オーストラリア出身の Lisa Gerrard と Brendan Perry によるユニット。
彼らの音楽をジャンル分けするのは非常に難しい。雑誌の紹介記事等では、ゴシック、ワールドミュージック、エレクトロ、フォーク、等々の表現が多い。過去には確かに、ダークな音像によるゴシック的な作品も多かったが、解散、再結成を経て発表された本作は、生命感が溢れ、どこか懐かしく、そして「どこにも無い国の音楽」のようだ。
やや分析的に言えば、彼らの民族的ルーツであるケルト音楽に、中東や東欧等の民族音楽的エッセンスを散りばめ、そして Lisa による異言(創作言語による歌唱)が乗るという感じかな。映画音楽の巨匠 Hans Zimmer が惚れ込んで、Lisa と共作でグラディエーターの曲を制作したが、僕もあれでやられて聴き始めた口だ。Nightwish の Tuomas 等、シンフォやプログレ界で Lisa Gerrard 好きを広言するミュージシャンは多い。
Tr.1 Children of the Sun
とにかくこの曲を聴いて欲しい。
何という豊穣な音楽なのだろう。
ゆったりとしたストリングス、ブラス、ドラムのバックトラックに乗せて、Brendan が渋い声でまるで吟遊詩人のように詠唱するのだ。
アルバムジャケットを見ながら、できればワイン等飲みながら、この素晴らしい生命賛歌を聴いて欲しい。
Tr.2 Anabasis
どことなく中東あるいは北アフリカ的風味のトラックに、Lisa の謎めいた詠唱が乗る。
曲自体、コード進行も転調も無く、延々と繰り返される構造。
そこに加わる楽器群が少しずつ変化していく。
Tr.4 Amnesia
前2曲と少し雰囲気が変わる。メインボーカルも Brendan にチェンジ。
ピアノの太いフレーズに、何らかの撥弦楽器で2・4拍打ちのレゲエ的リズムが乗る。
曲名は記憶喪失の意味。記憶に関するちょっと切ない詩。
Tr.6 Opium
6/8拍子の、まさに麻薬的な曲。(Opiumは阿片のこと)
ゲストで参加しているパーカッショニスト(David Kuckhermann)が良い仕事をしている。
とても美しく、切ない。
Tr.7 Return of the She-King
また曲調が変わって、ケルト音楽風に。
Lisa の詠唱が乗って、何だかもう何かの映画音楽そのものだ。
注意して聴くと、バックトラックの楽器数を最小限に絞り込んでいるのがわかる。なので、いわゆるハリウッド的アレンジにはならず、豪華・壮麗なんだけどとても品が良くまとまっているのだ。
後半は、Lisa と Brendan の音が多重に重なる瞑想的なコーラス。もうこのまま永遠に聴いていたい気持ちになる。
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