The Prog Collective – Worlds on Hold(2020)

元 Yes の Billy Sherwood による豪華絢爛 Prog プロジェクト第3作目。
2020年末にリリースされていたことを、2021年2月に入ってから知り、慌てて検索したもののCDメディアはどこも売り切れ。そこで Bandcamp のダウンロード販売で入手した次第。
ブックレット的なものが付いてこないのでトラック毎の参加ミュージシャンの詳細が不明なのだが、Bandcamp のサイトには一応トラック毎の Featured Musician だけは書いてある。多分それ以外の音は全て Billy が演奏しているのだろう。超優秀なマルチプレイヤーなのでね。(一応本業は g らしいが、Yes では kbd で参加したり、亡くなった Chris の代役で b 弾いたり、とにかくなんでもこなせる)

さて本作を簡単に説明するならば、Prog 界の同窓会みたいな感じ。
著名な大御所が多数参加しており、しかも今回は著名曲のカバーもいくつか演奏されている。全体のトーンは暖かくポジティブ。恐らく Billy の人柄によるのだろう。
素晴らしい参加ミュージシャンの顔ぶれに敬意を表して、全曲簡単に紹介する。

Tr.1 Worlds On Hold (feat. Todd Rundgren, L. Shankar)
最初の曲はアルバムタイトル曲。Pop の魔術師 Todd Rundgren と、ダブルネックバイオリンの L. Shankar が参加。
Todd のボーカルはさすがの存在感。Billy も Todd も、プロデューサーでありマルチプレーヤーであり、音作りに拘るタイプなので、どうやって一緒に曲を作っていったのか(仲良くやれたのか^^;)気になるところ。
L. Shankar は何故かバッキングに徹していて、ソロ無し。

Tr.2 Two Trajectories (feat. Geoff Tate, Ron Bumblefoot Thal)
Queensreich の Geoff Tate(vo) と、Sons of Apollo の Bumblefoot(g) が参加。
Yes 的なほんわかとした曲。Geoff はあまりハイトーン等使わず、割とリラックスした感じ。
そして Bumblefoot が皆様の期待を裏切らずに、変音やテクニカルなフレーズをこれでもかと出してきて楽しい。

Tr.3 Anything But Goodbye (feat. Jon Davison, Patrick Moraz)
元 Yes の Jon Davison と、同じく元 Yes の Patrick Moraz が参加。もう時代を超えた同窓会状態。
Jon Davison はご存知 John Anderson のそっくりさん声の人。
何だかもう、いつでも Yes として商売できそうな程のハイクオリティな Yes サウンド。

Tr.4 Meant To Be (feat. Jan Akkerman, Billy Sherwood)
元 Focus の元祖速弾きギタリスト Jan Akkerman が参加。
70年代にヨーデルロック(”Hocus Pocus”)「ロイヨロロイヨロロッポッポ~」で意表を突く大ヒットを飛ばし、その後50年間活躍し続けているレジェンド。
曲の最後のあたりでちょっとだけソロを弾いてくれるのだけど、もうちょっと聴きたいところ。

Tr.5 Brave New World (feat. Sonja Kristina, Steve Hillage)
元 Curved Air の Sonja Kristina 嬢と、Gong 他の Steve Hillage 先生が参加。
Sonja と言えば、元祖疾走する(元)美人ボーカル、The Purple Speed Queen ってなもんだ。今はすっかり太っちまったけど。
Steve Hillage はカンタベリーミュージック初期から活躍し続けているレジェンド。UFOを呼ぶようなスペイシーなサウンドが売り。ちょっと前に、若手をごっそり入れて若返った Gong として来日してくれたけど、Steve が以前と全然変わりなく若々しかったので驚いた。恐らくUFOに何かしてもらって年を取らなくなっているのだろう。

Tr.6 Glory Days Ahead (feat. Arjen Anthony Lucassen, Steve Hackett)
Ayreon の Arjen Anthony Lucassen(Multi-inst) と、元 Genesis の Steve Hackett(g) が参加。
Steve Hackett の g だけは特徴的なサウンドなのですぐわかる。それ以外については、マルチプレーヤーが二人いるわけで、どれが誰の音やらさっぱりわからないぞ。

Tr.7 Solsbury Hill (feat. Roine Stolt, Billy Sherwood)
Peter Gabriel の著名曲のカバー。TFK の Roine Stolt が参加。このあたりが本作の目玉の一つかと。
もうこれ聴いただけで、本作を買って元を取った感がある。

Tr.8 A Whiter Shade Of Pale (feat. Graham Bonnet, Derek Sherinian)
Procol Harum の世界的ヒット曲のカバー。邦題の「青い影」ってのも良かったね。
元 Rainbow 他の Graham Bonnet(vo) と、元 Dream Theater、現 Sons of Apollo 他の Derek Sherinian(kbd) が参加。
Graham Bonnet は素直に良い声でしっとり歌い上げる。Derek も、名曲に敬意を表してなのか、トリッキーなプレイを封印し、ハモンドでしっとりと演奏。

Tr.9 Eye In The Sky (feat. Joe Lynn Turner, Martin Barre)
元 Rainbow の Joe Lynn Turner(vo) と、元 Jethro Tull の Martin Barre(g) が参加。
これもしっとりとした良い曲。

Tr.10 Nights In White Satin (feat. David Clayton-Thomas, Geoff Downes)
The Moody Blues のカバー。元 Blood, Sweat & Tears の David Clayton-Thomas(vo) と、元 Buggles, Yes の Geoff Downes(kbd) が参加。
David は、1941年生まれ。BS&Tなんて若い人は知らないだろうな。ブラス・ロックって奴だ。カッコよかったんだよ。
Geoff Downes はこの手のプロジェクトモノにはもう欠かせない仕事人。

Tr.11 Penny Lane (feat. John Wetton)[Bonus Track]
ここから3曲のボートラは、過去に吹き込んだ音源の再収録らしい。The Beatles の名曲を、今は亡き大英帝国の偉大なる声 John Wetton が歌っている。手を合わせて聴いて欲しいぞ。心に沁みるなあ。

Tr.12 More Than A Feeling (feat. Alan White, Tony Kaye, Billy Sherwood)[Bonus Track]
Boston のカバー。元 Yes の Alan White、Tony Kaye が参加。もう完全に同窓会の余興なんだけど、クオリティーはとてつもなく高い。ついニヤニヤして聴いてしまうので、家族から不審がられるよ。

Tr.13 People Are Strange (feat. David Johansen)[Bonus Track]
Doors のカバー。参加するのは、なんと元 New York Dolls の David Johansen(vo) だ。
もう Prog なのか、Classical Rock なのか、昔の Punk なのか、全然わけわからない状況なのだけど、ものすごい存在感。ついさっきまで爽やかに進行してきた本作は、この曲で急激に方向転換し、ドロドロとした暗黒面を垣間見せて終わる。

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