Jonas Hellborg with Shawn Lane and Kofi Baker – Abstract Logic(1995)

Sweden の「ベースギタリスト」 Jonas Hellborg、早逝した米国の天才ギタリスト Shawn Lane、「あの」Ginger Baker のご子息である Kofi Baker というメンバーで収録された面白い1枚。
この Jonas の「ベースギタリスト」って表記は、ご本人がインタビューで、「ベーシストと呼ばれたくない。俺はベースギターを弾くギタリストだ。」と答えているのを尊重した。
本アルバムは Day Eight レーベルからリリースされているが、Jonas Hellborg と言えば Abstract Logix レーベル(本アルバム名とはスペルが少し違う)と関係が深い。レーベル立ち上げに絡んでいるものと思うのだが、関係性が今一つはっきりしない。
Shawn Lane は、米国のエレクトリックギタリスト(ジャンル問わず)の中でも飛びぬけた技量を有し、背景となる音楽理論にも精通し、作曲能力も高い。しかもピアノも上手だ。病気で亡くなってしまったのが実に惜しい。本人が Allan Holdsworth に憧れてギターを勉強したと言っている通り、フレーズも音も Holdsworth を感じる局面は多いが、もっと Rock 的だ。
Kofi Baker については、Ginger の息子という事実以外はわからないので割愛。
なお、Jonas と Shawn は本作で意気投合し、この後多数の作品を共に残す。次第にワールドミュージックを取り込み、インドのミュージシャンと共演して Indian/Jazz/Rock Fusion みたいな作風になっていく。本作でもちょっとだけだが、ところどころにそういう指向性が現れているのが面白い。

Tr.1 Serpents and Pigs
Shawn が魂のこもったギターを弾きまくる。アーティキュレーションがきれいで、一つ一つの音の粒立ちが明確。フィンガリングノイズやミスタッチ等も無い。フレーズは流麗で、アウトサイドを上手く使う。Passport 時代の Scott Henderson みたいな感じだ。

Tr.2 Rice with the Angels
導入部はロックンロール。Shawn が気持ちよさそうに弾いている。シャッフルするリズムが、ちょっと Jeff Beck を思わせる。
2:40頃から曲調が全く変化し、インドの夜明けみたいな荘厳な感じに。Shawn は明確にインド音楽を意識したフレーズ。3人でユニゾンするリズムパターンも南インド風だ。

Tr.3 Pluie de Etincelles
ギタリストの余興レベルではなく文句無しに上手い Shawn のピアノソロ。

Tr.4 Layla Attar
Jonas の「ベースギター」ソロ。本人がギタリストだと言うだけあって、コード弾きしても音が濁らずきれい。

Tr.5 Abstract Logic
これもちょっとインド音楽的フレーズを入れた爽やかな曲だ。Shawn のギターのトーンが滑らかかつクリーンでとても美しい。インド音楽フュージョンギターと言えば大御所は John McLaughlin 先生だが、先生の場合はハードにピッキングするので、出音がどうしてもガチガチしてしまう。比べると Shawn は、まあ先生に比べれば新世代のギタリストなので(省力化して高速に弾く世代)、ピッキングによるアタックが少なくレガートに聞こえる。

Tr.6 Put the Shoe on the Other Foot
Kofi のポリリズムなドラムソロ。3名それぞれのソロを入れる気持ちはわかるが、ds ソロだけで6分強というのはちょっと変態じゃないの。僕は楽しいけど。

Tr.7 Throwing Elephant and Wrestling
もう曲名見ただけで笑うでしょ。象を投げて、く・み・う・ち♡。
Shawn がギターで象の役(?)をやっている。本気でパオーっと。Adrian Belew の専売特許かと思っていたが、なかなかやるなあ。
他曲では比較的 Jazz 寄りのプレイをしていた Kofi が、この曲ではBDをズンズン踏みまくりの野性的プレイに徹している。この人も象なのか。
途中、Shawn の超高速ソロで、フレーズがスケールアウトし、ちょっとリング外に行ってから戻ってくる反則プレイが楽しい。
まあ名曲とは呼べないかもしれないが、このように3名での格闘技(象との)が堪能できる楽しい曲だ。

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