Vertú – Vertú(1999)

Return To Forever(RTF) での盟友 Stanley Clarke(b) と Lenny White(ds) が立ち上げたバンド Vertu が残した唯一の作品。彼らがメンバーとして呼んだのが、Richie Kotzen(g)、Karen Briggs(violin)、Rachel Z(kbd) といった方々。
g は元々 Allan Holdsworth を予定していたらしいが、何らかの事情が許さず不参加となり、急遽オーディションをやって Richie を選んだらしい。Richie 曰く、オーディションに出向いたら Stanley に譜面を渡されたけれど、読めないので適当にソロ弾いて諦めて帰ってきたとのこと。それでもなぜか合格したが、その後も練習と称して Coltrane のソロを何度も何度も弾かされる等の Stanley 先生による厳しい指導の日々が続いた模様。偉いねー、良くついていったねー。まあ本作はRTFの焼き直しみたいなことを狙って企画したのではないかと思われるので、バカテクフュージョンギタリストがどうしても必要なのだ。そこにピュアロッカーの Richie を持ってくるとは意外性の塊なわけだが、結果的にはずいぶん善戦している。さすがプロだ。なおTr.8は Richie が書いて、vo もとっている。この曲だけ、ゆったりとしたアメリカンなロックで、意外と良い感じだ。
Karen Briggs については良く知らないが、なかなかどうしてパワフルで素晴らしい演奏だ。ポップス、ソウル方面のジャンルで活躍している模様。またTr.3は彼女が書いている。
Rachel Z は、Peter Gabriel や Al DiMeola 等のツアーメンバーとしてもお馴染みの才女。
首謀者の Stanley Clarke と Lenny White については今更書くことも無いが、2011年に再結成RTFで来日した際に日比谷野音で見てきたことを思い出した。Lenny はすっかり老けていたが、叩き始めると超元気でパワフル。Stanley も結構なお年だが、ウッドベースでチョッパーやったり超元気。もう化け物のように元気なおっさんたちであった。

Tr.1 V-Wave
Lenny White の曲。最後のあたり Richie がスイープ奏法でマイナースケールを上下するところで、ついクロスロード(映画)を思い出してしまった。

Tr.2 On Top of the Rain
Stanley の曲。もろRTFアゲインを狙った音。Lenny よりも Stanley の方が、営業臭強いな。まあそれを喜んで買って聴いている僕がいるわけだが。中盤以降、ラテンフレーバーも入って、益々二番煎じの音になりかけるが、Karen の生命力溢れるバイオリンと、Richie の媚びないロックな音に救われる。

Tr.3 Anoché
Karen の作曲。バイオリニストらしい、ドラマティックでしっとりしたなかなかの曲だ。Rachel のピアノも素敵。

Tr.8 Start It Again
Richie の作。RTFアゲイン臭が強い本作の中で、この曲だけ伸び伸びゆったりとしたアメリカンなロックバラード。これが意外と素晴らしく、皆楽しそうに演奏したりハモったり。

Tr.9 Marakesh
作曲クレジットは5名全員 。他のトラックとは明らかに異なる仕上げになっていて、Tribal + D’n’B みたいな感じ。若い者にもウケたいのかね。Karen のモロッコ風フレーズが、まあいかにもなんだが、なかなか良い。

Tr.10 Toys
Stanley の作。これも狙いはRTFアゲインだ。ちょっと前のめりに全員がキメのフレーズをユニゾンするので、つい Chick Corea (もちろん参加していない)の音を探してしまう。

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