何を今更な気もするが、Chad Wackerman のソロ初作だ。
レーベルは今は亡きCMP、JazzとRockの狭間の変な人達を中心に出していた変り種レーベル。
Chad は、Frank Zappa バンドのdsを Terry Bozzio の後継者として担当し、同じくらい技巧的かつ変態的な演奏で世間を驚かせたんだけど、見た目がとっつぁん坊やみたいで Terry のような華は無かったなあ。その後、Zappa 同門の Steve Vai と一緒にやったり、Allan Holdsworth 師匠とずーっと一緒にやったり、そういうキャリアの人だ。Zappa スクール出身なので、当然のように作曲力も高度で、読譜もばっちり。
本作の共演者は、Allan Holdsworth(g) / Jimmy Johnson(b) / Jim Cox(kbd) といった面子。Jimmy は Allan との共演歴も豊富な技巧派ベース。Jim Cox はどちらかというとメジャーなポピュラーアーティスト(Elton Johnとかね)のバックサポート経験が多い人みたいだが良く知らん。
さて本作を一言で言えば、Allan Holdsworth 師匠のソロアルバムに Chad が客演している感じだ。つまり主客逆転。曲のほとんどを Chad が書いているんだけど、曲想がもう思いっきり師匠命のアラホ節だし、師匠は師匠で弟子のソロなのに何の遠慮なく、気持ちよく全開で弾きまくっておられる。技巧派ドラマーで、作曲能力の高い人の作品って言うと、Virgil Donati、Gary Husband、Terry Bozzio なんかが思い浮かぶが、彼らに比べると Chad の曲はあまり特徴が感じられず、そのために師匠のギター音に全部持っていかれている。まあそうなので、逆に本作を Allan 師匠中心に聴くならば、Secrets(1989)からWardenclyfe Tower(1992)のあたりの時期の師匠の音が聴けるので面白いよ。あるいは師匠の音に敢えて耳をふさぎ、Chad のドラミングにひたすら集中して聴き続けるという難行・苦行もある意味面白いんだが、なぜ Chad のソロアルバムなのにそんな苦労をしないといけないのか良くわからなくなるな。
Tr.1 Holiday Insane
もうのっけから Allan 師匠っぽい曲想の曲。
スリリングで、しかし進行も解決もしないコード。
そして満を持して弾きまくる師匠のソロ。
時々ドラムの音に深いエコーを短時間かけてパッと切ったり、師匠のソロに薄くハーモナイザーみたいなエフェクトを短時間かけたり、何か実験的な音作りをしているフシがあるのだが、今ひとつ真意を読み取れない。
6:40頃、師匠の長いソロが終わった後に本人のドラムソロパートがあるのだが、割と盛り上がらずに早々に切り上げる感じだ。自分のソロアルバムなんだから遠慮しなくて良いのにね。
Tr.2 You Came Along
これも師匠臭が極めて強い曲。
師匠のソロアルバムとして聴くならば、ChadとJimmyのリズムセクションは盤石で素晴らしい。ドラムが良く唄っている。
Tr.3 Forty Reasons
アルバムタイトル曲。大御所プロデューサー/ギタリストの Carl Verheyen との共作だ。
曲名の Forty Reasons ってのはアレだろう。「〇〇に反対する40の理由」みたいな良くある言い回し。日本語だと3とか10が多いように思うが、英語の記事では40ってのを良く見る。最初の10個の理由あたりで大体の雰囲気が掴めてしまうから、最後の方はもう興味を無くしながら惰性で読んだりするやつだ。
途中までkbd/b/dsのセッションぽい雰囲気で進行し、他の曲とは雰囲気が違うなあと思わせるが、3:25頃から師匠の怒涛のソロが入るとやっぱりいつもの雰囲気になる。師匠の長いソロ後、5:25頃からのブリッジが少し面白い展開。ドラム音に深いエコーをかけ、ボヨヨ~ンと爆発。面白いんだけど、今ひとつ真意を読み取れない。
Tr.7 Tell Me
イントロが何だか Led Zeppelin の The Wanton Song みたいだ。
本作の中では比較的ロック寄りのシンプルな曲だと感じるが、それだけに Chad の唄うようなドラミングが際立って聴こえる。そして Chad に聴き入っていると、ハーモナイザーをかけた変音で師匠が殴り込んできて、全部持っていく。師匠容赦ない。
Tr.9 Hidden Places
2:10頃までkbdとdsのみ。5拍子で自由に唄う素敵なドラミングが聴ける。
その後は師匠のgが入ってきて全部持っていくといういつもの展開。
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