなあ。泣けてくる。
この果てしなく拡がる音響を、キーボードレスでやっているんだよ。
ギターだけでも4本くらい重ねている感じなんだけど、ライブではディレイとルーパーで見事に再現するらしいので、一度見てみたいなあ。
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